◆短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(通称:パート有期法)は、パートタイム労働者や有期雇用労働者が正社員と比べて不合理に扱われないようにすることを目的とした法律である。
◆パート有期法の主な内容は「同一労働同一賃金の原則」に基づく「正社員との待遇差の禁止」「説明義務」である。
◆主な規制内容としては以下のとおり。
不合理な待遇差の禁止:同じ業務を行う正社員とパート・有期雇用労働者の間で、賃金や手当などの待遇に不合理な差をつけてはならない。基本給・賞与・各種手当が対象となる。
説明義務の強化:パート・有期雇用労働者から求められた場合、待遇差の理由を説明する義務がある。説明を怠った場合、労働基準監督署などから是正勧告を受ける可能性がある。
教育訓練・福利厚生の差別禁止:スキルアップ研修や福利厚生施設などの利用についても、正社員と差別せず平等に扱う必要がある。
基本給・手当・賞与の不合理な差:同じ仕事をしているにも関わらず、正社員とパート・有期雇用労働者の待遇差がある場合は問題視される。過去に訴訟や労働審判が起こった事例もあるため、待遇差の合理的根拠を示せるようにしておく必要がある。
正社員登用制度の整備状況:有期雇用労働者が無期転換を申し出る権利があるため、制度の整備状況がチェックされる。無期転換ルール(5年ルール)が適用される労働者がいないか確認しておくことが重要である。
福利厚生や教育訓練の不公平:研修機会や福利厚生施設の利用について、正社員とパート・有期雇用労働者で差を設けていないかを確認する必要がある。
【Plus】マイナスを避けるための売却準備
労務問題に対する解決法の実行は、長期間影響が残り元に戻すことが困難、強引な解決策は、離職や士気低下につながりかねない。つまり、企業価値に重大なマイナス影響を与えるリスクが高い。また、労働者間での情報共有の動きが、想定外の反応につながるリスクもある。そのため、慎重を期しながら売却準備を進め、買主に対しては、早めに情報を開示するとともに、売主が一存で決めず、可能であれば買主の方針も確認しながら対策を実行するとよい。
待遇差の洗い出しと説明準備:正社員とパート・有期雇用労働者の待遇差をすべて見える化し、合理的な説明ができるよう資料を整備する。不合理と判断される部分については、賃金や手当の見直しを検討する。必要に応じ、買主と事前に方針をすり合わせておく。
無期転換ルールへの対応状況の確認:5年を超えて契約更新を続けている有期雇用労働者がいる場合は、無期転換申込権に関する対応を進めつつ、必要に応じ、買主と事前に方針をすり合わせておく。
契約書・就業規則の整備:パート・有期雇用労働者向けの労働契約書や就業規則を整備し、法改正に対応していることを確認する。就業規則には、正社員登用のルールや教育訓練の方針を記載することで、労働環境の透明性を確保する。
福利厚生や研修制度の見直し:福利厚生施設や教育訓練について、パート・有期雇用労働者が利用できる体制を整えておく。