◆消費税等とは、消費税(国税)と地方消費税(地方税)をまとめたもので、国内での財やサービスの消費に対して課される間接税である。事業者が消費者から消費税等を預かり、事業者が消費税等を納税する。税率は国税部分と地方税部分に分かれる。
◆消費税等の基本的な仕組みは以下のとおり。
▽課税売上げ:事業のための資産の譲渡、貸付け、サービスの提供をすること。国内事業取引及び輸入取引が課税対象となる。
▽課税仕入れ:事業として資産を譲受け・借受け、役務の提供を受けること。会計上の費用だけでなく、設備投資や事業譲受も対象となる。非課税や免税となる取引、給与等の支払は除かれる。
▽仕入税額控除:課税売上げにかかる消費税等(売上税額)から、課税仕入れにかかった消費税等(仕入税額)を控除して、納税額を計算すること。前々事業年度課税売上げ5,000万円以下の小規模事業者は簡易課税方式(業種ごとに決まったみなし仕入率で計算)を選択できる。
▽税率:日本の消費税率は 10%。ただし、食品等には 8%の軽減税率 が適用される。
▽申告と納付:1年ごとに確定申告し、納付する。納付回数は前年国税納付額(48万円/400万円/4800万円)に応じ年1回、2回、4回、12回のいずれかとなる。
▽課税事業者・免税事業者:前々事業年度の課税売上げが1,000万円以下の小規模事業者は、免税事業者となることができる。課税事業者を選択していれば納税義務が生ずるが、還付請求の権利も持つ。
▽還付:仕入税額の方が売上税額よりも大きい場合、課税事業者であれば還付請求することができる。多額の設備投資をする企業が使いやすい。
▽インボイス制度:全事業者が課税事業者となり、仕入税額控除をするには適格事業者が発行したインボイスの保存を義務づける制度。2029/10以降はインボイスがなければ仕入税額控除ができなくなる。それまでの期間は経過措置あり。
◆消費税等の会計処理には以下の2種類の経理方式がある。
▽税込経理方式:売上や費用等を税込み金額で経理処理する方法。納税額を租税公課として計上。処理が簡便であるため中小企業の多くが採用する。租税公課を損金処理できるメリットもある。
▽税抜経理方式:売上や費用等を税抜き金額で経理処理する方法。各仕訳ごとに仮払消費税・仮受消費税の勘定を用いて税抜き価格ベースの金額と消費税等金額を別々に把握。仮受から仮払を引いた金額が納付税額となる。大企業等は、課税事業者で仕入税額は本則処理のため、税抜経理方式を採用する。
【Plus】消費税等に関してM&A売主が注意すべきこと
M&A取引の対象企業は、中堅中小以上の事業規模を誇る企業が通常であるため、課税事業者であって簡易課税方式を選択することができない。多くがインボイス制度を採用する適格事業者である。会計処理は税抜き経理方式を採用するケースが多い。
一方、BB取引の対象企業(零細企業や個人事業)や、M&A取引の対象にもなりうる中小企業は、免税事業者になりうるし、簡易課税方式を選択できるケースもある。会計処理は税込み経理方式を採用するケースが多い。取引先の反応次第であるが、デメリットの多いインボイス制度を戦略的に選択しない会社も多い。
▽消費税等に係る会計処理:消費税等は経理負担が非常に重い税金である。複数税率に加え、インボイス発行や適格事業者登録番号の管理等には膨大な手間がかかる企業も少なくない。杜撰な管理をしていても、対税務署で問題が生じなかったかもしれない。しかしM&A会社売却に挑戦する場合には話が変わってくる。例えば、厳格な管理を要する上場会社や投資ファンド等の買主に「この対象企業が必要レベルにキャッチアップするためには、多額のコスト(追加的なCFOや経理人材の人件費、税理士報酬、公認会計士報酬など)を要する」という評価を下されるリスクがある。それによって、年間数千万円の追加コスト×倍率(5~10倍)の値下げ提示となれば、売主が受け取れたはずの株式価値が大きく棄損してしまう。やればできる単なる事務なので、売却準備の中で、最少コスト・最高効率で、十分な品質を実現しておくとよい。
▽事業譲渡スキーム:事業譲渡は、取引法上の行為(資産の譲渡をまとめたもの)であり、譲渡資産のうち課税対象となるものには、消費税等が課税される。つまり、同じ「企業の部分売りスキーム」である会社分割が組織法上の行為であって消費税等がかからないため、消費税等の観点からすると、事業譲渡スキームの方がコスト高なM&Aスキームと言える。