◆マーケティングオートメーションとは、狭義のマーケティング活動を自動化し、効率化するための技術やプラットフォームを指す。具体的には、顧客データの収集、セグメント化、パーソナライズされたコミュニケーション、見込み客(リード)の育成などを一貫して管理し、マーケティングプロセスを効率化することである。これにより、マーケティングチームは反復的なタスクを自動化し、より高度な戦略に集中できるようになる。
◆たしかに、MAを導入することで効率化が図れるが、すべての顧客に画一的なアプローチをとったり、顧客が「機械的」と感じブランドエクイティを棄損するリスクもある。過度に自動化するとスパムと捉えられる危険すらある。特にBtoBビジネスでは人間関係を前面に押し出すべきであり、過度にMAを利用すると、不信感を醸成することにつながりかねない。MAをきめ細かく運用するには、結局、マーケターの力量が重要となる。
◆MAで成果を出すには、データの質と量が極めて重要である。MA導入・運用費用も相応にかかり、結果としてROIを低下させてしまう本末転倒な事例も少なくない。また、自動化を進めすぎた結果、肝心のマーケターの創造性が劣化しやすくなる点も見過ごせない。そのため、(特に中堅中小企業は)MAをあくまで補助ツールとして扱い、マーケティング予算のごく一部で可能な範囲で使用すべきである。
【Plus】M&A売主はMAを導入し、マーケティング活動の費用対効果を高められれば、企業価値を高めることができる。MAは道具に過ぎず、ブラックボックスとなりやすい。目標パフォーマンスを定義した上での、パフォーマンス改善手段の選択肢としてMAがある。MAの貢献を測定できる体制にしておかないと、逆効果もありえる。
【Plus】MAの副産物として、重要なデータが整備される点を挙げられる。交渉が進む中で、顧客データやリードの質、育成プロセスの効果等の開示を求められた際、手元にあるデータを最低限の加工をして提出すればよいため、タイムリーに重要データを用意でき、DDの負担が小さく、シナジー施策を検討・実行しやすい会社であることをアピールできる。
【Plus】M&A買主にとって、MAの導入状況やその効果を評価することは重要である。M&A買主もMAを活用している場合は特に、買収後のマーケティング活動を統合し、効率化することが比較的容易となる。クロスセルやアップセル戦略との親和性もあり、M&A買主からの評価が高まる理由となる場合がある。