◆収益モデルとは、一般的な財務モデルでは考慮しない売上高の要素(例えば、売上単価と顧客数など)に分解してモデル化したものである。事業毎の特性を考慮し、適切な分解方法で売上高をブレイクダウンし、過去の売上高を再現できる予測精度にした上で、説得力の高い将来売上高の予測のために作成される。

【Plus】販売費用を加味すべき場合も多い
例えば、BtoC事業で、新規顧客を獲得し続けることが成長ドライバーであり、新規顧客獲得のためにネット広告の支出額が重要な場合、収益モデルのパラメータとして広告費の金額や関連マーケティング指標(CTR・CVR・CPA・ARPU・Churn Rate・LTV等)を置き、これらのパラメータを用いて売上高を再現するモデルを構築することで、将来予測が可能となる。売上高の規模に直接影響を与える費用は、収益モデルの重要パラメータなので、必ず考慮すべきである。
【Plus】成長・改善施策の効果を合理的に定量評価することができる
成長施策や改善施策(どんな施策にどれだけ費用を投じるか)によって、どれだけの効果がどの指標(パラーメータ)に影響するか、を過去実績または合理的なロジックによって売上高に反映させるモデルを構築する。それによって、成長・改善施策を反映した「説得力のある力強く成長する売上予測」を策定できる。
【Plus】事業計画数値の説得力が高ければ、DCF法で高評価してもらえる可能性が増す
中堅中小M&A取引で策定される事業計画の売上予測は、単純に過去のトレンドを伸ばしたものや、所属する業界の成長率予想をそのまま採用したり、それらが使用できない(したくない)場合には強引に日本のGDP成長率予測等を採用することもある。しかし、これらは、評価するのがシェアトップクラスの大企業であれば一定の説得力があるとしても、中堅中小企業の売上予測をする際には、誤差が大きすぎて使えない。特に、市場平均を超えて成長できる見込みの中堅中小企業の場合、独自の売上成長予測を立てなければ、買主から過小評価されてしまう。
成長企業やユニークな特徴を持つ企業のバリュエーションを適正に行うにはDCF法(インカム・アプローチ)しかない。EBITDA倍率法などのマーケット・アプローチでも倍率の設定が難しい。純資産法や年買法などのコスト・アプローチは論外である。DCF法では将来フリー・キャッシュフローが基礎となる。この将来予測は、売主が恣意的に操作可能であるため、買主は「過度に楽観的なのではないか?」と懐疑的になりやすい。この「懐疑心を如何に解くか」が価格交渉において極めて重要である。
そのためには「事業計画の説得力を向上するしかない」のである。収益モデルは、この信頼性を向上するためのツールとして有益である。