◆顧客満足度とは、顧客が企業が提供する商品・サービスなどを通じた体験に対して抱く満足度を示す指標である。品質、価格、サービス対応、使いやすさなどが評価要因となり、顧客ロイヤルティやリピート率に影響を与える。
◆高い顧客満足度は、キャッシュフローの安定性やブランドエクイティ向上に直結し、企業価値を高めるための重要な武器になりうる。既存顧客のリピートを促すのみならず、口コミ等を通じ新規顧客の獲得コスト削減にもつながる。高い顧客満足度を伴う顧客基盤の存在は、非常に大きな「無形資産(自己創設のれん)としての価値」を形成する。
◆「お客様は神様の精神」は現場では大事であるが、経営レベルで調査結果を鵜呑みにするとマイナスに作用することもある。「顧客の声」に対する「企業としての意思」はあくまで経営者が決めるものだからである。
◆顧客満足度調査は、企業によっては実施自体が困難な場合も多い。もし可能であれば、一般的なアンケート方式による調査をする意義はあるし、もし困難だとしても「顧客の声」をなんらかの方法(電話応対メモ、営業日報など)で収集し、分析して知見を得ることに意義がある。重要施策の前後を含んで継続的に実施すれば、時系列比較によって重要な示唆が得られる可能性もある。アンケート方式の場合の留意点は以下である。
▽一般的な顧客満足度調査のための設問
1.商品・サービスの品質
2.価格・コストパフォーマンス
3.顧客対応・サポート体制
4.購入・サービス利用の利便性
5.ブランド・企業への信頼感
6.総合評価
▽企業ごとの設問アレンジポイント
・業界特性に応じた設問設計
・顧客ターゲット(BtoC/BtoB)に合わせた設問設計
・市場環境や競争環境に応じた設問設計
▽アンケート方式の限界
・回答の偏り:顧客は強い不満や強い満足を感じた場合にのみ回答する傾向があり、マジョリティを占める中間層が感じている「微妙だが重要な印象」が反映されにくい。
・設問の歪み:曖昧な設問は、主観的な解釈の違いを生み、結果がぶれる可能性がある。設問がポジティブすぎても、実態を正確に反映しない恐れがあるため、設問設計による回答誘導が逆効果となる場合も多い。
▽回答結果の可視化方法
・グラフ化:顧客満足度を棒グラフ・円グラフで視覚的に表示。
・ヒートマップ:各設問の満足度を色分けして課題領域を可視化。
・クロス集計:地域や年代などで回答を分類し、セグメントごとの差異を明確化。
・NPS:「この商品を親しい人に勧めるか?」などで顧客ロイヤルティを測定。
・テキストマイニング:顧客の声(テキスト)を分析し、状況把握をしたり、改善点を抽出。
・時系列分析:過去の調査結果と比較し、改善傾向や悪化ポイントを時系列で追跡。
・他社比較分析:競合他社と比較し、強みや弱みを比較、離職防止に繋げる
【Plus】M&Aでプラス評価につながる顧客満足度調査結果の活用方法
売上等の財務指標と顧客満足度の相関関係が高いことを示せれば、高いバリュエーションの根拠として、非常に強力な買主説得ツールになりうる。リピート率の高さやNPSスコアの高さの原因を言語化しておくことで、さらに説得力が増す。インフォメーション・メモランダム等の初期的情報開示においてわかりやすくアピールし、意向表明書を入手する前に重要なプラス材料を買主の思考に埋め込むことが、M&A会社売却で成功する秘訣である。つまり、売却準備でM&A成否は大勢が決まってしまう。
【Plus】顧客満足度を向上してM&Aで成功するための売却準備
カスタマーサポートの強化:問い合わせ対応の迅速化や、FAQの充実。
定期フォローアップの実施:既存顧客への定期連絡を行い、意見を直接収集。
リピーター優遇施策:必要に応じ顧客ロイヤルティプログラムを導入し、満足度の高い顧客を育成。
従業員教育:顧客対応力を高めるための研修を強化し、ブランドエクイティの向上を目指す。
【Plus】優良M&Aアドバイザーの活用
M&Aアドバイザーとは、マッチングや取引に直接関連する事務を行うだけではない。例えば、買主の大企業がバイサイドFAを雇う場合の典型であるが「経営企画部(または買収先の事業部)が発注した臨時の高給派遣社員」のような感じで、ありとあらゆる作業を手伝う。売主もM&Aアドバイザーをどのように使うかは、目的(高く売りたい、早く引退したい、安心できる買主に譲りたい、売却後の期待がほしい、取引に伴うリスクを減らし安心したい等)に応じて設計すればよい。M&Aアドバイザー次第で受けられる業務範囲は変わってくるが、範囲外の作業だけ「対象企業が自前でやる」か「外注する」か選べよい。
ところで、多くの売主が身近に感じるM&Aアドバイザーは、広告やアウトバウンド営業に積極的なM&A会社であろう。しかし、これらM&A会社は、実は、本来的なM&Aアドバイザーではなく、ビジネスブローカーである。マッチングやM&Aプロセスに直接関連する事務しかしてくれないケースも多いため、優良なM&Aアドバイザーを探して、しっかりと売主ニーズや対象企業の状況を説明し、売却準備の全般を手伝ってもらうと高い費用対効果を実現できる。まずは、対象企業がM&A案件用の(になりうる)会社なのか、それともBB案件用の会社なのかを見極めるとよい。残念ながら、プロを選べるのは、前者を売りたい人だけである。