◆Q&Aシートとは、M&A取引の関係者が相互に質問と回答を交わすための資料である。検索やグルーピングが容易であるため、スプレッドシート形式(エクセルやGoogle Spread Sheet等)が採用されることが多い。質問ではなく資料提出を求める場合には、別に資料リクエスト用のスプレッドシートが用意されることが多い。
◆M&Aプロセスの進展に応じ、Q&Aシートはたびたび登場する。最も売主の負担が大きくなるのは、⑧バイサイドDDでのQ&Aである。優良なM&Aアドバイザーを起用していれば、売主の負担は大きく軽減できる場合がある。
-1024x917.jpg)
②プロジェクト準備の段階で、M&Aアドバイザーから対象企業や売主に関する質問をし、売主が回答することで、M&Aアドバイザーがインフォメーション・メモランダム等を作成するための情報を提供する。
⑤詳細開示と⑥バイサイド価値算定(仮)の間で、買主から対象企業に関する質問をし、売主が回答することで、インフォメーション・メモランダムの理解を深め、意向表明書(LOI)を提出するか、どのような内容で提出するかを買主が検討するための情報を提供する。M&Aアドバイザーを経由するため、その力量次第では売主の負担を軽減できる場合がある。
⑧バイサイドDDの一環として、買主から対象企業に関する質問をし、売主が回答することで、インフォメーション・メモランダムの理解を深めるとともに、インフォメーション・メモランダムに記載のない重要リスク情報について有無と内容を確認するための情報を提供する。M&Aアドバイザーを経由するため、その力量次第では売主の負担を軽減できる場合がある。
⑧バイサイドDDの一環として、買主が雇った専門家(公認会計士、税理士、弁護士、経営コンサルタント等)から対象企業に関する質問をし、売主が回答することで、インフォメーション・メモランダムの理解を深めるとともに、インフォメーション・メモランダムに記載のない重要リスク情報について有無と内容を確認するための情報を提供する。M&Aアドバイザーを経由するため、その力量次第では売主の負担を軽減できる場合がある。
⑩最終契約交渉と⑪最終契約確定の間で、買主から後発事象についての質問をし、売主が回答する。
【Plus】M&Aアドバイザーの力量次第で増減する売主の負担
Q&Aシートを使用して交わされる質問数は、1社の買主からだけで数百問から1,000問以上に上ることも少なくない。質問者は、M&Aアドバイザー、買主(競争入札時には複数買主)、買主が雇った専門家(公認会計士、税理士、弁護士、経営コンサルタント等、場合によって複数買主に就くそれぞれの専門家)、場合によっては買収ファイナンスを提供する銀行などがいるため、回答しなければならない質問の数は、トータルで数千問以上になることもある。
しかし、それぞれが同じような質問をしてくるため重複が多く、また、開示資料で開示済みの事項をそのまま質問してくることや専門家がテンプレートのまま関係性のない質問をしてくることも日常茶飯事であるため、質問の重要性を判断し、いかに重要な質問は丁寧に、そうでもない質問は効率よく捌いていくか、が問われる。特に専門家DDは、いわば悪魔の証明(問題がないことを証明する)であり、「保険(念のため)の質問」が大量に用意されやすい。
優良なM&Aアドバイザーは、インフォメーション・メモランダムを作成する段階で、対象企業や売主のニーズ等を深く理解し、また、買主の期待・心配や買主サイド専門家の業務内容も深く理解している。買主サイドからまずM&AアドバイザーにQ&Aシートが送られてくるため、売主はM&Aアドバイザーの助言を利用しながら、効率的にメリハリをつけて回答作業をすることができる。
売主は、通常業務をこなしながら、Q&Aだけでなく、インタビューや資料リクエストにも応えていかねばならないから、優良なM&Aアドバイザーを味方につけておくことを強く推奨する。