◆コーポレートローンとは、企業が資金調達を目的に金融機関から借り入れる融資形態であり、企業全体およびそのオーナーに対する信用力をもとに貸し出される法人向け融資である。
▽リコースローン:コーポレートローンは、親会社保証や経営者保証が付されるリコースローン(訴求型ローン)であるのが基本である。弁済不能時に担保を手放せばそれ以上の弁済を免れられるノンリコースローン(非遡及型ローン)と対照的である。
▽個別契約:コーポレートローンは、企業が複数の銀行から借り入れる場合に、銀行毎に別個の内容の融資契約を締結する。1つの融資契約にまとめるシンジケート・ローンと対照的である。
◆担保や経営者保証による信用補完は以下のようなものがある。
▽担保:不動産、在庫、売掛金または借主企業の株式などを担保に設定し、融資の信用力を補強。
▽経営者保証:中小企業への融資では、経営者(個人)に保証を求められる場合が多い。
◆一般的な貸出条件は以下のとおりである。
▽一般的な貸出期間:資金使途が、比較的自由に使える運転資金であれば、数か月から5年程度が一般的だが、資金使途が特定される設備支払資金の場合には5年以上に及ぶこともある。
▽一般的な貸出金利:貸出金利は市場金利(短期プライムレート等)や企業の信用リスクに応じて決定される。経営者保証を外す場合には金利が上乗せされる場合もある。
▽一般的な弁済方法:
・元利均等返済:元金と利息の合計額を均等に返済する方法。
・元金均等返済:毎回の元金返済額を一定にすることで、利息を含めた総返済額は徐々に減少する返済方法。
・期日一括返済:借入期間の終了時に元金と利息をまとめて返済する方法。
◆「経営者保証ガイドライン(一般社団法人全国銀行協会)」のポイントは以下のとおり。
▽ガイドライン概要:経営者保証は、中小企業の経営者にとっての負担が大きく、経営活動の委縮の原因とみなされたことから、2013年に制定された経営者保証ガイドラインは、新規融資での保証なし融資、既存融資での保証の見直しなどを、以下のような一定の条件の下で誠実に検討するよう金融機関に要請している(法的拘束力はない)。
▽保証を外す条件:新規・既存融資から経営者保証を外すには、以下の条件を満たす必要がある。
・借主が中小企業:主たる債務者が中小企業であること。
・保証人が経営者等:保証人が経営者等の個人しかいないこと。
・法人と経営者の分離:法人と経営者の資産および経理が明確に区別されていること。
・返済能力の確保:法人単体で返済可能な好業績や財務基盤を示せること。
・適切な情報開示:企業の財務状況や事業計画を透明性高く情報開示すること。
◆コーポレートローンの貸出審査で重視されるポイント
▽財務健全性:自己資本比率、流動性比率、債務弁済能力(DSCR)など。
▽収益性:各種利益率(対売上高)など。
▽キャッシュフローの安定性:市場環境や競争優位性によるキャッシュフローの安定性(下方硬直性)。
▽担保:担保となる資産の公正価格や流動性。
▽経営者:経営経験、実績、リーダーシップなど。
【Plus】M&Aを予定している売主がコーポレートローンを有効活用する際のポイント
▽経営の緊張感:銀行の視線が入ることで「経営の緊張感」を保ちやすくなり、経費を合理化する等のインセンティブになる面がある。
▽M&A売却準備の一環:元金回収と利息の受領ができればよい銀行としては、特に重視するのは、財務基盤とキャッシュフローの安定性である。一方、M&Aバリュエーションでは、これらに加え、規模や成長性も重要である。「銀行からの評価を高めておくこと」は、M&A対策にもそのままプラスになる。また、情報管理体制を整備し、適時適切に情報開示できるようにしておくことも、M&A情報開示の土台作りという意味で有益である。
▽買収ファイナンス可能なら高額売却に有利:また、買収ファイナンス(特に、対象企業のキャッシュフローに与信するLBOファイナンス)の可否次第で、M&A案件が成約できるかどうか、バリュエーション通りに対価を支払ってもらえるかが変わってくる場合もある。できるだけ「銀行から評価されやすい財務基盤と経営成績」を残しておくことは、M&A売主にとって非常に重要である。