◆優良なM&Aアドバイザーとは、クライアント(売主または買主いずれか)の利益最大化に注力する片手報酬のファイナンシャル・アドバイザー(FA)のうち、さらに「信頼」と「能力」を万全に兼ね備えたM&A案件担当チームメンバー(会社でも部署でもなく、担当個人または担当チーム)を指す。
◆M&A市場とBB市場は似て非なるものである。M&Aアドバイザーは、M&A市場に属し、BB市場には属さない。日本は特殊で、BB業者がM&A市場に進出しているケースも目立つ。
◆優良なM&Aアドバイザーとして認められるためには、最低でも以下5要件を充足している必要があると当社では考えている(これら要件は、中堅中小M&A案件(Mid-CapとSmall-Cap)に限定しており、大企業M&A案件(Large-Cap)や、零細BB案件(Micro-Cap)は考慮外である)。
・職業倫理: クライアントの相手方から報酬を受領しない片手報酬とするなどにより、クライアントとの利益相反を徹底排除していること、常にクライアントの立場からチャンスを探し、リスクを想定し、最大限の努力をもって尽くすこと
・常識と専門知識: なにより事業の理解が重要であり、マクロ経済環境、市場環境、金融環境に関する常識や自分なりの意見、商品サービス、マーケティングや従業員心理などの事業に大きく影響する各種ファクターに関する「常識」と「自分なりの意見」を持っていること。さらに、財務、税務、法務、人事、ITやESGなど事業価値に影響を与える専門知識、バリュエーションやM&A契約の交渉材料を発見するバイサイドDDに関する専門知識、事業価値・企業価値・株式価値を評価するDCF法やEBITDA倍率法をはじめとする各種バリュエーション手法に関する専門知識、M&AファイナンスやM&A契約についての専門知識をすべて備えていること
・探索能力・実務能力: (セルサイドFAの場合※)中堅中小企業M&Aの経営権譲受に必要な資金力を持つ買主(上場大企業、未上場大企業、未上場中堅企業、海外企業もしくは投資ファンド)の候補を広く想定した上で、特に優良で能力の高い買主候補に絞り込んで探索し、ポイントとなる重要論点を踏まえ効果的に提案し、売主希望条件を基準とした交渉の開始に向け、買主を説得するオリジネーション能力と、詳細開示情報作成、DD支援、ドキュメンテーションなどのエグゼキューション能力を備えていること
※(バイサイドFAの場合は、セルサイドスタート案件なら、特定の対象企業の経営権をより好条件で譲受るための各種実務作業のアウトソース引受能力、バイサイドスタート案件ならターゲットを探索するソーシング能力とアウトソース引受能力を備えていること)
・創案実績: (セルサイドFAの場合※)対象企業の事業に関する深い理解と、買主候補が有する経営資源を組み合わせ、柔軟にシナジー候補を想定し、対象企業や買主と議論する中で、そのインパクトや実現可能性を高めることに成功した実績
(※バイサイドFAの場合)きっかけ情報からのM&A案件へ育成するオリジネーションに成功した実績
・成功実績: (セルサイドFAの場合※)少なくとも、クライアントが希望する条件以上、BB市場の簡易評価計算式である年買法を圧倒する評価で売却することに成功した実績
(※バイサイドFAの場合)買主希望条件まで引き下げさせるため、効果的にDD発見事項や自ら発見した交渉材料を用いて、売主を大幅に妥協させた実績。もしくは、治癒不能な重要欠陥を自ら発見し、敢えてディールブレイクさせ、買主の損害を回避させた実績。もしくは、セルサイドが気づいていないシナジー実現方法を発見し、買主にとっての投資妙味を大幅アップさせた実績
◆上記要件は、一流の投資銀行や独立系M&Aハウスの上位30%レベルのM&Aバンカー又はFA人材(MD/D/VPクラス)の2~3人チームを想定している。M&Aの世界に入る前に、広範囲の専門的な学習、事業経験や金融経験を積むのが、先進国M&Aの常識である。決して厳しい要件ではない。むしろ「もしも、どれかが欠け、クリティカルイシューに気づかず、回避できたはずのディールブレイクや大幅価格調整に陥るといった、人生最大の悲劇に直面したら」を考えてみてほしい。担当チームの最低ラインである。
【Plus】企業価値向上コンサルティングで売却前準備支援を、セルサイド特化型FAサービスで最高の条件を、クライアントである売主に提供することを使命とする当社は「上記5要件以上に厳しい戒律」を設け、日々知識やスキルを向上する努力を重ねている。また、報酬体系や契約条件も、売主の満足と安心の最大化に資する内容とし「売主を裏切れば自分たちが損をする構造」を採用している。
【Plus】M&A助言サービスは、クライアントと親密な関係を構築し、さまざまな領域について何度も相談を重ね、膨大な開示資料を作成・加工・データ化・セキュリティ化し、M&A交渉が始まってからも膨大な論点について、売主・買主間で利害調整し、クライアント利益最大化に邁進する仕事である。そのため、クライアントとM&A業者の「人間的相性」も重要となる。
【Plus】また、業種や売主ニーズごとに必要となる能力も大きく変わってくる。当社には、大手M&A仲介で酷い目に遭った売主が駆け込んでくるケースも多い。当社は「成功確率」も「成功インパクト」も業界屈指の高さを誇ると自負しているが、そのために案件毎に膨大な労力を投じているため、依頼希望を頂戴しても受託できないケースも少なくない。また、当社ももちろん完全無欠なわけがなく、残念ながら当社と合わない場合もある。しかし、明らかに誤った選択をして悲惨な目に遭う売主を放置すべきでないと考え「M&A業者選択の目」を一般化する試みをしたのが、上記の5要件である。本当に商売抜きで数年かけて調査研究、熟考した結果のものである。
【Plus】あくまで当社の一意見に過ぎないが、中堅中小M&Aの売主が、自分の人生を守るためのM&A業者選択基準として「中小M&Aガイドライン」より遥かに役立つと自負している。なぜなら「中小M&Aガイドライン」は本来「零細BBガイドライン(最低の最低ライン?免罪符?)」と名付けるべき内容であり、M&A案件やM&Aアドバイザーに元々関係ないからである。現場を知らない官僚や学者とBB業者による、BB業者のためのルールである以上、やはりM&Aには関係がない。中堅中小M&Aをしようと考える売主は、参考にするだけでもよいので、このページをスマホに残し、何かの拍子にちらっと見れば、人生がおかしくならずに済むかもしれない。
【Plus】重要なので繰り返すが、M&Aアドバイザーとは「担当個人または担当チーム」」のことである。所属するM&A業者が、法人や部署全体として優れていても、肝心の案件担当の1人がモラルを欠如し能力に不足していれば、当然にして優良なM&Aアドバイザーたりえない。もちろん、所属するM&A業者(法人や部署)に問題が多い場合は、個人の評価をする以前に落第である。