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M&A用語+

M&A用語は専門的なものが多く、誤用もされやすく、要注意です。
売却価格等の条件は、「取引関係者による評価」で決まります。
売主が成行任せは禁物で「買主サイドの評価を想定した準備」が勝敗を分けるのです。
取引関係者は、買主本人(買主の社内でも賛成派、反対派がいることも)だけではありません。
専門家(会計士、税理士、弁護士、コンサルタントが精査結果や価値評価を買主に報告)や、
銀行(買収資金の融資可否判断や融資条件を検討)等がどう評価するか、などなど。
買主サイドでもそれぞれの利益やリスクがあって、それぞれの主張があるのです。
正確な用語理解が、クライアント様の利益最大化への第一歩となります。
日本初の売主支援専業のM&A助言会社として、『売主様のためのM&A用語集』をご用意しました。
用語の意味に加え、知っておくべき豆知識をご紹介してますのでぜひ参考にしてください。

引当金(Allowance)

◆引当金とは、将来発生が予想される費用や損失に備えて、企業が一定額をあらかじめ負債として計上し、保守的に準備しておくための勘定項目である。

◆引当金の設定要件は以下のとおりである。すべて満たす場合、引当金を計上(同時に「〇〇引当金繰入額」等として費用も計上)しなければならない。これらの一部しか満たさない場合、簿外債務偶発債務として財務諸表に注記して適切に情報開示すべき場合もある。

1. 将来の特定の費用又は損失
2. その発生が当期以前の事象に起因している
3. 発生の可能性が高い
4. 金額を合理的に見積もることができる

◆引当金には次のようなものがある。

・ 貸倒引当金: 回収不能な売掛金等の損害
・ 製品保証損失引当金: 製品保証に伴う賠償損失
・ 返品調整引当金: 買い戻し特約による買い戻し損失
・ 売上割戻引当金: リベートやキックバック
・ 修繕引当金: 設備などの修繕
・ 賞与引当金: 従業員等への賞与
・ 退職給付引当金: 退職給付(退職金や年金)
・ 投資損失引当金: 子会社等の減損に至る前の段階

◆財務会計上、引当金繰入額は費用である。しかし、税務は債務確定主義のため、未確定段階の引当金繰入額は、税務上の損金として認められないのが原則である。但し、例外的に貸倒引当金だけは、損金処理が一定の範囲内で認められる。

【Plus】引当金が過少または過大に計上されていると、企業の財務状況が歪んで見えてしまうリスクがある。これが買主の財務デュー・ディリジェンスにおいて問題視され、交渉過程で企業価値の低下や条件変更に繋がるリスクがある。ただし、会計上の純資産に影響するだけであり、事業計画書上の将来キャッシュフローにおいて適切に損失や費用を反映していて、合理的なバリュエーションを実施するのであれば、特段の問題は生じえないとも言える。したがって、(DCF法などの合理的バリュエーションで評価する)M&A取引なら関係がない、(年買法などの純資産ベースで売買する)BB取引なら直接的な関係がある、と言える。ただし、いずれにしても買主によるPMIの連結会計に影響があるため、適切に計上しておく方が(PMIコスト分のディスカウントを回避するという意味で)無難と言える。

【Plus】引当金に関連するリスクや将来の支出見込みを裏付ける資料を整理しておく必要がある。特に、多額になりやすい修繕や退職給付に関連する引当金は、過去の実績や契約状況などを基にした合理的な根拠を示すことが求められる。買主はこれらのリスクを慎重に評価するため、透明性の高い情報開示が求められる。美しい貸借対照表を用意するより、将来キャッシュフローが正確であると買主の信頼を確保する方が売主としては重要である。

【Plus】引当金を適切に計上していない場合、簿外債務や偶発債務が発生し得る。これらの債務はDDの過程で問題視されやすく、(他にも色々隠れた債務があるのでは?という)買主の不信を招く可能性がある。そのため、売却準備の中で、事前にこれらのリスクを精査し、可能な範囲で消滅・軽減しておき、残ったしまったリスクについても適切に情報開示することが重要である。透明な情報を用意しないと、最悪ケースでディスカウント評価されてしまい、場合によっては破談もありうる。売主としては要注意である。

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