◆コーゼーションとは、「原因と結果」の関係性を明確にし、計画通りに物事を進める考え方を指す。対照的な考え方としてエフェクチュエーションがある。敢えて簡単にすると「まず行動のエフェクチュエーション」と「しっかり計画のコーゼーション」である。いずれも有益な考え方であり、場面に応じて使い分けると良い。
◆VUCA時代における新事業での成功者の行動パターンを体系化したものがエフェクチュエーションであり、その対極としてコーゼーションを位置付けている。なぜ、従来型のコーゼーションでは新規事業で失敗するのか、成功者はどのような行動パターンで結果を出しているのか、を説明している。しかし、将来を予測しやすい既存事業の改善や、大組織、投資家、金融機関や専門家に対して理路整然と説明する場面(例えば、事業計画書を作成し、説明するなど)では、コーゼーションでなければ受け入れられない。経営者は、場面に応じて使い分ける器用さが求められる。

◆企業経営では、過去の成功要因や関連データに基づいて、将来の事業計画を策定し、それを実行するアプローチを指す。これは、「予測可能な未来に向けて、計画を立て、それに基づいて行動する」という従来の経営戦略の基本的な考え方に基づいており、主に大企業や成熟した事業環境で活用されることが多い。つまり、予測が困難な環境では時間の浪費、機会喪失につながるリスクがある。
【Plus】企業経営でコーゼーションが機能する局面
▽既存市場でのシェア拡大:安定推移が予想される既存市場において、過去の販売データや競争環境を分析し、マーケティング戦略を立案・実行し、競合企業からシェアを奪う。
▽オペレーション改善・効率化:機械を多用する製造業などの正確に予測しやすい業務環境で、過去の業務プロセスやオペレーションデータを分析し、品質改善やコスト合理化の施策を計画的に実施する。
▽事業計画の策定と資金調達:銀行や投資家に対し、過去の実績をベースにした事業計画を明示することで、必要な資金調達で成功する。
【Plus】M&A売主にとってコーゼーションが機能する局面
▽企業価値向上のための売却準備:対象企業のポテンシャルを発揮し、欠陥を治癒し、高品質な初期的情報開示をするための売却準備を、M&A売却交渉に入る前に計画的に実行する。
▽買主に対するデータドリブンな説明:M&A売却交渉の場で、過去のデータや成功事例を用いて、対象企業の強みや成長性を合理的に説明することで、買主から好条件を引き出す。
▽DD対応:デュー・ディリジェンス(DD)では、DDプロバイダー(主に士業)が、コーゼーション重視のアプローチで、対象企業のあらゆる領域について精査し、発見事項を買主にレポートする。売主はそれを踏まえ、計画的・合理的に対応することで、高い評価を得ることができる。
▽表明保証・補償条項のリスク管理:M&A最終契約の表明保証・補償において、過去のデータを計画的に整理・改善しておく(売却準備の一環)ことで、M&A実行後の売主が被る損害を最小限に抑えられる。
▽スムーズなPMI:経営管理体制や情報管理体制を整備しておくことで、M&A成立後の統合作業(PMI)を円滑に進める。