◆リソース・ベースト・ビュー(RBV)は、企業が持つ経営資源(リソース)に基づいて競争優位を獲得することを主張する経営理論である。差別化戦略によって企業価値を高めたい中堅中小企業に向いている。
◆この理論では、企業の競争力は、希少性、模倣困難性や代替不能性を備えた経営資源を持っているかどうかに依存する。外部環境よりも内部資源に着目し、持続的な競争優位を生み出すことを目指す点が特徴的である。主要なフレームワークとしては、VRIOフレームワークやコア・コンピタンス理論がある。

◆同じく非常に有名な競争理論として、ポーターの競争理論やPPM理論(ポートフォリオ理論)があるが、こちらはどちらかと言えば大企業向けの外部環境重視の競争理論である(そもそもコストリーダーシップは定番商品のトップ企業にしか採用できない)。つまり、RBVは、ポーターの差別化戦略(ニッチ戦略)を前提とし、差別化を成功させて競争を勝ち抜くためのより具体的な戦略として、経営資源の特徴強化などに注目している理論、という位置づけに整理すると理解しやすい。
【Plus】VRIOフレームワーク
M&A売主がRBVを活用し、売却前準備として対象企業の企業価値向上を図るには、まず、対象企業が保有する希少な経営資源(Rarity)を特定、それを強化して財務成果に繋げる(Value)ことである。例えば、独自技術、ブランド、特化人材など、競争優位に直結する要素を強化し、それを売上増や費用減に具体的に活用するなどである。次に、競争優位を持続可能にするため、模倣防止の仕組み(Inimitability)(徹底的な情報管理、知的財産権、あえて言語化しにくい技術など)を構築し、これらを適切に運用できる組織を構築(Organization)することで、買主にとっての魅力を増すことができる。
【Plus】RBVを意識してニッチトップ企業を育成することが高額売却への最短距離
ニッチトップ企業はM&A市場では「お宝企業」である。地域ニッチトップ→全国ニッチトップ→グローバルニッチトップと、実質独占している市場が大きいほど、その価値はうなぎ上りとなる。収益性・安定性・成長性のいずれもがマックスレベルまで期待でき、シナジー効果についても色々な可能性を秘めている企業だからである。
M&A買主は、対象企業の経営資源がどのような価値を持ち、M&A後に自社の戦略やシナジー効果にどのように寄与するかを評価する。模倣困難性の高い、希少で価値を生み出す経営資源を重視し、市場競争力を高める戦略を構築することが可能となる。また、M&A買主の経営資源が加わることで、対象企業の希少経営資源をさらに強化することができる可能性もある。
【Plus】高品質な情報開示がなければ、諸刃の剣が売主を襲うリスクもある
M&A売主としては、交渉開始後、経営資源の詳細説明(なぜ、競合比で収益性が高いのか?などの理由として)を求められる。経営資源の独自の強みと、それが持続的であることを示すことで、買主側に企業価値の高さをアピールできる。例えば、独自の技術特許やブランド力など、独自の経営資源の価値を数字と論理で客観的かつ合理的に説明することが重要である。
「希少性の高いユニークな強み」は、価値の源泉であると同時に、諸刃の剣でもある。多くの買主候補が、扱いにくい、リスクが高い、というマイナス先入観を持つ所からのスタートと想定しておくべきである。失敗が減点となる大規模組織であるほど、そのような傾向があり、そのような買主ほど高額買収する資本力がある。M&A売主にとって大事な事は、売却準備をしっかりやって、高品質な情報開示をできるようにしておくことである。M&Aプロセスの全ての局面でプラスに働く。買主選定、初期的開示情報、魅力的な提案・アピール、リスク軽減の説明、DDでの減点回避など、あらゆる局面で有益である。