◆財務諸表(FS)とは、企業の財務状況、経営成績やキャッシュフローの状況を表した書類のことである。貸借対照表(B/S)、損益計算書(P/L)、キャッシュフロー計算書(C/F)、株主資本変動計算書(S/S)の4つの資料(財務四表)で構成される。未上場企業ではC/Fを除いた財務三表のことを指す場合が多い。
◆ 財務諸表に含まれる書類の概要は次のとおり。
▽貸借対照表(Balance Sheet, B/S):
一定時点における財政状態(ストック情報)を示し、資産、負債、純資産の内訳を明らかにする。
▽損益計算書(Income Statement, P/L):
一定期間における経営成績(フロー情報)を示し、収益と費用から利益を計算する。
▽キャッシュフロー計算書(Cash Flow Statement, C/F):
現金及び現金同等物の流れを営業活動、投資活動、財務活動の3つに分けて示す。
▽株主資本変動計算書(Statements of Shareholders’ Equity, S/S):
一定期間における株主資本の変動を示し、利益剰余金の変化、増資、配当金などを記載する。
◆ 会計の種類は大きく次の3つに分かれる。
▽財務会計:外部利害関係者向けに企業の財務情報を提供することを目的とし、採用する会計基準に準拠した財務諸表を作成する。企業価値を外部に理解してもらうために最も重要。
▽管理会計:経営者向けに内部での意思決定を支援する目的で行われる。予算編成や原価計算などが含まれる。企業価値を高めるために最も重要。
▽税務会計:税務申告を重視し、外部報告は重視しない簡便な会計処理。未上場企業の多くが顧問税理士の指導の下で(又は税理士による記帳代行で)実施する会計。
◆ 会計基準の種類には次のようなものがある。会社によっては、複数の会計基準に同時に準拠し、複数の財務諸表を作成し開示する場合もある。
▽IFRS(国際財務報告基準):国際的に統一された会計基準。多国籍企業や海外展開を行う企業に適している。
▽US-GAAP(米国会計基準):米国の会計基準。米国市場で取引される企業に採用される。
▽企業会計基準(J-GAAP):日本国内で一般的に適用される会計基準。主に上場企業が採用する。
▽中小会計指針:日本の中小企業向けに作成された会計処理の指針で、税務申告での負担が少ない形で簡便化されている。会計参与設置会社を想定している。
▽中小会計要領:中小企業向けのさらに簡便な会計処理の指針。
◆ 財務諸表監査の意義と義務のある会社は次のとおり。
▽財務諸表監査の意義:財務諸表監査は、企業の財務諸表が適正に作成されているか(故意又は過失による重要な虚偽の表示がないか)を独立した監査の専門家が検証することで、財務諸表を「投資家や債権者が信頼できる状態」にすることを目的としている。
▽財務諸表監査を受ける義務のある会社:上場企業や会社法上の大会社は監査を受ける義務を負う。
【Plus】M&A売主にとって理想的な財務諸表及び補足情報
▽財務四表を準備
▽財務会計による財務諸表を準備
▽企業会計基準に準拠した財務諸表を準備
▽財務諸表監査で無限定適正意見を付された財務諸表を準備
▽重要な注記事項や補足情報が充実
▽企業全体の単位ではなく、譲渡対象となる事業のみ、将来期間で継続される事業のみの財務情報(試算値)を準備
▽P/Lやキャッシュフロー情報については、過小評価を避けるために合理的な調整を施した後の財務情報(調整値)を準備
▽少なくとも3期以上の一貫性
【Plus】未上場中堅中小企業のM&A売主が最低限準備すべき財務諸表と補足情報
▽キャッシュフロー計算書を決算書の外枠でよいので作成しておく(財務三表を基礎に作成可能)
▽重要な会計基準差異(税務会計(中小会計要領等)と財務会計(J-GAAP)の差異のうち特に重要性の高い差異)について補足説明(概算ベースでOK)
▽売却準備の中で公認会計士を絡めて最低限の検証(非監査業務・非レビュー業務の簡易な検証)と重要な発見事項を補足情報として整理(可能であればベンダーDDを実施)
▽売主が不利にならないよう必要な試算値や調整値を準備
▽少なくとも3期分について上記を実施