◆従業員福利厚生とは、企業が従業員の生活の質を向上させ、働きやすい環境を整備するために提供する賃金以外の補助・支援制度やサービスの総称である。法的に義務付けられた「法定福利厚生」と、企業が自主的に提供する「法定外福利厚生」に分類される。
◆ 具体的な福利厚生の種類としては以下のようなものが挙げられる。
▽ 法定福利厚生(法律で義務付けられているもの):
・健康保険(協会けんぽ、組合健保)
・厚生年金保険
・雇用保険
・労災保険
・介護保険(40歳以上の従業員)
・子ども・子育て拠出金
▽ 法定外福利厚生(企業が自主的に提供するもの):
・住宅関連(住宅手当、社宅、家賃補助)
・健康支援(定期健康診断の拡充、人間ドック、スポーツジム補助)
・食事補助(社員食堂、食事券、昼食補助)
・育児・介護支援(育児休業、介護休業、託児所設置)
・通勤支援(通勤手当、社用車貸与)
・教育・研修(資格取得支援、研修費補助、書籍購入費補助)
・レクリエーション(社員旅行、社内イベント、福利厚生クラブ加入)
・財産形成(持株会、確定拠出年金制度、財形貯蓄制度)
◆ 企業が賃金以外に福利厚生を設けるメリットは以下のようなものがある。
▽従業員の満足度向上と定着率向上(離職率の低下)
▽健康管理・生産性向上(健康経営の推進、医療費削減)
▽採用競争力の強化(優秀な人材の確保)
▽税務メリット(課税対象外の非課税措置が利用可能)
▽企業ブランディングの向上(「働きやすい企業」としての評価向上)
◆実質賃金とみなされるリスクのある福利厚生としては以下のようなものがある。企業は追徴税や社会保険の負担が増えるリスクがあり、特に役員報酬とみなされると全額損金否認されるため注意が必要である。
▽実質的に従業員給与とみなされる福利厚生:
・ 現金支給型の手当(住宅手当、食事手当など)
・ 利用に条件がなく、誰でも受け取れる補助
▽実質的に役員報酬とみなされる福利厚生:
・ 特定の役員等のみが対象の優遇策
【Plus】企業価値向上やM&A時のアピールで使いやすい福利厚生
▽ 人材定着・採用力向上に直結する福利厚生
業種ごと企業ごとに効果の出る福利厚生は異なる。業界平均よりも離職率が低い、優秀人材の採用コストが低いなどがあるなら、利用状況を分析するなどして、それらに貢献している福利厚生を特定し、効果の高い制度と低い制度でメリハリをつけるとよい。
▽ 税制メリットを活かせる福利厚生
・ 財形貯蓄制度(従業員の資産形成支援)
・ 社宅・寮制度(福利厚生費として会社負担可能)
・ 社食・食事補助(従業員の生活支援)
▽ M&A時にアピールしやすい福利厚生
・ 成果主義型の報酬制度(インセンティブで回る企業は買収後の「経営の見える化」にフィット)
・ ストックオプション(経営陣等のモチベーション向上)
・ 社内ベンチャー制度(新商品・新事業創出につながる人材活用)