◆生成AIとは、人工知能の一種で、大量のデータを学習し、新しいデータを生成するシステムである。生成AIはテキスト、画像、音声、動画などのコンテンツを生み出すことができる。深層学習の進展や学習・推論半導体の進歩によって、自然な対話や創造的なコンテンツ生成が可能となり、ビジネスでの応用が進んでいる。
◆生成AIの背後にある技術は、深層学習(Deep Learning)、大規模言語モデル(Large Language Models, LLM)や敵対的生成ネットワーク(Generative Adversarial Networks, GANs)などが代表的で、これらの技術により、高度な創造的能力を実現している。
◆創造的業務の効率化(文章生成、画像生成や音声合成など)、人手によるデザイン・コピーライティング・データ分析の負担を軽減、パーソナライズドマーケティング(個別の顧客ニーズに応じたコンテンツや広告を迅速に生成しターゲットマーケティング)、大量データ処理やプログラミングの自動化といった面で高い効果が見込めるため、急速にビジネス現場に浸透している。
◆代表的な生成AIには以下が挙げられる。
・Microsoft Copilot: Office製品に統合された生成AI。OpenAIの技術が基盤。
・Google Gemini: Googleが開発したチャット型AI。広範データセットと強力検索機能に強み。
・ChatGPT: OpenAIが開発したテキスト生成に特化したAIモデル。
・Apple Intelligence: Apple製品のOSに組み込まれた生成AI。デバイス内情報を利用。
・DALL-E: OpenAIが開発したテキストから画像を生成するAI
・Stable Diffusion: ミュンヘン大学が開発した高解像度な画像生成に優れたAIモデル。
◆テキスト生成型の生成AIは、プログラミングも得意である。エコシステム内連携型プラットフォーム、ローコード、ノーコードなどのツールを駆使し、ある程度高度なプログラミングを要求される場合でも生成AIを駆使すれば、IT特化人材や外部ITベンダーに依存せず、各現場主導のDXを進めることができる(ただし、経営者は現場DXのルールを設定しないと、時間の経過とともに管理不能となるので注意)。
【Plus】M&A売主にとって、生成AIの活用は、社内業務(マーケティング、顧客対応、データ分析)の自動化、新製品のデザインやコンセプトの迅速なビジュアル化、業務データの高度な分析と見える化などによって、人件費の効率化と高生産性業務への人材シフトができ、顧客満足度向上、従業員満足度向上および費用削減などが期待できる。
【Plus】M&A売主は、M&A買主に対し、生成AI依存度の透明性、データプライバシーとセキュリティの確保の方法、AIの生成物の正確性や品質などについて開示するとともに、生成AIならではの課題に対する対策をしているか丁寧に説明する必要がある。M&A買主の意思決定メンバーの中には必ず常時保守的ポジション(しかも発言力が大きい)の人がいるものである。新しい技術に対し漠然と不安を覚える人にも安心感を提供しなければ、M&A売主のニーズは満たされない。
【Plus】M&A買主にとって、生成AIを十分活用できている企業を買収するということは、業務効率化とコスト削減、クリエイティブな能力向上やデータドリブン型意思決定といった、厳しい競争の中でも企業価値向上に貢献する行動習慣が根付いている会社を自社グループに取り込むことを意味する。
【Plus】M&A買主としては、対象企業が生成AIに過度に依存している場合、システムの安定性や持続性に問題が生じるリスクを認識せざるを得ない。ビジネスが一時的に停滞するリスクについて、M&A売主は、なぜリスクが低いのか、どのようなバックアッププランがあるかについて、丁寧に説明する必要がある。
【Plus】M&A買主は、対象企業を買収した後、PMIを実施しながらシナジー効果の発現に挑むことになる。対象企業が生成AIを駆使できている場合、もしくはM&A買主自ら生成AIを活用している場合、双方の知見を持ち寄り、さらなる効率化、新しい事業や商品、新しい販売方法など、広範囲のシナジー実現を効率的にチャレンジしやすくなる。