◆エコシステム理論は、企業を一つの独立した存在ではなく、相互依存するプレイヤー(顧客、パートナー、サプライヤー、規制当局など)との共生関係の中で考えるフレームワークである。
◆企業は、このネットワーク内で自らの役割を確立し、価値の創造と共有を行う。デジタル時代のビジネス環境では、この理論が特に重要視されている。主に商品開発における技術共有に着目した「オープンイノベーション理論」と類似し、主に顧客の共有に着目した「プラットフォーム戦略」と類似しているが、エコシステム理論はさらに協業範囲を拡大している。
【Plus】企業を「共有(レンタル)」することで社会効率を高めることを目標とするエコシステム理論と、「所有(経営権を獲得)」により確実スピーディーにシナジー効果を発揮させることで企業効率を高めることを目標とするM&Aは、利用する場面が異なるものである。適宜適切に使い分けると最大効率での企業価値向上を目指すことが可能となる。
【Plus】エコシステムに属し、確固たる役割を確立している場合、買主企業と対象企業だけのシナジーにとどまらず、エコシステムを活用したシナジー効果を目指すことも可能となる。
【Plus】M&A交渉を始める前に、売主がエコシステム理論を活用して経営を改善するためには、対象企業が属するビジネスエコシステム内での役割と影響力を明確にし、強化することが必要である。例えば、パートナーシップを拡充したり、顧客やサプライチェーンとの関係性を深化させることで、より強固なポジションを築くことができる。
【Plus】M&A交渉が始まった後は、エコシステム内での企業の位置づけや、他のプレイヤーとの関係性について詳細に情報を開示することが重要である。買主は間違いなく「もしパートナーが共有関係を止めたらどうなるのか?」などの心配をし、心配が解消されないなら、最悪はディールブレイク、少なくとも条件悪化が待っているからである。重要な部分で他社依存が深い場合、具体的なバックアッププランまで説明し納得してもらう必要性がある。