◆プラットフォーム戦略とは、自社が提供する商品やサービスの上に、多くのユーザーやサードパーティの企業が関与できる仕組みを構築し、エコシステムを形成する戦略である。この戦略では、ネットワーク外部性(利用者が増えるほど顧客価値が高まる)が鍵となり、模倣防止策とともに有効に機能すれば持続的な競争優位を生み出せる可能性がある。
◆プラットフォーム戦略を展開するメリット・デメリットとしては、以下を挙げることができる。
▽メリット:
・ネットワーク外部性の活用:自社サービス利用者が増えるほど、各顧客にとってのサービスの利便性や価値が向上し、さらなる利用者を呼び込む好循環(ネットワーク外部性)が生まれる。
・規模の経済の実現:プラットフォームに多くの参加者(利用者・サードパーティ企業)が集まることで、限界的な顧客獲得維持コストを抑えながら事業規模を拡大できる。
・収益モデルの多様化:販売売上以外にも、手数料収入、広告収入やデータ販売収入等による多様なマネタイズが可能となる。
▽デメリット:
・初期投資が莫大:プラットフォームを構築するためのシステム開発・認知獲得・利用者獲得コストが膨大な金額になる。
・参加者管理が難しい:プラットフォームに参加する企業や利用者の行動管理(規約違反の監視等)やカスタマーサポートなどの負担が大きく、この負担を避けると利用者満足度が低下したり、フリーライダーによる売上喪失といったダメージが発生する。
・競争が激化しやすい:成功すると競合他社や新規参入者が模倣プラットフォームを立ち上げる場合もある。技術革新によって初期投資を引き下げられる場合等では、先行者の収益性が大幅に悪化するリスクがある。
◆プラットフォーム戦略を展開する競合企業に対抗するための手法として、以下の方法が考えられる。
▽差別化戦略:プラットフォームと直接競争するのではなく、特定のニッチ市場や特化型サービスを提供することで独自の価値を作る。
▽競合のプラットフォームを逆に活用:競合プラットフォーム上において、高付加価値な製品・サービスを展開し、ブランド力を強化 する。
▽エコシステムに依存しない独自モデルの構築:競合のプラットフォームに依存しない 直販・D2C(Direct-to-Consumer)戦略 を強化。
▽M&Aによる市場参入:既存のプラットフォーム事業者をM&Aし、競争力を強化 することで、既存の競争環境に適応する。
【Plus】M&A売主にとってのプラットフォーム戦略の意義
▽成長可能性の証明:M&A買主が欲するのは、過去の実績でなく、将来キャッシュフローの安定性や成長ポテンシャルである。プラットフォーム事業は、安定性とともに継続的な成長が見込めるため、高品質な開示資料とともに効果的にプレゼンすることによって、非常に高いM&Aバリュエーションをしてもらえる可能性がある。
▽M&A買主とのシナジー可能性:対象企業が運用するプラットフォームを活用したシナジー効果を期待できる買主に対し、シナジー効果の可能性を、定量的・合理的にアピールすることでさらなる高額売却の可能性がある。
▽高額売却のための売却準備:大規模組織の優良買主は、必ず保守的な検証も実施する。高品質な情報開示をするには、経営・財務管理のみならず各事業オペレーションに関するデータについて、財務諸表と整合的な状態で適切に管理(情報管理)することが必須である。各種DDで減点されないよう、事業リスクも包み隠さず開示しつつ、同時にリスク軽減策についても合理的に説明できるようにしておくとよい。このような売却準備をしておけば、高額売却の確実性が増す。