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M&A用語+

M&A用語は専門的なものが多く、誤用もされやすく、要注意です。
売却価格等の条件は、「取引関係者による評価」で決まります。
売主が成行任せは禁物で「買主サイドの評価を想定した準備」が勝敗を分けるのです。
取引関係者は、買主本人(買主の社内でも賛成派、反対派がいることも)だけではありません。
専門家(会計士、税理士、弁護士、コンサルタントが精査結果や価値評価を買主に報告)や、
銀行(買収資金の融資可否判断や融資条件を検討)等がどう評価するか、などなど。
買主サイドでもそれぞれの利益やリスクがあって、それぞれの主張があるのです。
正確な用語理解が、クライアント様の利益最大化への第一歩となります。
日本初の売主支援専業のM&A助言会社として、『売主様のためのM&A用語集』をご用意しました。
用語の意味に加え、知っておくべき豆知識をご紹介してますのでぜひ参考にしてください。

プロスペクト理論(Prospect Theory)

◆プロスペクト理論とは、心理学者ダニエル・カーネマンと経済学者アモス・トヴェルスキーによって提唱された行動経済学の理論で「人々がリスクを伴う選択においてどのように意思決定を行うか」を説明するものである。ベストセラー本「ファスト&スロー」が有名。プロスペクト理論は、従来のミクロ経済学が前提としていた「合理的意思決定(完全合理性)」を外し、実際の人間の意思決定行動に基づく観察に焦点を当てている点で画期的である。

◆プロスペクト理論の主な主張は以下のとおり。つまり自然な状態だと非合理的な意思決定をするのが一般的な人間の思考パターンであるということである。

参照点依存性(Reference Dependence): 人々は結果を絶対的な基準ではなく、ある「参照点」を基に評価する。例えば、ある状態から利益を得た場合と別の状態から同じ利益を得た場合では、心理的な反応が異なる。参照点が変わることで、同じ量の利益であっても評価が変わる。
損失回避(Loss Aversion): 人は同じ金額の利益よりも損失の方に強い心理的な反応を示すという現象である。具体的には、人々は損失を受けたときの不快感の強さが、同じ額の利益を得たときの快感を上回るとされる。このため、損失を避けることが利益を得ることよりも重要視される傾向がある。
価値関数(Value Function): プロスペクト理論によると、価値関数は損失領域で凹型、利益領域で凸型をしている。これは、損失の影響が利益よりも大きく、また利益が増えるとその影響が次第に小さくなることを意味する。
確率加重(Probability Weighting): 人々は合理的に期待される確率より高くまたは低く思い込む傾向がある。例えば、非常に低い確率の出来事が過大評価され、非常に高い確率の出来事が過小評価されることがある。

◆合理的な意思決定をすれば期待値150(最大値300、最小値0)を得られる状況にあるとする。自分にとっての参照点が期待値と無関係なのに参照点に引きずられてしまう、最大値を目指し最小値を避ける合理的努力をせず、確実な50で安易に妥協する、という傾向が人間(消費者、従業員、経営者やオーナー等)にあることを意味する。これを利用し、これらに惑わされないようにすることで大きな利益を獲得できる機会が生まれる。

【Plus】経営者が「消費者」の非合理的意思決定を活用する方法としては以下を挙げられる。多くが実際に機能していることを実感できるはずである。消費者がこれらに慣れている場合、さらに上回るアイデアが重要となる。

価格設定における損失回避の活用:消費者は利益を得るよりも、損失を避けることに対して強い感情を抱く傾向「損失回避」を強調した価格戦略を採用することが有効である。
例1:期間限定割引プラン
消費者に「今すぐ購入しないと損をする」といった心理的圧力をかけることで、短期間での購入を促進する。例えば「期間限定20%オフ!」などである。消費者が「失うかけている価値」を強調することで、即決を促す。
例2:フリーミアムモデルの活用
初めは無料で提供し、その後有料プランに移行させる際に「無料で使える機能を失う恐れ」を感じさせることで、有料サービスへの切り替えを促す。消費者は「無料で使えていたものを失いたくない」という心理に動かされやすい。
参照点の利用:消費者は「現状からの利益」を基準に判断する傾向があるため、参照点を操作することで、消費者の行動を誘導することができます。
例1:相対的な価格設定
消費者に対して「他の商品の価格」と比較し、自社商品がいかにお得かを強調する。例えば「同じ品質の商品が通常価格の2倍の値段で売られている」というように、価格を他の選択肢と比較して「お得さ」を強調する。
例2:「割引前の価格」を強調する
商品やサービスを提供する際に、割引前の通常価格を強調し、消費者に「今だけの特別な利益」を認識させることができる。消費者は、通常価格と比較し割引が大きいと感じるため、購入意欲が高まる。
確率加重を利用したプロモーション: プロスペクト理論によると、消費者は低確率の利益に過大に反応しがちである。これを活用する方法は、例えば宝くじや抽選のようなプロモーションを行うことである。
例1:抽選付きの販促活動
低確率でも大きな利益を期待させるようなキャンペーン(例えば「1万人に1人当たる高額抽選」)を行うことで、消費者に参加を促すことができる。消費者は、低確率であっても「当たるかもしれない」という希望を感じ、参加する確率が高まる。
例2:ランダムディスカウントの導入
購入者全員にランダムで割引や商品をプレゼントするキャンペーンを実施し、消費者に「当たり」を期待させることで、購買意欲を高めることができる。確率が低くても消費者の期待感を煽ることが有効である。

【Plus】経営者が「競合企業」の非合理的意思決定を活用する方法としては以下を挙げられる。横並びがいかに非合理的な意思決定なのか、いかに日本にはチャンスが眠っているかを示唆している。

過剰なリスク回避を逆手に取る:競合企業の経営者がリスク回避的な性格であれば「過度なリスク回避」による相手の機会損失を自社が獲得できる。例えば、新市場進出や新商品投入の際、競合が慎重になり過ぎている場合、自社が積極的に進出することで市場シェアを獲得できる。
損失回避に伴う過剰反応を利用する:競合企業の経営者が「損失回避」に基づいて非合理的に反応する場合、その心理的特性を逆手に取って競争戦略を打ち立てることができる。
例1:競合が価格戦争を開始する前に先手を打つ
競合が市場シェアを失いたくないために、価格を引き下げそうな場合、それを見越して価格戦略を考えることが重要である。自社があらかじめブランド価値や品質の高さを消費者に浸透させたうえで安定的な価格戦略を打ち出すことで、シェアと販売単価を守ることができる。
例2:競合が過剰な投資に走る場合
競合が将来の損失リスクに過剰反応し、無理に市場シェア拡大や設備投資に走る場合、逆に市場シェアを奪えれば、その企業の財務状況が悪化する可能性が高まる。自社は、リスクの少なく収益性の伴うビジネスモデルに切り替えることで、競合の資源不足を促し、突き放すことができる。
確率加重の非合理的な意思決定を利用する:競合が低確率の利益や成功を過大に評価する場合、投資するタイミングを狙い、少ない資本で自社の競争力を高めることができる。
例:宝くじ的なプロジェクト投資の落とし穴
競合が低確率で高リターンを期待して資本を過剰に投じる場合、消費者や投資家が自社の安定したビジネスモデルを高く評価し、市場での信頼を得ることができる。

【Plus】企業オーナーにおける影響としては以下を挙げられる。

M&A交渉: M&A交渉での損失回避に傾きやすいため、注意して合理的な期待値以上での取引成功に向けて合理的な努力をすべきである。

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