◆成約とは、M&A売主にとっての「M&A売却交渉の顛末の1パターン」であり、買主との間で様々な条件で合意し、最終契約を締結した上で定めた取引(株とキャッシュの交換等)を実行できた場合のことを指す。成約(クローズ)には、売主にとって期待以上の顛末となった「満足できる成約」とそうではない「妥協した成約」がある。

◆M&Aのプロフェッショナル目線から「今の日本のM&A市場での実態」を評価するとこうなっている。
▽売却案件のほぼ全てが「成約」にすら至らない「失敗」。
▽真摯に検討してくれる買主にたどり着けない「断念」が「失敗」の大半。
▽「成約」できたとしても、実質的に「失敗」の「妥協した成約」が「成約」の大半。
▽つまり「満足できる成約」はほんの一握り。
▽実は「満足できる成約」ですら「本当に満足してよい成約」とは限らない。
【Plus】売主にとって重要なのは「成約率」と「正しいバリュエーション以上の売却額」
▽優良なM&Aアドバイザーの成約率と売却額:優良なM&Aアドバイザーは「売らない方がよい」という助言ができる。売主にメリットが見込めない案件は、入口で丁重にお断りしつつ、折角ご相談いただいたので他の選択肢を助言したりするものである。つまり、安易に受託せず、売主にとってM&A会社売却が最善手で、成功可能性もかなり見込める場合にだけ受託する。。そのため、優良なM&Aアドバイザーは、1件1件に多くの時間と労力を投じることができ「成約率」はかなり高い(2~4割程度で並、8割以上の会社も存在する)はずである。また、M&Aに関する専門性が高い人しかおらず「正しいバリュエーション」を熟知しており、交渉方法、M&Aスキームや最終契約などで工夫して「高い売却額(本当に満足してよい成約)」を実現してくれる。「受託案件を絞って、しっかりサポートし、きっちり結果を出す」のが優良なM&Aアドバイザーである。M&A案件なら絶対にこちらが有利である。
▽ビジネスブローカーの成約率と売却額:一方、膨大な「成約件数」を誇る「自称M&Aのプロ」の実態は、M&Aアドバイザーではなくビジネスブローカー(BB業者)であることが多い。BB業者が誇る「成約件数」の内訳をみると「M&A案件(中堅中小以上、5億円から10億円以上の案件)」と呼べる案件はごく一部で、大半が「BB案件(零細案件、数百万から数千万円の案件)」である。そして「成約件数」を積み上げる過程で大量の「断念」「喪失」「仕切直し」を生み出しており、BB業者の成約率(=(「妥協した成約」+「満足できる成約」)÷受託総件数)はせいぜい5%前後、10%で最高レベルのようである。おそらく「満足できる成約だけの成約率」にすると、限りなくゼロに近いと思われる。BB業者は、広告やアウトバウンド営業による「開拓とマッチングの高速回転」を重視するビジネスモデルである。専門性の高い人材がほとんどいないし、1件当たりの投入時間も限定的である。「低い成約率(=大量の失敗件数)」と「安い売却額(年買法)」は絶対に宣伝しないが、「多い成約件数」や「短い交渉期間」を積極的に宣伝する傾向がある。しかし、これらは表と裏の関係にあると言えよう。BB案件で、どうしても売りたいならBB業者を使うしかない。その場合、できるだけ優良なビジネスブローカーを雇うべきである。できれば、BB案件としては売らず、M&A案件に育ててから売却した方がよい。