◆ビジネスブローカー(BB業者)とは、零細企業や個人事業などの小規模事業を対象とした事業売買の仲介業者のことである。本来零細ビジネスブローカレッジ案件にのみ携わり、非常に限定された業務のみを提供する者である。日本では、M&A案件はM&Aアドバイザーが担当すべきところ、非常に限定された業務しか提供しない「無能ビジネスブローカー」が担当することが多くなっており、一部の優良ビジネスブーカーが関与するケースを除き、売主及び買主に重要な問題を引き起こしているため、社会問題化している。
◆「優良M&Aアドバイザー5要件」を満たさないM&A業者の全てがビジネスブローカーに当たる。ビジネスブローカーは「優良ビジネスブローカー」と「悪質・無能ビジネスブローカー」に分類される。自称M&A業者の大半が「悪質・無能ビジネスブローカー」である。これには、にわかM&A業者やM&A副業士業も(一部の能力しか発揮できないという意味で無能ビジネスブローカーに)含まれる。
◆日本独特の「(利益相反に伴う弱者被害の拡大を動機付けする)両手成功報酬で、零細事業売買仲介の場(中古品売買のフリーマーケットのような売主・買主出会いの場)を提供」するM&A仲介業者が、海外で言うところのビジネスブローカーの下位レベルに凡そ一致する。コールド営業(テレアポやDM)で売主を集め(売り手リストを作成)、コールドコール営業の蓄積(買い手リスト)を使い、提案内容や提案アングルも十分検討せず、無差別的に買主候補に打診する「リスト型効率マッチングスタイル(量は質を凌駕)」を体現する業者が多い。
◆仲介サービス全般に共通して重要なのは、
・成功度(売主にとっての売却価格の高さ、買主にとっての買収価格の安さ)
・成功確率(取引成立の確率)
である。そもそもビジネスを深く理解し、合理的なM&Aバリュエーションをする意欲も能力もなく、買主からの厳しい追及を軽やかに躱す専門知識も交渉能力もない。構造的にリピーター買主の便益最大化を重視する。そうなると、売主にとっての「成功度」は極めて低く、買主にとっての「成功度」は極めて高くなる。「成約率」は極めて低く、5%(20件に1件)で上位クラス、10%(10件に1件)で最高位クラスである。つまり、ビジネスブローカレッジサービスは「平凡な零細企業を売れたらラッキーな売主とバーゲン価格で買いたい買主の出会いの場を提供するサービス」すなわち「中古事業売買のメルカリ」である。結果、いかに「効率」を向上するか(1件あたりの手間を減らすか)を重視することになる。彼らが何もできないのはこういう背景があるのである。
◆ビジネスブローカーにとって「売主・買主リストを長くすること」こそが競争力であり存在意義そのものであるため、コールド営業に加え(現実に反し期待を膨張させる)マス向けイメージ広告を多用するのも特徴的である。利益相反の批判や損害賠償請求の危険を躱すため、フリマアプリと同じで「交流の場を提供してるだけ」というポジションに自らを置く。結果、フリマ同様、無責任体質になりやすく、明白な犯罪に悪意で(真実を知りながら)協力しても責任を負わない。民法で「双方代理」を禁止しているにもかかわらず、「両手報酬(=双方代理類似行為)」でも「出会いの場の提供であって代理はしていない」という主張や、「売主(初心者)へ説明した上での合意」で許容されてしまっているのである。この点も「古物商許可を敢えて取得しない(警察が被害届を受理できない)フリマアプリ業者」と瓜二つである。構造的に倫理意識が希薄となり、不適切営業行為や違法(に近い)行為が蔓延しやすい。
◆「中小M&Aガイドライン」は悪質・無能ビジネスブローカーの悪質・無能行為を是正するためのガイドラインであるが、両手成功報酬という構造問題を放置(助長)している時点で、その効果は期待しづらい。「利益相反問題を助長する両手報酬業者に、利益相反で問題を起こすな」という永久ループのルールである。短期間で改訂を重ねているのがその証拠である。本当の解決策は「全M&A業者の抜本的な倫理と能力のレベルアップ」である。しかし、それは現実的に無理筋(仕事しながら司法試験や公認会計士試験を突破することより3倍大変なミッション)なので、現実的には「大量会社清算に伴う社会的ダメージコントロール」となる。「リスキリングによって成長産業にポテンシャル人材をシフトする」は一つの方法だが「ポテンシャル人材でない人」をどうするか、これを解決するのが政府(分配機関)の本当の仕事である。ビジネスブローカーに富を移転してもトリクルダウン効果は見込めず、無意味に格差が拡大し、無実の努力家の人生が破綻させられるだけである。
