◆古典派経済学は、18世紀末から19世紀初頭にかけてアダム・スミスやデヴィッド・リカード、ジャン=バティスト・セイらによって発展した理論であり、市場の自由競争が最も効率的な経済成長を生み出すと主張する。経済は自己調整機能を持つため、政府の干渉を最小限に抑えるべきとされる。
◆ケインズ経済学が「需要が供給を生み出す」と主張するのに対し、古典派経済学は「供給が需要を生み出す」と考える。セイの法則に基づき、経済は供給が自身の需要を創り出し、自由市場での取引が最適な結果をもたらすとされている。そのため、政府による介入は原則的に必要ないとされる。
◆古典派経済学で代表的な理論には以下のようなものがある。
セイの法則:『供給は自身の需要を生み出す』という原則であり、全ての生産活動はそのまま消費や投資となり、失業や供給過剰は一時的な現象にすぎないとされる。このため、経済は基本的に自己調整する力を持つ。
比較優位の理論:デヴィッド・リカードが提唱した理論であり、各国や企業が他よりも相対的に優位性を持つ製品やサービスの生産に特化し、貿易を行うことで全体の効率性が高まるという考え方。
【Plus】経営者として注意すべきリスクとチャンスとしては以下のようなものを挙げられる。
短期的なリスク:政府の介入が少なく過剰な自由競争状態にあると、価格競争の激化により利益が圧迫されるリスクがある。また、景気後退期でも、政府の介入が期待できない場合、企業自身が厳格なコスト管理を行って事業の継続を図る必要がある。
短期的なチャンス:市場原理に基づく自由競争が優位な環境では、効率的な経営やイノベーションにより競争優位を築くことが可能である。また、過度な規制が存在しないため、新規参入や事業拡大の機会が広がり、より迅速な意思決定が可能となる。
長期的なリスク:政府の介入がない状態で、需要不足が長期化すると、失業や企業倒産のリスクが増大し、企業成長の停滞や市場の不安定化が懸念される。また、自由競争の結果として、一部の企業が独占的地位を確立するリスクも存在する。
長期的なチャンス:長期的には、政府の介入が少ないことにより、自由市場での競争が促進され、イノベーションや効率的な経営が企業の成長を支える。また、グローバルな視点で比較優位を活かし、国際貿易や投資によって市場を拡大する可能性がある。
【Plus】オーナーとしての株式価値の視点としては以下のようなものを挙げられる。
好況期:古典派経済学の下では、自由市場のメカニズムにより企業の効率性が高まり、利益の最大化が図られる。その結果として、好況期には企業の競争力や市場シェアが拡大し、株式の価値も上昇する可能性がある。
不況期:政府の介入が期待できない場合、景気後退が続くことで株価が長期的に低迷するリスクがある。ただし、比較優位の活用やコスト効率を重視する企業戦略によって市場シェアを維持し、株価を下支えすることも可能である。