◆労働協約とは、労働組合と使用者(企業)が労働条件や労働環境について合意した契約である。労働基準法の規制を上回る条件を設定することが可能であり、労働協約の内容は、個々の労働者との労働契約よりも優先される(労働組合法第16条)。これは、労働条件を向上させ、労使間のトラブル防止や労働者の権利保護を目的としている。
◆労働協約は労働組合が存在する企業に限られる。労働組合が存在しない場合、労働協約を締結する必要はないが、労働組合が設立されれば協約締結が求められる可能性がある。10人以上の労働者を雇用する事業場では、労働組合法に基づき労働組合の結成が可能であり、協約締結の交渉が発生し得る。
◆労働協約で定める内容は以下のような事項が一般的である。
賃金
労働時間・休日
福利厚生
解雇・退職条件
安全衛生・労働環境
組合活動の保障
懲戒・処分規定
労働争議の解決方法
【Plus】M&Aでマイナス評価を避けるためのポイント
開示資料の整備:労働協約を最適な状態にアップデートし、デュー・ディリジェンス(DD)で開示しても問題を指摘されないよう準備しておく。
過剰な労働条件の是正・交渉:労働組合と円滑なコミュニケーションを図り、協約の更新時に過保護な労働条件があれば適当な条件に変更しておくことが望ましい。
過去の労使トラブルの解消:労使間でトラブルが発生している場合、未解決の問題を解決し、必要に応じ協約を変更しつつ、従業員に周知することで再発防止に努める。
労働協約の買収後の承継条件を明確化:労働協約は買収後も自動的に効力が継続するため、買主に対して、買収後の対応方針を説明できるよう準備する。可能であれば、M&A交渉前に労働組合との調整を行い、協約内容の柔軟化を進めておく。