◆処分可能現金収支(フリーキャッシュフロー, FCF)とは、企業の営業活動キャッシュフローと投資活動キャッシュフローを加味した後に残る余剰キャッシュフローのことを指す。
◆すなわち、他人資本(借入や社債等)と自己資本(資本金等)のスポンサー(融資機関や株主)に分配してもよい金額(必要な投資を賄った後の営業キャッシュフローの余剰部分)であり、「1期間中の余剰キャッシュの増加額」という意味を持つ。「株式会社が事業運営する目的は、株主等のスポンサーのために余剰キャッシュを積み重ねること」という考え方に立つと、事業価値を算定する際にFCFを用いることが自然となる。
◆FCFを、管理会計目的で利用する場合とM&Aバリュエーション目的で利用する場合があるが、似て非なる部分があるため注意が必要である。次のような点で異なる。
・管理会計目的:キャッシュフロー計算書上の営業活動キャッシュフローから投資活動キャッシュフローを単純に差し引いた金額。「会社全体の1期間の現金及び現金同等物の創造額」を把握するのに適している。
・M&Aバリュエーション目的:DCF法におけるFCFは、企業価値や株式価値を直接算出するのではなく事業価値を算出するために利用される。企業価値=事業価値+余剰キャッシュ+非事業用資産であり、非事業用資産やキャッシュ扱いされる短期投資に関連するキャッシュフローを考慮すると二重計上となってしまう。あくまでも本業から生まれた経常的な営業キャッシュフローから経常的な投資キャッシュフローを差し引く必要がある。そのため、M&Aバリュエーション上のFCFは以下の計算式で算定される。
FCF = NOPLAT ± 運転資本増減 + 減価償却費 – CAPEX
※FCFの要素は、本業に関するもののみで構成され、非経常的な要素は除外すべき