◆フィナンシャル・バイヤー(投資ファンド買主)とは、M&A取引における買主の種類であり、一定の投資期間中に企業価値を向上したり、レバレッジ効果を利用したりして、株式価値を増大させた上でイグジットする際のキャピタル・ゲインの獲得を目的とした投資ファンドのことである。

◆M&A市場でメインとなるフィナンシャル・バイヤーは、PEファンドである。プライベート・エクイティ(未上場株式)を投資対象とするバイアウト・ファンド(買収ファンド:経営権(過半株式)の取得を目的とするファンド)である。主に、安定した業績が期待できる中堅規模以上の対象企業(凡そ企業価値50億円以上)を投資対象とする。ただし、小規模PEファンドの投資先として、またはロールアップ(追加買収)として、中堅中小企業(EBITDA1億円程度以上)を対象にすることも増えている。
◆PEファンド以外にも、M&A市場で登場する投資ファンドは存在する。投資ファンドが乱立する中、各投資ファンドも特徴を出し、また、いくつかの特徴をミックスした投資ファンドも登場している。
▽永久にイグジットしないPEファンド:イグジットをせず主に安定的な配当金を目的とするPEファンド
▽CVC(コーポレート・ベンチャーキャピタル):事業会社が作った投資ファンドで、親会社とのシナジー効果を模索する投資ファンド(バイアウト又はマイノリティ投資)
▽サーチファンド:ファンドと組んでいる「経営者になりたい個人」が後継者難の対象企業を探索(サーチ)するバイアウト・ファンド
▽アクティビスト・ファンド:現経営者の経営手法の問題を突き株式価値向上(不採算事業売却、自己株増や配当増など)を要求する投資ファンド(通常、マイノリティ投資)
▽ヘッジファンド:通常、上場株式、デリバティブや債券等の流動性の高いアセットクラスを投資対象とするが、オルタナティブ投資として未上場株式や不動産等に投資することもある(バイアウト又はマイノリティ投資)。
【Plus】売主は個人ファンドに要注意
個人(又は数人程度)が設立したファンドで中小零細企業を買収するケースが増えている。彼らは、受注後すぐに打診に走るBB業者の持ち込み案件が、適正価格の半額以下であることが多い点に着目し、金融機関から買収資金を借り、半額以下で買収した上で、即座に適正価格での売却を目指す。
【Plus】売主はタッチアンドゴーファンドにも要注意
組織的規模で展開しているタッチアンドゴーのPEファンドも存在する。半額以下で買収できる機会がある以上、経済合理性のみを追求すると、このような投資ファンドも登場してしまう。他の買主候補より意思決定が早いなど、効率重視のM&A業者からすると重宝される存在になっている。