◆インカム・アプローチとは、評価対象資産(又はプロジェクト)が将来生み出すキャッシュフロー(インカム)を予測し、適切な割引率を用いて現在価値に換算する評価手法である。代表的な手法として、DCF法を挙げられる。株式、債券、不動産の他さまざまな資産において利用される。
◆資産評価アプローチには3つのアプローチ(インカム・アプローチ、マーケット・アプローチ、コスト・アプローチ)がある。インカム・アプローチは「将来の不確実性を合理的に評価に落とすことができる唯一のアプローチ」である。
◆将来キャッシュフローの予測に評価者の主観(恣意性)が入りやすい、計算に手間がかかる等のデメリットを指摘されることが多い。逆に言えば、合理的な前提条件を置いて将来キャッシュフローを想定できるなら、どのような資産、種類、ステージでも適用が可能な万能型の評価手法でもある。スタートアップ企業株式などの将来予測が困難な資産にはシナリオ分析と高いリスクを反映した割引率で、清算予定企業株式でも清算までのキャッシュフローと清算に伴うキャッシュフローを合理的に反映すればよい。
◆グローバル会計基準やJ-GAAPでも、また、種類を問わずあらゆる資産のアプレイザルでも利用されるのは以下のような理由がある。
▽他にない:時価会計に関連する会計基準(金融商品会計、無形資産会計、リース会計、退職給付会計、減損会計など)は、「将来キャッシュフローのリスクを資産・負債の時価評価に反映すべき会計基準」であり、他に客観的に説明可能な評価手法が存在しない。
▽柔軟性:幅広い評価対象に適用可能な柔軟性がある。
▽評価プロセス自体が有益:評価プロセスで、資産保有者(株主等)や資産運用者(経営者等)にとって有益な示唆を得ることができる。
【Plus】 M&A会社売却では、事業計画上の将来キャッシュフローの説得力が最重要
▽財務モデルの構造と前提条件:M&A売主は、将来キャッシュフローを計算する財務モデルの構造を合理的な構造とする必要がある。また、そのパラーメータ(前提条件)も合理的な数値を置くことで信頼性の高い将来キャッシュフローを予測することができる。以下のような点に注意すると外部から高く評価されやすい。
・モデル構造の合理性:重要な変動要素をパラメータ(前提条件)とした財務モデルであり、実際の過去パラメータを入力すれば、過去の財務諸表数値を概ね復元できる構造となっていることが望ましい。
・ビジネスモデルとの整合性:対象企業のビジネスモデルが適切に数値に反映された財務モデル構造とすることが望ましい。
・環境との整合性:マクロ経済環境や市場環境などの外部環境、社内の経営戦略や経営資源などの内部環境との整合性が保たれていることが望ましい。
・競合他社との整合性:競合他社の事業計画の成長率や収益率との差異を合理的に説明できるようにしておくことが望ましい。