◆ビジネスブローカレッジは、零細企業や個人事業などのかなり小規模な事業(1~10億円未満、特に1億円未満)を対象とした売買を仲介(売主と買主の出会いの場を提供)するサービスであり、マッチングと最低限のパターン事務処理に限定される点に特徴がある。この観点からすると、メルカリなどの「フリーマーケット」が類似業種と言える。
◆ビジネスブローカレッジでは、案件成約率は一般に低い(100件中5件成約(5%)で上出来ライン)ため、利益確保のため様々な工夫が施されているのが通常である。具体的には、サービス内容を極力制限(開示情報はペラペラ、DDさせない、契約書もひな形のまま)し、マス広告やコールド営業を駆使し「売主・買主のリスト」を長くしてマッチング確率を上げることにもっとも力と時間を割く点も特徴的である。この観点からすると、ワンルームマンション投資などの「テレアポ営業」が類似業種と言える。
◆ビジネスブローカレッジでは、案件規模に比例し小規模となる報酬を、売主・買主双方を顧客(両手報酬)にしたり、最低成功報酬を設けたり、過剰なテール条項を設けることでカバーしている。もしくは、報酬無料によって売主リストを長くすることを徹底し売主保護の業務は全削除して効率成約を目指す。この観点からすると、事故車に高い代金を支払ってしまう「レモン市場」(情報の非対称性による市場の失敗)の典型例と言える。
◆M&AやBBの交渉現場は、売主から見てブラックボックスであり、情報の非対称性と利益相反から生まれるダブル損害を避ける方法は、信用できるM&Aアドバイザー等を雇う以外に事実上無いのである。
【Plus】ビジネスブローカレッジの存在意義は、「零細規模で、特別な強みのない平凡な会社」を売りたい人が売れる可能性がある「出会いの場」を提供し、零細事業の存続を後押しする点である。一方、ビジネスブローカレッジには、「利益相反」という根源的な問題が潜んでいる。能力が限定的なビジネスブローカーにM&A案件を担当させるべきではないが、特段の規制もなく、詐欺事件、紛争トラブルの温床になっているため、さまざまな対策が出てはいるものの、根本的な解決のためには程遠い状況にある。
【Plus】中小企業庁が運営している「中小M&Aガイドライン」は、想定取引やガイドラインの内容的に「零細ビジネスブローカレッジガイドライン」が適切な名称である。