◆株式譲渡制限とは、株式会社の定款において、株式の譲渡を会社の承認なしには行えないようにする制約を設けることを指す。これにより、安定的な株主構成を維持することが可能となる。
▽定款で定める内容:株式譲渡制限を設ける際には、定款に以下のような内容を記載する必要がある:
・譲渡の制限内容:株式の譲渡には会社の承認を必要とする旨。
・承認機関:譲渡承認を行う機関(原則として株主総会、取締役会設置会社は取締役会でも可)。
・制限の適用対象:制限を課す株式種類(普通株式、種類株式など)。
▽株式譲渡制限を設ける目的:
・会社経営の安定化:株式譲渡を制限することで、意図しない第三者が株主になることを防ぎ、会社運営の安定性を維持する。特に問題のある人間が株主になることで株主総会が混乱する、他の株主や取締役と近づいて、企業価値を棄損するような行動を取られる、といった万が一のリスクを遮断することができる。
▽会社法上の公開会社と閉鎖会社:
・会社法上の公開会社:株式譲渡制限を一切設けていない会社(自由な株式譲渡が認められる)。上場会社はすべて会社法上の公開会社である。
・会社法上の閉鎖会社:株式譲渡制限を定款で定めている会社。圧倒的多数の株式会社は会社法上の閉鎖会社である。未上場会社は公開会社になることもできるが、閉鎖会社であるのが通常である。
◆株式譲渡制限のある会社を売却するための手続き
▽株主総会や取締役会での承認:株式譲渡を承認。
▽株式譲渡契約(SPA)の締結:株式譲渡契約書を締結。
▽譲渡代金の授受と株主名簿の更新:新株主を記載する(株券発行会社は株券を交付)と同時に、株式譲渡の代金を授受。
【Plus】公開会社(譲渡制限なし)と閉鎖会社(それ以外)の会社法の扱いの違い
公開会社は、多くのステークホルダーが存在する相対的に大規模な株式会社が想定されている。そのため、公開会社と閉鎖会社では、以下のような違いがある。
項目 | 公開会社 (株式譲渡制限なし) | 閉鎖会社 (株式譲渡制限あり) |
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取締役 | 3人以上 | 1人以上 |
取締役会 | 設置義務あり | 設置義務なし |
会計参与 | 設置義務なし | 設置義務なし (取締役会を設置する場合は、監査役もしくは会計参与を設置する義務あり) |
監査役 | 設置義務あり (業務監査と会計監査が必須) | 設置義務なし (取締役会を設置する場合は、監査役もしくは会計参与を設置する義務あり) (会計監査のみで可) |
取締役・監査役の任期 | 取締役:2年以内 監査役:4年以内 | 10年以内 |