◆オープンイノベーション理論とは、企業が研究開発や技術開発を目指すにあたり、自社経営資源のみに依存せず、外部と積極的に連携することで、新しい価値を生み出し、競争力を高める戦略である。従来のクローズドイノベーション(自前開発)とは異なり、大学、研究機関、スタートアップ、異業種企業等とのライセンス契約、業務提携やM&Aなどを活用する点が特徴である。
◆オープンイノベーションを活用する企業は、以下のような目的を持っている。
▽技術開発スピードの向上:競争が激しく変化の速い市場では、研究開発のリードタイムを短縮することが重要である。社外リソースを活用することで、技術革新を迅速に進める。
▽開発コストの削減:自社開発するよりも、外部リソースを活用した方が、コスト効率が良い。
▽新規事業の創出・市場拡大:異業種・他分野の知見を取り入れることで、新たな事業機会の開拓機会が生まれる。新しいビジネスモデルや収益構造の開拓により非連続的成長を目指す。
▽人財育成:外部の最先端人材との交流により、自社の人財の知識スキルを強化。
◆ 従来の営業機密管理との違い
項目 | クローズドイノベーション | オープンイノベーション |
---|---|---|
技術開発の範囲 | すべて社内で完結 | 社外の技術・アイデアを活用 |
知的財産の扱い | 企業内に囲い込む | 必要に応じてライセンスや共同開発で活用 |
新技術の獲得手段 | 内部開発 | M&A、業務提携、CVC投資、ライセンス契約 |
競争優位の考え方 | 技術や情報の独占が強み | 他社との連携が強み |
【Plus】オープンイノベーションと事業投資活動(M&A)への影響
▽優秀人材の取り込み:競争力を高めるため、最新技術・ノウハウ・ビジネスモデルを有するスタートアップを買収するM&Aが増加している。事業規模拡大というより、新技術や優秀人材を獲得する目的であるケースも多い。日本でも最優秀人材がキャリアのスタートから起業を選ぶケースが徐々に増えていることが背景にある。
▽シナジー狙い:オープンな知識共有の文化を作ることが重要であるため、買収後も対象企業の独立性をほぼ全面的に維持し(経営管理・財務管理・情報開示等のレベルアップは不可欠であるが)、シナジー効果を早期実現・最大化することを優先する。
▽CVCによる新事業テスト:CVCでの部分投資であれば、経営支配権の獲得を伴う買収よりもリスクが低く、失敗しても損失は限定的。
▽CVCを経由した段階買収:M&Aの前段階として部分的なCVC投資を行い、将来的に完全買収するケースもある。