◆労働者派遣法は、派遣労働者の適正な雇用管理と権利保護を目的とした法律である。派遣元(派遣会社)と派遣先(実際に業務を指揮命令する企業)それぞれの責任を明確化し、派遣労働者が不当に扱われることを防ぐことが求められている。
◆労働者派遣法の主な規制内容は以下のとおり。
派遣期間の上限:同じ派遣労働者を同一組織単位で3年を超えて派遣することは原則として禁止されている。3年を超える場合は、正社員雇用への切り替え義務が発生する。
待遇差の禁止(同一労働同一賃金):派遣労働者と正社員の間で、不合理な待遇差を設けてはならない。通勤手当や教育訓練、福利厚生の利用機会も平等にする必要がある。
マージン率の開示義務:派遣元は、派遣料金のうちどれだけマージンとなっているか開示する義務がある。
雇用安定措置の義務:派遣労働者が希望する場合、派遣元は派遣先での直接雇用を含む雇用安定措置を講じなければならない。
【Plus】法務DDや人事DDで指摘されると大きなマイナスになりかねない規制
偽装請負のリスク:業務委託契約(請負契約)として締結しているが、実態は派遣労働と同様に指揮命令関係がある場合、偽装請負と見なされ、労働者派遣法の適用などの追加負担が発生する。また、是正勧告や行政指導の対象になる。
派遣期間の上限違反:3年ルールが守られていない場合、正規雇用転換の義務違反となる。長期間派遣労働者が同じポジションにいる場合、確認と必要に応じた対応が必要である。
雇用安定措置の不履行:派遣労働者が雇用安定措置を求めたにも関わらず、対応していない場合、訴訟や労働トラブルにつながる可能性がある。
派遣料金と労働者の待遇差:派遣元と派遣先の契約内容が不透明であり、労働者に対する待遇差が発生している場合は指摘されやすい。
【Plus】M&A売主が労働者派遣法の遵守で企業価値を高める戦略
労務関連の問題は、解決方法を間違えると離職や士気低下につながり、厳しい解雇規制のある形態に転換すると長期の固定費増大につながるなど、M&A的にリスクの高い領域の1つである。重要性がある問題については、早めにM&Aアドバイザー等と相談し、必要に応じて買主と方針をすり合わせるなどの柔軟な対応が望ましい。
契約内容と実態の整合性を確認:業務委託契約やSES契約などの指揮命令が発生する可能性がある契約を見直し、偽装請負リスクを排除する。指揮命令のない形態に切り替えられない業務は派遣契約に切り替えるなど、契約の適正化を進める。
派遣期間の管理強化:派遣労働者の派遣期間を確認し、3年ルールに抵触しないよう派遣労働者を定期的に異動させる、または正社員雇用への切り替えを検討する。
待遇差の是正:派遣労働者と直接雇用の従業員の待遇差を洗い出し、必要に応じて賃金等の見直しを行う。
マージン率の公開と労働者への説明強化:派遣労働者に対し、派遣料金の内訳を丁寧に説明し、派遣元の適切な対応を証明できる状態を作る。就業規則等にマージン率を開示するページを設けることで、労務管理の透明性をアピールできる。