◆費用モデルとは、固定費以外の費用のうち、売上高に直接影響を与える変動費(収益モデルのパラーメータ)ではない、設備投資(CAPEX)に関連する費用でもない、その他の費用(準変動費や直近売上高と無関係に変動する費用)の動きをモデル化したものである。その他の費用が費用全体に与えるインパクトが大きい場合、費用モデルとして財務モデルと独立させることで、理解可能性を高めることができる。

【Plus】費用モデルを構築する目的
特に費用モデルは「わかりにくい」というデメリットがある。そのため、重要性が高い費用で、売上高との相関が低い費用だとしても、一般的な財務モデルでは「過去平均数値を横置き」などの思考停止に陥りやすい。これが運よく売主有利に働いても、買主は過度の保守的評価(費用予測を念のため大幅に積み増し)になりやすいし、これが売主不利に働けば、売主が損をするだけとなる。必ずしも必要不可欠ではないが、売主に具体的なメリットがあり、重要なデメリットを回避する必要があれば、費用モデルの構築というひと手間を加えるべきである。
【Plus】費用モデル上で予測すべき費用の例
▽研究開発費:売上高に影響するとしても時期が不透明で、研究開発が成功した場合には、追加の費用が発生し、それらの支出の後から新しい売上高が計上される。
▽ブランディング目的の広告費:ブランドエクイティを積み上げることで売上増を見込めるが、複雑な構造を経由した動きをするため、収益モデルや財務モデルに組み込むと複雑になりすぎる。費用モデルとして独立させることが望ましい。
▽間接部門のIT開発費用:IT開発費用は多額になることがある。しかも、例えば、それが変動費を減少させるわけでもなく、間接部門の将来の人件費の合理化を目的とする場合、システム開発費と将来の人件費を関連付ける費用モデルが望ましい。
▽リスク対応費用:セキュリティ関連費用などは、売上高との関連性を見込みにくく、固定費以外の費用が多額になることもある。費用モデルの中でシミュレーションすることが望ましい場合がある。
▽財務関連費用:資本構成に影響する財務関連費用も、売上高の動きとは独立して動き、また多額になるケースもあるため、独立した費用モデルとして予測すべき場合がある。