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M&A用語+

M&A用語は専門的なものが多く、誤用もされやすく、要注意です。
売却価格等の条件は、「取引関係者による評価」で決まります。
売主が成行任せは禁物で「買主サイドの評価を想定した準備」が勝敗を分けるのです。
取引関係者は、買主本人(買主の社内でも賛成派、反対派がいることも)だけではありません。
専門家(会計士、税理士、弁護士、コンサルタントが精査結果や価値評価を買主に報告)や、
銀行(買収資金の融資可否判断や融資条件を検討)等がどう評価するか、などなど。
買主サイドでもそれぞれの利益やリスクがあって、それぞれの主張があるのです。
正確な用語理解が、クライアント様の利益最大化への第一歩となります。
日本初の売主支援専業のM&A助言会社として、『売主様のためのM&A用語集』をご用意しました。
用語の意味に加え、知っておくべき豆知識をご紹介してますのでぜひ参考にしてください。

DCF法 (Discounted Cash Flow Method)

◆DCF法とは、対象企業が将来生み出すフリー・キャッシュフロー(FCF)を予測し、それを現在価値に割り戻して事業価値を評価し、一定の調整をして企業価値株式価値を算定する手法である。割引率WACCなど)を用いて、事業リスクや時間価値を考慮した計算が行われる。M&Aにおいては、一定以上の規模を誇る企業、成長企業や安定企業の評価に広く用いられる。

◆DCF法にもいくつかの手法が存在する。M&Aバリュエーションで最も一般的なDCF法はWACC法であるが、借入金等の有利子負債の急な増減が予定される場合にはAPV法が採用されることが多い。

◆なお、事業価値の算定のため将来の事業フリーキャッシュフローを永久期間分策定するのは実務上困難であるため、通常、5年程度の事業計画期間の事業フリーキャッシュフローを策定し、その後の期間については継続価値(ターミナルバリュー)として一括算定する。

手法名定義・概要
WACC法 (Weighted Average Cost of Capital)企業の加重平均資本コスト(WACC)を割引率とし、将来キャッシュフローを現在価値に割り戻す基本的なDCF手法。借入金と自己資本の構成を固定して評価できる場合に利用できる。
APV法 (Adjusted Present Value)事業の無借金価値(ベース事業価値)に、借入による節税価値(タックスシールド)を加算して企業価値を評価する。レバレッジの影響を個別に評価できる。
FCFF法 (Free Cash Flow to Firm)企業全体が生み出すフリー・キャッシュフロー(FCFF)を基に、企業価値を計算する手法。WACC法やAPV法はFCFF法の一種である。
FCFE法 (Free Cash Flow to Equity)株主が受け取ることが可能なフリー・キャッシュフロー(FCFE)を用いて、株式価値を直接評価する手法。将来にわたり無借金又は借入比率が一定である場合に利用できる。
Gordon成長モデル (Gordon Growth Model)将来キャッシュフローが一定割合で成長し続けると仮定し、その成長率を反映して企業価値を計算するシンプルな手法。将来期間の事業計画を策定する手間を省ける利点があるが、個別事情を反映することは不可能となる。
多段階成長モデル (Multi-Stage Growth Model)初期の成長率と成熟後の成長率を異なる段階で設定し、成長フェーズごとに企業価値を算出するモデル。成長が不均一な企業に適用される。このモデルも事業計画は不要だが個別事情の反映は困難な面がある。

◆DCF法を適切に運用する際に重要な要素は以下である。それぞれ主観が入りやすく、合理的な説得力をどうやって備えるかが重要となる。

将来期間のフリー・キャッシュフロー(計画期間のNOPLAT、実効税率、運転資本増減CAPEX
割引率リスク・フリー・レート、β値、エクイティ・リスク・プレミアム)
▽継続価値ターミナル・バリュー)(計画期間後の価値の計算方法、CAPEXと投資リターン)
▽永久成長率(ターミナル・バリューの評価で利用する)

◆同じく代表的なEBITDA倍率法は、単年度のEBITDA倍率を掛けるため計算は簡単だが、将来の成長等を反映することが難しい(あらゆる将来の変動要素を込めて倍率を置く必要がある)。それぞれ一長一短であるため、複数の手法を採用し比較して最終決定する評価プロセスが一般的である。

◆DCF法による評価が適している対象企業として以下を挙げることができる。

成長が見込まれる企業:新規事業や市場拡大が進んでいる企業は、将来の収益が大きく見込まれるため、DCF法での評価が適している。
技術力やブランド力がある企業:将来的に収益を生むことが見込まれる独自技術やブランド力を保有している企業は、DCF法で成長性を加味した評価しないと過小評価につながりやすい。
事業価値が重要な企業:不動産などの非事業用資産の価値(容易に資産の売買想定額を入手できる)の割合が小さく、変動性の高い事業として利益を生み出し続ける企業は、DCF法のメリットを享受しやすい。

◆DCF法の課題としては以下を挙げることができる。これらの課題をいかにクリアするかがM&Aアドバイザーの腕の見せ所でもある。

将来予測の不確実性:DCF法は将来のキャッシュフロー予測に大きく依存するため、事業計画の精度や外部環境の変化が大きく影響する。キャッシュフローはボトムラインであり、わずかな売上等のトップラインの変動だけでも大きく変動する。市場変動や競争環境の変化により、結果が大きくぶれる可能性がある。
割引率の設定が難しい:割引率(WACC等)は、資本コストや事業リスクを反映するが、その設定が主観的になりやすく、評価額が買主・売主間で大きく乖離する要因となりやすい。僅かな割引率の水準の違いでも、事業価値は大きく変動する。
計算が複雑で専門性が求められる:DCF法は、事業計画の精緻化や複雑な財務モデルを構築する必要があり、専門知識・スキルが求められる。対象企業に特殊な個別事情があれば、DCF法でなければ適正評価が難しいが、特殊な個別事情を適正に事業計画や評価モデルに反映するには高い専門性が要求される。

◆日本の中堅中小企業のM&Aでは、DCF法が使われないケースも多い。その理由は、対象企業の情報管理体制が上場企業等と比較して不十分であるためである。事業のバックグラウンド情報、事業活動情報や財務情報の管理体制のカバー範囲と精度が十分でないと、高品質な事業計画として外部に説明できない。そのため、中堅中小企業を対象企業とする案件では、DCF法の簡便法とも言えるマルチプル法(EBITDA倍率など)が主流となる。さらに、ビジネスブローカレッジ案件(中小零細企業案件でビジネスブローカーが担当する案件)では、さらに簡略化した純資産法年買法によって評価されてしまい、大幅な過小評価で売却してしまうケースも多い。

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