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M&A用語+

M&A用語は専門的なものが多く、誤用もされやすく、要注意です。
売却価格等の条件は、「取引関係者による評価」で決まります。
売主が成行任せは禁物で「買主サイドの評価を想定した準備」が勝敗を分けるのです。
取引関係者は、買主本人(買主の社内でも賛成派、反対派がいることも)だけではありません。
専門家(会計士、税理士、弁護士、コンサルタントが精査結果や価値評価を買主に報告)や、
銀行(買収資金の融資可否判断や融資条件を検討)等がどう評価するか、などなど。
買主サイドでもそれぞれの利益やリスクがあって、それぞれの主張があるのです。
正確な用語理解が、クライアント様の利益最大化への第一歩となります。
日本初の売主支援専業のM&A助言会社として、『売主様のためのM&A用語集』をご用意しました。
用語の意味に加え、知っておくべき豆知識をご紹介してますのでぜひ参考にしてください。

繰越欠損金(Net Operating Loss, NOL)

◆繰越欠損金とは、ある会計年度において損金が益金を上回り、課税所得がマイナスになった場合、その欠損金を将来の課税所得から控除できる制度である。これにより、将来に得られる所得に対する税負担を軽減できる。欠損金を繰り越すには、青色申告と別表七等による確定申告が必要である。

◆例えば、今年100百万円の欠損金、翌年に50百万の欠損金を計上した後、翌々年に200百万円の所得を計上したとする。この場合、翌々年には150百万円の繰越欠損金があるため、翌々年の課税所得を150百万円分軽減できるというもの。税率を30%とすれば45百万円のキャッシュフローを改善できることになる。但し、改善できるタイミングは赤字で厳しい今年や翌期ではなく、黒字回復した翌々期に関する申告納税のタイミングとなる。

◆繰越欠損金の制約には、充当期限に関するもの、年単位での消費割合および税制適格要件に関するものがある。

充当期限の制約: 10年以内(平成30年4月1日以前開始事業年度の欠損金は9年)
単年度消費割合の制約: 中小法人等は制約なしだが、中小法人等以外の法人は年50%から80%
税制適格要件: M&A売却後の5年事業継続、多額の借入をしない(つまり、制度濫用の脱税目的M&Aや、当面の資金不足がない場合には否認される)

◆中小企業者等(原則として資本金等が1億円以下で大法人の子会社ではない企業)に限定された特例として、将来の所得からの控除ではなく、過去の実際納税額(上限あり)を今還付してもらう「欠損金の繰り戻し還付」も存在する。前事業年度の納税額が原資となるため、目先の資金繰りにとって有益であれば、ぜひ利用すべき制度である。例えば、前期に30百万円の納税をしていて、今期が欠損金を計上している場合、30百万円を還付してもらえる。つまり、苦しい今期(正確には申告時期)のキャッシュフローが改善する。翌々期に60百万円の納税をして、その翌期が欠損であればそこで繰り戻し還付が可能であるし、翌期の50百万円の欠損金を翌々期の所得から控除して150百万円の所得とし、45百万円の納税で済ます方法もある。還付請求すれば欠損金は費消(充当)されてしまうので、将来の繰越控除には利用できなくなる。連続青色申告、還付請求書(及び、災害損失欠損金の場合には中間仮決算)が必要である。

【Plus】繰越欠損金は将来キャッシュフローを改善する効果があり、その価値の分だけ株式価値が向上する。売主は買主バリュエーションに反映してもらうため、関連情報を適切に開示する必要がある。多額の未充当欠損金が残っている場合、その節税効果も多額となる。ただし、欠損金が計上された背景、充当可能性が高い理由や今後の欠損金発生リスクを丁寧に説明し、ネガティブな印象を残さないように細心の注意を払うべきである。