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M&A用語+

M&A用語は専門的なものが多く、誤用もされやすく、要注意です。
売却価格等の条件は、「取引関係者による評価」で決まります。
売主が成行任せは禁物で「買主サイドの評価を想定した準備」が勝敗を分けるのです。
取引関係者は、買主本人(買主の社内でも賛成派、反対派がいることも)だけではありません。
専門家(会計士、税理士、弁護士、コンサルタントが精査結果や価値評価を買主に報告)や、
銀行(買収資金の融資可否判断や融資条件を検討)等がどう評価するか、などなど。
買主サイドでもそれぞれの利益やリスクがあって、それぞれの主張があるのです。
正確な用語理解が、クライアント様の利益最大化への第一歩となります。
日本初の売主支援専業のM&A助言会社として、『売主様のためのM&A用語集』をご用意しました。
用語の意味に加え、知っておくべき豆知識をご紹介してますのでぜひ参考にしてください。

事業譲渡(Divestiture)

◆事業譲渡とは、法人が運営する事業(事業を構成する設備、在庫、顧客リスト、知的財産権など)の全部または重要な一部を第三者に売却する取引を指す。法人全体ではなく、事業の全部又は一部を切り離して売却するM&Aスキームの一種である。売主である法人は、事業譲渡の対象資産・負債を失う代わりに現金を受領する。仮に全事業を譲渡しても、法人(箱)の株主は変わらない。

◆会社法第467条以下が事業譲渡の法的根拠となる。重要な資産の譲渡にあたる場合、株主総会の特別決議が必要とされる。また、譲渡対象資産の移転には個別の契約や登記手続きが必要のものもある。

◆ 事業譲渡がもたらす売主への効果は以下のとおりである。

▽資産・負債の選択的譲渡:売主は保持しておきたい資産を保持し、売却可能な資産のみを譲渡することが可能である。負債の承継も(債権者との合意を条件に)選択可能である。
▽現金化:対価が現金で支払われるため、即時に事業をキャッシュ化できる。
▽リスクの遮断:特定事業に関連して新たに生ずるリスクを切り離し、他の事業に影響を与えない。

◆売主・買主間でのリスク分担調整のための最終契約条項は以下のとおりである。

表明保証条項:売主が譲渡対象事業について、重要情報を正確に開示したことを表明し、その真実性を保証する条項。
補償条項:表明保証違反等の予め定めた条件に抵触した場合、売主が一定の損害を補填する義務を負う。
競業避止義務条項:売主が譲渡後の一定期間につき、同一または類似事業を展開しないことを義務づけられる。

◆株式譲渡と比較した場合の売主にとってのメリット・デメリットは以下のとおりである。

▽メリット:
・選択的譲渡
:売主は、特定の事業だけ(例えば非中核事業や経営意欲が減退した事業など)を売却し、その他の事業(成長事業や新事業など)を継続して運営することが可能。
・リスク遮断による売却実現:「株式譲渡では売却できない会社」を事業として切り分けることで売却可能になる場合がある。株式譲渡では大きな価格ディスカウントとなる事情がある場合、事業譲渡にすることで倍率割引率が改善することを通じ、バリュエーションが改善する。
・法人継続:従来法人のまま、残存事業を経営したり、新規事業を興すことができる。繰越欠損金を利用できるチャンスがある。

▽デメリット:
・リスク継続:売主は、譲渡対象外の資産・負債にかかるリスクに加え、法人に紐づくあらゆるリスクを継続して負担する。
・複雑かつ煩雑な手続き:譲渡対象資産・負債を個別に指定する作業負荷があり、資産・負債の種類によっては、相手方の承諾、名義変更や登記手続が必要なものもある。買主は許認可を保有しているか、新規取得しないと許認可事業を運営できない。
・税負担:資産の譲渡利益等に法人税等が課される。また、課税資産であれば消費税の納税義務を負い、買主の買収資金が膨らむことから、価格交渉で株式譲渡比でやや不利になる。事業譲渡は、法的に組織再編ではなく、取引法上の行為(資産バラ売りを契約でパッケージ化したようなもの)であるため、税制適格時の課税繰り延べはできない。

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