◆税務調査とは、税務署や国税局が法人または個人事業主の申告内容が適切であるかを確認するために行う調査である。法人の場合、法人税や消費税、源泉所得税などの適正な納付が主な調査対象となる。通常、実地調査と呼ばれる訪問形式の調査が行われる。
◆法人に対する税務調査で特に注目されるポイントは以下である。
▽売上の過少計上:売上除外(いわゆる「架空経費」や「二重帳簿」)、領収書の不正処理
▽架空経費の計上:実際には発生していない費用の計上、関連会社や個人のプライベート支出の計上
▽役員報酬や賞与の不適切な処理:高額すぎる役員報酬の損金不算入、認定給与や退職金の処理の誤り
▽棚卸資産の過少評価:在庫の過少評価による利益削減
▽源泉所得税の未納:外国人労働者への給与やフリーランス契約(みなし従業員)の支払い漏れ
▽消費税の不適切な処理:架空仕入や非課税取引の不適切な処理
▽関連会社間取引の価格設定:移転価格税制に基づく不適正な取引価格
▽根拠のない貸倒損失や除却損:法的な根拠のない貸倒損失や除却損の計上
◆追徴時のペナルティ等
▽追徴税:本来納付すべき税額又は、不足額を納付。
▽加算税:
・過少申告加算税(10%~15%)
・無申告加算税(15%~20%)
・重加算税(35%~40%)
・延滞税:納期限を過ぎた税金に対する利息(年率14.6%など)。
▽刑事罰:
・懲役
・罰金
【Plus】M&A売主が注意すべきポイント
▽税務調査に関する情報の管理:過去に税務調査を受けている場合、調査結果や指摘事項を記録しておく。再発防止をしていない場合、買主からの評価が低下するリスクがある。
▽税務調査での誠実対応:税務調査官に誠実に対応することが重要である。税務調査官も目標額があるため少額追徴(印紙漏れ等)をあえて差し出すことが全体として有効な場合も多い。
▽M&A最終契約の厳格化:過去の税務調査で厳しい指摘があれば、M&A最終契約での表明保証条項や補償条項もしくは前提条件条項や誓約条項が非常に厳しいものになるリスクがある。
▽セルサイドDDの実施:M&A前に税務デューデリジェンスを売主が実施し、問題を特定して、解消策を検討する。
▽自主的な修正申告:税務調査に入られて想定外に多額の追徴負担を強いられることのないよう、M&Aに通じた税理士等と相談しながら自主的に修正申告をしておく等も有益である。
▽税務リスクの開示:条件悪化を避けるため、事実関係や改善した内容について丁寧に情報開示することで買主からの信頼を獲得すべきである。
▽専門家の起用:税務に詳しい優良なM&Aアドバイザーを起用することで、リスクを軽減できる可能性が増し、作業負担も大幅に軽減する。