◆ケインズ経済学は、イギリスの経済学者ジョン・メイナード・ケインズによって提唱された理論であり、政府の積極的な介入が経済成長や失業の抑制に重要であると説くものである。特に不況時には政府が財政政策を用いて需要を刺激し、経済の回復を図るべきとされる。
◆古典学派が『供給が需要を生み出す』と主張するのに対し、ケインズ経済学は『需要が供給を生み出す』と主張しており、この点で対立的である。特に、消費や投資の低迷が続く昨今のような市場飽和状態においては、政府による需要喚起の重要性が一層評価されることが多い。
◆ケインズ経済学では以下の理論が代表的である。
有効需要の原理:経済の総需要(消費、投資、政府支出)が生産量や雇用に直接影響を与えるという考え方。需要不足は失業を生み出し、政府の介入でそのギャップを埋める必要があるとされる。
乗数効果:政府の支出増加が経済全体の生産・消費を拡大させる効果。例えば、公共事業への支出が労働者に給料をもたらし、それがさらに消費に回ることで、元の支出額以上の経済成長を引き起こすとされる。
【Plus】経営者として注意すべきリスクとチャンスとしては以下のようなものを挙げられる。
短期的なリスク:景気後退期には需要が低迷し、売上や利益が減少するリスクがある。政府が必要に応じて適切に介入しない場合、景気低迷が長期化する恐れがあるため、政治動向を注視し予測しながら意思決定を下す必要がある。
短期的なチャンス:政府の景気刺激策に伴う政府支出の流れに沿うことで売上拡大のチャンスがある。また補助金などの利用機会も増える。景気回復期には、消費需要が回復するため、そのタイミングを見計らってタイミングよく設備や人材へ積極投資し、市場シェアを拡大することが可能である。
長期的なリスク:長期的には、政府の財政赤字が膨らむことで将来的な税負担が増加し、それが企業経営に悪影響を与えるリスクがある。また、過度な政府介入が市場の歪みを引き起こし、自由競争の環境が損なわれる恐れもある。
長期的なチャンス:安定的な経済成長を支えるために、インフラや教育への投資が政府主導で行われることがあり、それにより新しいビジネスチャンスが生まれる可能性がある。また、政府の規制緩和や産業育成政策も企業成長の好機となる。
【Plus】オーナーとしての株式価値の視点としては以下のようなものを挙げられる。
好況期:ケインズ経済学に基づき、政府が積極的に財政政策を実施し、景気が回復すると企業収益が増加し、自社株式の価値が上昇する可能性がある。また、需要が強い局面では市場での企業価値も向上し、株式の市場価格が上昇することが期待できる。
不況期:政府が迅速に対応しない場合、経済の縮小に伴い株式価値が減少する可能性がある。一方、政府の介入が早ければ株価の下落が抑制される可能性もある。