◆IS-LMモデルは、ジョン・ヒックスとアルヴィン・ハンセンによって開発されたマクロ経済学の理論で、財市場(投資(Investment)及び貯蓄(Saving))と貨幣市場(流動性選好(Liquidity preference)及び貨幣供給量(Money supply)の均衡を同時に分析することで、経済全体の産出量と利子率の関係を示す。これはケインズ経済学の一部として、財政政策や金融政策が総需要にどのように影響を与えるかを理解するための基礎となるモデルである。
◆代表的な経済学理論としては以下が挙げられる。
IS曲線:IS曲線は、財市場における均衡を示し、利子率と総産出量の間に負の関係があることを表す。低い利子率では(借入コストの低減を通じ)投資が増え、それに伴い総需要も増加し、産出量が拡大する。
LM曲線:LM曲線は、貨幣市場における均衡を示し、利子率と総産出量の間に正の関係があることを表す。貨幣需要(キャッシュを手元に保有する需要)が高いと(債券市場の下落を通じ)利子率が上昇し、産出量が抑制される。
均衡点:IS曲線とLM曲線の交点が、経済全体における産出量と利子率の均衡を示す。この交点は、財政政策や金融政策の変更に応じて移動し、政府や中央銀行の政策がどのように実体経済に影響するかを理解するためのフレームワークを提供する。
【Plus】経営者として注意すべきリスクとチャンスとしては以下が挙げられる。
短期的なリスク:金融政策(LM曲線のシフト)によって利子率が上昇すると、借入コストが増加し、企業の投資が減少するリスクがある。特に、景気過熱を防ぐために中央銀行が金利を引き上げた場合、資金調達コストが上昇し、企業の成長が抑制される可能性がある。
短期的なチャンス:一方で、財政政策(IS曲線のシフト)を通じて公共投資や消費刺激策を講じる場合、需要が増加し、企業の売上や利益が短期的に拡大するチャンスが生まれる。また、金融緩和政策が行われる場合、低金利環境での設備投資や事業拡大が容易になり、成長の機会となる。
長期的なリスク:政府が財政赤字を増大させ、財政政策を過度に拡大すると、将来的に国債利回りが上昇し、利子率が高止まりすることで企業の資金調達が困難になる可能性がある。また、中央銀行がインフレを抑制するために金融引き締めを行う場合、景気減速のリスクが高まる。
長期的なチャンス:適切な金融政策と財政政策が連携して行われた場合、持続的な経済成長と安定したインフレ環境が実現し、企業の利益成長や株式価値の上昇が期待できる。政府のインフラ投資や技術革新支援などの財政政策が持続的に続けば、長期的なビジネスチャンスが増加する可能性がある。
【Plus】オーナーとしての株式価値の視点としては以下が挙げられる。
金融政策の変動:中央銀行の金融政策が変更され、利子率が上昇すると、企業の借入コストが増加し、利益率が低下することで株式価値が下がるリスクがある。特に金融引き締めが行われる局面では、将来キャッシュフローの予想額が小さくなることを通じ、株価が大きく下落することが予想される。
財政政策の影響:政府の積極的な財政政策によって需要が増加し、売上や利益が上昇すれば、株式価値が上昇する可能性が高まる。特に、景気回復局面では企業のパフォーマンスが改善し、株価が上昇する傾向にある。また、政府支出が特定産業に集中する場合、その産業に属する企業の株式価値は特に上昇することが期待される。