◆アジャイル志向とは、迅速適応と反復を重視する開発思考である。これは従来のウォーターフォール型プロジェクト管理と対照的に、小規模な作業サイクルを繰り返す。変化する顧客ニーズや市場状況に迅速に対応するのに適している。
◆アジャイル志向は、主にソフトウェア開発において発展したが、近年では幅広い分野に適用され、特にイノベーションやプロジェクト管理で効果を発揮している。新規事業開発などで有益なエフェクチュエーションとも通ずる考え方であり、柔軟性を重視する開発手法である。
【Plus】M&A売主は、ITシステムを自製する場合も、外部委託する場合も、不確実要素がある場合は特にアジャイル志向を取り入れることが望ましい。小さなコスト、短い時間でより大きな成果を期待できるからである。大規模ITシステムに限らず、ノーコード、ローコード、エコシステム連携型等を活用した、小規模ITシステムを開発する際にもアジャイル志向は有益である。
【Plus】アジャイル志向をITシステム開発以外にも取り入れることで、対象企業のプロジェクトや開発サイクルを短縮し、迅速に価値を創出できる可能性が高まる。変化する市場ニーズや技術的な変革に迅速に対応できるためである。M&A買主に対してより高い成長ポテンシャルを示すことが可能となる。
【Plus】M&A交渉が始まった後、M&A売主はアジャイルな開発手法を採用していることを具体的な事例とともに情報開示することで、M&A買主に対し、柔軟性と迅速な行動能力をアピールできる。これにより、M&A交渉がよりスムーズに進行し、ポストM&Aでの統合においても円滑なプロセスが期待できる。
【Plus】不確実性の高い環境下では、アジャイル志向は企業価値評価においてポジティブに働く。買収後、迅速かつ柔軟に対応できる組織を持つため、シナジー効果を早期に実現するための重要な要素となる。