◆ローコードプログラミングとは、従来の手書きコードに比べて、視覚的なツールやドラッグ&ドロップ機能を活用して、アプリケーションやシステムを開発する手法を指す。
・視覚的な開発環境:ユーザーはGUIを使用してアプリケーションの構造を作成し、コードをあまり書かなくても開発できる。
・カスタマイズ性:ある程度のコード記述による拡張性も残されているため、必要に応じて高度なカスタマイズも可能。
・スピード重視:アプリケーション開発のスピードを向上させることが主目的で、ビジネスユーザーでも扱えることが多い。
◆これにより、専門的なプログラミングスキルが不十分な人でも、比較的簡単に独自のソフトウェアを構築できるようになる。開発速度を大幅に向上させ、特にプロトタイプの作成や小規模な業務アプリの開発に適している。今までITベンダーに開発依頼して、高額の開発費と長い開発期間というコストを負担していた会社は、自社制作にチャレンジすると、思わぬ収穫が得られる可能性がある。
◆代表的なローコードプラットフォームには以下のようなものがある。
・Microsoft PowerApps: Microsoftエコシステム内で動作し、Office 365やDynamics 365との統合が可能。
・アウトシステムズ: ビジネスユーザーによるWebやモバイルアプリ開発向き。カスタマイズへの対応力も高い。
・Mendix: ビジネスユーザーとプロITプログラマーが協同して開発。クラウドアプリ(ERPなど)との統合も。
【Plus】生成AIの登場により、最低限のプログラミング知識があれば、必ずしもローコードやノーコードに依存せずとも、ある程度の高度なプログラミングを低コストで開発できるようになっている。MicrosoftのOutlookやOfficeを多用していているなら、ローコードのDynamics 365が有力候補であるが、Googleアプリを多用する会社であればローコードではないエコシステム連携型Google Apps Scriptが候補となる。複数アプリを統合することで、優れた独自システムの低コスト開発に挑戦できる。
【Plus】中堅中小企業でローコードプログラミングを導入する際、特に費用対効果が高いのは、ビジネスプロセスを自動化する場面である。たとえば、ローコードプラットフォームを利用して在庫管理や顧客対応ツールを作成することで、システム開発コストを抑えながら、生産性を向上させることができる。
【Plus】ERPのカスタマイズやデータ管理ツールなど、ローコードの導入によって、社内業務の効率化をすばやく実現する事例も増えている。
【Plus】M&A会社売却を目指すM&A売主としては、対象企業のDX化を、ローコードを活用し、低コストで開発することは、全体としてプラスに評価されるはずである。しかし、経営者がしっかりコミットし「パフォーマンス目標を達成するために、どのように経営資源を調達し、そのうちITシステムをどう使うのか、それをどういうルールで開発するのか」を管理しておかないと、時間経過とともに「わかる人がいなくて修理できないシステム」、「複数の部署で重複するシステム」が乱立してしまう。場合によってはIT部門が一元管理していた従来型ITシステム開発の方がまだまし、という結末もありえる。環境や目標の変化に応じ、ITシステムの開発・改造を迅速にできる環境にしておくべき。そうでないと、M&A買主から見て「魑魅魍魎なITリスクの塊」に見えてしまう。