【Plus】優良M&Aアドバイザーによる「本当の安心」と「質から生まれる結果への満足」を享受できるのは、一定以上の企業価値(EBITDAがだいたい2億円以上、もしくは、億の大台が見えていてユニークな強みがある会社)を有する対象企業の売主に限られる。そのため売主は「売るならM&Aで」なので、「M&A市場に参加できるような企業を育成する」が「人生の成功者としての最適解」である。
【Plus】その他大多数の対象企業(零細企業で、かつ、平凡な会社)をどうしても売りたいなら、ビジネスブローカーに依頼するしかない。しかし、その前に冷静になってほしい。「どんな会社でも売れるわけはない」のである。清算準備期間付き清算価値を自分でザックリ計算しておくべきである。これを年買法が明らかに上回る場合に限り「優良ビジネスブローカーに依頼して売る」という判断が合理的となる。ここで「何を基準にビジネスブローカーを選別すべきか?」が重要となる。「優良ビジネスブローカー4(2)要件」を充足しているかを事前にチェックするとよい。
【Plus】優良M&Aアドバイザー5要件、優良ビジネスブローカー4(2)要件のいずれも充足しないM&A業者は「悪質ビジネスブローカー」または「無能ビジネスブローカー」と考えて差支えない。近寄らないことを強く推奨する。彼らの得意技が「貴社に関心を示す一流企業の買い手がいるので、ぜひ面談の機会をください」というHP問い合わせ・DM・テレアポである。当然、本当はいないし、いても「●●地域の■■業の会社を買収したい」という「ふわふわ買収ニーズ」があるだけである。「実は貴社の売上や利益すら知らないけど引っかかればラッキーと思って突撃しました」が真相なのは当然で、帝国データバンクや東京商工リサーチなどに決算書を渡していなければ、業績や財務状況はわかるわけがない。
【Plus】M&Aアドバイザー(≒FA)とビジネスブローカー(≒M&A仲介業者)を間違えず見分ける、FAのうち優良M&Aアドバイザーか見分ける、ビジネスブローカーのうち優良ビジネスブローカーか見分けるのは、M&A初心者の売主にとって実は困難である。(会社ではなく)担当者個人をランク付けする問題だし、個別案件の業種やスキームや状況次第で、案件次第で優良M&Aアドバイザーになれることもあれば、無能ビジネスブローカーにもなりうるのである。悪質性が高いほど社会的批判に晒され、トラブルが頻発し訴訟も提起されているが、それでも、無実な売主や買主の目を騙して次の収入を得たいため、印象を良く見せかけようとあの手この手である。
【Plus】優良業者の要件を充足しているかを正ルートとするなら、その逆のルートで判定する方法もある。つまり、悪質・無能ビジネスブローカーを直接見分ける方法は、
①社名に「M&A」が付いている業者(優良M&Aアドバイザーは敢えて「何の会社かわからない社名・部署名」にしている)
②インターネットで「社名と採用」で検索し、BtoBトップ営業や高齢富裕層営業での成果だけで積極採用する業者(数か月の研修で案件担当させる)
③両手成功報酬を基本としている業者(常時FAではないM&A業者)
④理論的に意味のない純資産を基本に評価する手法(年買法)を多用する業者
⑤担当者に突然専門的な質問をするとオタオタする業者(M&A仲介業者に対する批判対策としてHP上でバイト専門家に専門用語の定義を書かせ「専門性を持っているかのように演出する印象操作法」が流行しているが、まやかしに過ぎない)
⑥コールドコール営業(テレアポやDM)や積極的な集客広告をしている業者
⑦兎に角、件数やスピードを誇張する業者(ビジネスブローカレッジ案件ばかりでM&A案件は僅か、公正な条件で売れたか(成功度)ではなく、成約件数(成功確率は低いが)を誇張)。
以上の7つのパターンの1つにでも該当すれば黄色信号、3つ4つも該当すれば相当な高確率で「悪質ビジネスブローカー(合法”老人喰い(オレオレ詐欺類似事業)”)」もしくは「無能ビジネスブローカー(超高給ギグワーカー)」と判定して差支えない。
【Plus】通常、こういう顧客や社会に大きな影響のある業種には業法があり、広告規制が敷かれる。しかしM&A業法はないし、今後も作られないだろう。あまりにも業務範囲が広範かつ複雑で、政府のお役人では、国家資格、監督検査や処分罰則を設計・運用できないからである。保護すべき人(売主・買主、特に立場の弱い売主)が有能または財力のある会社オーナーや取締役以上の立場にある人ばかりなので、弱者保護の必要性が低い点もあり、売主不利の情勢が永久的に続きそうである。つまり、今後も「悪質・無能ビジネスブローカーによるやりたい放題とガイドライン改正のいたちごっこ」が続く。売主が最大の被害者であるため、護身術が必要なのである。