◆レバレッジドバイアウト(LBO)とは、バイアウト(買収)の資金として、自己資金(エクイティ)だけでなくローン(LBOファイナンス)も加えることで、投資リターンをテコ入れ(小さな力をテコの原理で大きな力に変換)する買収形態のことを指す。
◆事業リスク自体が変わらない中で投資リターンが大きくなるということは「財務リスク(=ローン弁済・利払いの負担」を負うということでもある。予定通りの弁済が不可能になると、エクイティの価値は大きく棄損する。つまり、投資リスクもテコ入れされるとうい点は要注意である。

◆LBOが成功しやすいのは、安定したキャッシュフローを作り出す事業の場合である。仮に、LBOローン50億円、エクイティ50億円の合計100億円で対象企業の株式100%を取得したとする。事業キャッシュフローからLBOローンを完済すると、企業価値は100億円のまま変わらなくとも、エクイティの価値は50億円から100億円に倍増する。もし成長・改善・欠陥治癒等を施すことで企業価値が150億円に増加していれば、株式価値は150億円、つまり3倍増となる。
◆逆にLBOローンが失敗しやすいのは、不安定なキャッシュフローを作り出す事業の場合や、キャッシュフローに対してLBOローンが大きすぎる場合である。仮に上記と同様のケースで検討すると、LBOの弁済が滞り、株式担保権を実行されてしまい、全資産を競売にかけられてしまうと、清算処理後の残存価値しか残らない。もし残存価値がゼロであれば、株式価値は50億円からゼロになる。
【Plus】M&A売主は、LBOローンを組みやすい事業を育成すると高額売却の可能性が広がる
LBOローンは通常ノンリコースローン(非遡及型ローン)であり、銀行から見るとハイリスクである。LBOローンの審査は、通常のコーポレートローンの審査よりも厳格である。しかし、十分な金額のLBOローンを取り込むことができれば、M&A売主は、M&A買主が出せるエクイティ(自己資金)を大きく上回る売却金額を獲得できることになる。できるだけ「安定的なキャッシュフロー(ダウンサイドリスクが低い)の事業」を育成しておくと、大きな果実を収穫できるということである。その他にも、銀行から高く評価されやすいように、様々な観点から売却準備をしておき、余計な減点を避けておくことは、M&Aプロセスにおいても極めて有益である。