◆レバードβとは、レバレッジ効果が反映された状態のβ値のことを指す。β値は「特定の株式銘柄の株価が、株式市場全体とどの程度連動して動くか」を表す統計データである。完全に市場と連動する場合に1.0となり、ハイリスク銘柄は1.0超、ローリスク銘柄は1.0未満となる。市場収益率と株価変動率を基礎にβ値を算出するが、この生のβ値はレバードβである。レバレッジ効果とは、株主資本以外の他人資本(借入金や社債等)によって企業の調達資本を拡大させ、テコの原理のように効率的にキャッシュフローを創出できる効果(失敗すれば急速にキャッシュを失う諸刃の剣の効果)のことである。レバードβは、以下の計算式で算出される。エクセル関数で簡単に計算できる。

◆M&A売主は「レバードβは小さいほうが良い事だ」と覚えておくとよい。ほんの少しレバードβを増やしただけで、対象企業の株式価値が大きく減少してしまう。0.5ならラッキー、1.5ならアンラッキー、2.0を超えたら最悪である。DCF法評価額がザックリ2倍、3倍も変わる。
【Plus】専門家による適切な調整が必要
レバードβは株式価値算定に重大な影響を及ぼす数字である。ただ単純に計算式に従って計算すると大幅な過小評価の原因にもなるリスクの大きな数字でもある。計算プロセスにおいて頻繁に異常値が登場するため、それぞれの意味、実際の金融市場・株式市場・政府の動きや企業の事業リスクの状況等を踏まえて適切に調整しながら計算しなければ「意味のない数字」となる。できれば、株式市場を常にウォッチしているCFA(米国証券アナリスト)や証券アナリスト(日本証券アナリスト協会会員)等の有資格者に計算させると安心である。公認会計士も株式価値算定を行う専門家としてよく登場する。株式市場を常時ウォッチしていて、統計学にも通じた公認会計士に計算してもらうべきである。