◆ショートリストとは、ロングリスト(吟味前の買主候補リスト)を基礎に、詳細に吟味を加え、成約可能性(フィージビリティ)と売却金額(インパクト)を掛け合わせたM&A売却期待値が一定以上の買主候補に絞り込んだものである。
【Plus】ショートリストとネームクリアランスの関係
売主に各買主候補の特徴等をM&Aアドバイザー等が説明し、打診可否を確認する作業(ネームクリアランス)を加える誠実なM&Aアドバイザーもいる。売主にとって、絶対に売りたくない先で匿名情報でも情報を流したくないケースもありうるからである。この場合、ネームクリアランス後のリストが打診予定先リストになる。特に、競合企業(同業)だと「できれば売りたくない」「万策尽きた場合に検討する」ということもあるだろう。
【Plus】ショートリスト(打診先リスト)は長い方が良いとは限らない?
普通に考えれば、打診先が多い方が成約の確率が上がるように思える。しかし、問題は、提案の質を保てるかという問題、不必要に情報を拡散してもよいのかという問題である。打診先のリストが長いほど、提案の質は低下するし、機密漏洩のリスクも高まる。あくまでも、最大のM&A売却期待値(成約可能性×売却金額の大きさ)を実現する最適打診先ポートフォリオを用意することが重要である。
【Plus】複数のショートリストを用意することの意義
例えば、詳細吟味して、ショートリストに30社の買主候補が残っているとする。単純に30社に対してアポイントが入った先から順に打診に動くという方法が普通である。しかし、この段階で慎重を期すべき案件も多い。売却額を高めるには、買主に刺さる成長・改善アングルやシナジー候補が必要だし、できるだけ活発なM&A競争環境を構築したい。そのため、ショートリストを期待値の大きさで優先順位を付けながら10社ずつに分割し、①様子見リスト、②本命リスト、③補欠リストのようにして、①の様子見リストで、提案の刺さり具合を確認し、競争入札に応ずる買主候補を確保しておく。②の本命リストでは、初期的開示資料をブラッシュアップし、さらに刺さりやすい提案に練り上げ、競争入札参加希望者がいる旨をつたえながら、本命買主の買収意欲を高めていく。
このような方法は、たしかに工数がかかり、時間や手間もかかる。しかし、M&A売却期待値を増大する重要性と比較すれば、わずかな努力に過ぎない。効率重視のビジネスブローカーは採用してくれないだろうが、結果コミットの優良なM&Aアドバイザーであれば、さまざまな工夫を施しながら、クライアント利益を最大化してくれるだろう。