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M&A用語+

M&A用語は専門的なものが多く、誤用もされやすく、要注意です。
売却価格等の条件は、「取引関係者による評価」で決まります。
売主が成行任せは禁物で「買主サイドの評価を想定した準備」が勝敗を分けるのです。
取引関係者は、買主本人(買主の社内でも賛成派、反対派がいることも)だけではありません。
専門家(会計士、税理士、弁護士、コンサルタントが精査結果や価値評価を買主に報告)や、
銀行(買収資金の融資可否判断や融資条件を検討)等がどう評価するか、などなど。
買主サイドでもそれぞれの利益やリスクがあって、それぞれの主張があるのです。
正確な用語理解が、クライアント様の利益最大化への第一歩となります。
日本初の売主支援専業のM&A助言会社として、『売主様のためのM&A用語集』をご用意しました。
用語の意味に加え、知っておくべき豆知識をご紹介してますのでぜひ参考にしてください。

民事罰(Civil Penalty)

◆民事罰とは、企業や個人が法令等に違反した際に課される罰則であり、通常は損害賠償請求、強制執行や担保権実行の形で科される。民事罰は民事法や行政法の範疇で課され、制裁目的ではなく被害者の損害の補填や不法行為の是正を主な目的としている。

◆日本では、民法(契約不履行や不法行為)、会社法(取締役の任務懈怠や忠実義務違反)、消費者契約法(消費者と不適切契約)、独占禁止法(談合や優越的地位濫用)、労働基準法(違法労働や未払賃金)、個人情報保護法(情報漏洩)、製造物責任法(製品欠陥)、特定商取引法(返品懈怠)、景品表示法(不当表示や過大景品)、食品衛生法(安全性違反)、建築基準法(違法建築)、環境基本法(環境汚染)、特許法・商標法・著作権法(侵害・無断使用)などの違反に対して民事罰が適用されることがある。

◆企業が民事罰を受けると損害賠償責任を負う。重大な場合、財務基盤が揺らぐリスクがある。また、社会的信用の低下や、ブランドエクイティの棄損が発生し、長期的に事業縮小や取引先喪失を招くリスクもある。一方、早期かつ適切に対処し顧客に注意喚起をした場合など、むしろ信頼を向上できる場合もある。適切な法令遵守体制を整えることで、信頼喪失のリスクを軽減し、長期的な企業価値向上につながることもある。

◆企業や経営者に対する重い民事罰の例としては以下が挙げられる。

・BP(英国): 2010年のメキシコ湾での大規模な石油流出事故で、BPは米国政府および被害者に対して数十億ドルの損害賠償金を支払うこととなった。

・スカイマーク航空(日本): エアバス社との間で大型機A380のリース契約を締結していたが、経営悪化により契約解除することに。同社から約700億円の損害賠償請求。ノンキャンセラブルのリース契約のリスクが指摘された。

・富士ゼロックス子会社(日本): 富士ゼロックス子会社が中堅中小企業向けに提供していたソフトウェアに問題。業務に支障をきたしたとして多数の顧客企業から損害賠償請求訴訟。顧客視点での組織体制が不足していたと指摘されている。

・給排水設備会社(日本): マンション給排水設備工事の請負会社が、工事後に大規模な漏水事故。多数住民から損害賠償請求。品質管理不足や保険未加入のリスクが指摘された。

【Plus】M&A売主は法令遵守の強化を通じ、将来の民事罰リスクを最小限に抑える必要がある。内部統制の見直しや、従業員教育の徹底などが有効なアプローチである。特に、重大な損害リスクがある分野においては、定期的に総点検して予防することで、M&A売却交渉の失敗リスク(ディールブレイクやマイナス価格調整)を減少させることができる。

【Plus】M&A交渉時、売主側は民事罰に関連する潜在リスクや未解決問題について、透明性を持って開示すべき。M&A買主が法務DDでリスクを発見すると、ディールブレイクやマイナス価格調整につながる。補償条項がM&A最終契約に記載されることを踏まえても、やはり隠蔽は避けるべきである。どんな企業でもすべての問題を予防できないことはM&A買主も承知している。適切な管理体制をアピールできれば、逆にポジティブ評価になることもありうる。

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