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M&A用語+

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M&A用語+

M&A用語は専門的なものが多く、誤用もされやすく、要注意です。
売却価格等の条件は、「取引関係者による評価」で決まります。
売主が成行任せは禁物で「買主サイドの評価を想定した準備」が勝敗を分けるのです。
取引関係者は、買主本人(買主の社内でも賛成派、反対派がいることも)だけではありません。
専門家(会計士、税理士、弁護士、コンサルタントが精査結果や価値評価を買主に報告)や、
銀行(買収資金の融資可否判断や融資条件を検討)等がどう評価するか、などなど。
買主サイドでもそれぞれの利益やリスクがあって、それぞれの主張があるのです。
正確な用語理解が、クライアント様の利益最大化への第一歩となります。
日本初の売主支援専業のM&A助言会社として、『売主様のためのM&A用語集』をご用意しました。
用語の意味に加え、知っておくべき豆知識をご紹介してますのでぜひ参考にしてください。

株式公開買付け(Take Over Bid, TOB)

◆ 株式公開買付けとは、特定の発行会社(対象企業)の上場株式を市場外で直接多数の株主から買い集める行為を指す。買付者(同業類似企業、同業類似海外企業や投資ファンドなど)が、特定の価格で一定の期間にわたって既存株主に株式を買い取りたい旨を公開提案し、結果、対象企業の経営支配権を獲得すること等を目的とする。TOBによる経営権獲得は、買収(Acquisition)であるから、M&Aの一形態と言える。

【Plus】TOBの際、買付者は公告や届出書の形式でTOBに関する考えを公表し、対象企業はそれに対して意見を表明をする義務を負う。これらは既存株主に対し応募に値するか否かをそれぞれの立場から主張しているものである。重要なのは、これらの中に、それぞれが起用した公認会計士等による株式価値算定報告書が付され、値するしないの根拠として利用される点である。買収者は「これくらい市場時価に上乗せすれば売るだろう」という目算で価格を設定し、対象企業が賛同するなら「妥当ですね」となり、反対なら「こんな安値なら売ってはダメ」と主張する。そのように両サイドの公認会計士等が理論的におかしくないギリギリの範囲で鉛筆を舐めるわけである。市場時価は所詮はマイノリティ価格であり、シナジー効果も含まれない上、低い流動性によって市場時価は安値放置されることも多い。そのため時に何割もの支配プレミアムが市場時価に上乗せされる。

【Plus】創業者や株式を相続したオーナー一族にとって、上場しただけではキャッシュ化は完了しておらず、TOBによってまとめて売却することでキャッシュ化が完了する。まずIPOをしてリスクマネーを調達、信用力を高め優秀な従業員を集め、大きな商いを扱う大企業に育成した後、M&A(TOB)によって最終キャッシュ化を図るというのが、超富裕層になるための1つの道である。

【Plus】未上場企業のオーナーが、TOBを「雲の上の争い」や「対岸の火事」と考えるのも無理はない。しかし、同じ人間が既存株主、対象企業経営者、買収者として、過去に数多の問題を引き起こし、結果として複雑な規制が敷かれている。これらを学習しておけば、いざ自分がM&A会社売却にチャレンジする際、特別に気を付けるべき「人間の悪い方面の本性」を学習できるかもしれない。例えば、以下のような観点は未上場企業オーナーにとっても将来役に立つ「気づき」を与えてくれるだろう。

・ ガラス張りと言われる上場会社であっても、その内情、真の姿は外部からはわからない。
・ 毎日多くの投資家が売買している上場会社の株価であっても、割安に放置されることがある。
・ シナジー効果の大きさは、買収者次第で大きく変わる。買収価格も大きく変わる。

・ 株式価値算定報告書では公認会計士等がギリギリの理屈でもっと高い又はもっと安いの根拠を作ってくれる。しかしギリギリを攻めてくれるのは「公表」されるし「報酬」を貰えるからである。
・ 優秀ではないと考えられる経営者は買収後に解任させられる。優秀な経営者であれば辞めたくても慰留や契約で縛られる。
・ 中には脱法的な行為も辞さない、ルールがないなら何でもやる濫用的な人はいる。買収という大金が動く局面では特にいる。買収者や仲介者も倫理観が欠けていれば想定外の行動を起こしうる。
・ 過半株主と少数株主は法的には公平だが、実態としては圧倒的な格差がある。
・ 買収を成功させるためには会社に残るべきキーパーソンとの信頼関係が重要。

◆以下、一般的なTOBの解説を示す。

【参考】 日本のTOB規制: 金融商品取引法で規制されており、一定期間中(20~60日)の買付後に一定割合以上の議決権株式(多数から5%超又は少数から1/3超)を取得する場合、買収者は公開買付け(TOB)を実施する必要がある。また、TOBを行う際には、期間や買付価格、買付予定株数などの詳細を公開しなければならない。買付者は既存株主に不利となる条件変更はできないが、競合買付者が登場してきた場合の対抗措置など、既存株主にとってより有利な条件への変更である場合、先行買付者は条件を変更することができる。また、強圧的二段階買収による既存株主の被害を回避するため「(応募のあった株式の)全部買付義務」も導入されている。

【参考】違反等をした場合のペナルティ、失敗した場合の被害

違反行為とペナルティ:規定に違反してTOBを行った場合、金融当局による厳しい罰則が科される。具体的には、違法買収に対し罰金や制裁措置、そして刑事告訴が行われる可能性がある。また、違法行為に関連して株主が訴訟を起こすこともできる。
TOB失敗のリスク:TOBが失敗した場合、買収者にとってはTOBに要した各種コストが無駄になるだけでなく、買収者も上場企業であれば自社株価の下落リスクがある。また、対象企業の株主や従業員に対する信頼を失い、将来の一般的なビジネス機会にも悪影響を及ぼすことがある。

【参考】対象企業の経営者がM&Aの前に気を付けるべきポイント

防衛策の準備:敵対的TOBに対抗するため、企業経営陣は事前にポイズンピルなどの事前防衛策を準備することができる。この場合も、あらゆるケースで買収者による経営権獲得を阻止できるわけではなく、企業価値向上のために有益である等の既存株主利益に資する理由が必要である。現経営陣の自己保身を目的とした防衛策発動は認められないことも多い。
株価の高位安定:公開買付けの対象企業になるのは、株価が割安状態にある場合が多い。したがって、企業価値の最大化に努め、効果的に情報開示に努めることで株価が高位安定していれば、相当規模のシナジー効果の実現に自信を持つ買収者でない限り、TOBを実施するメリットがなくなる。つまり、企業価値向上が最大の防衛策と言える。

【参考】対象企業の大株主がM&Aの前に気を付けるべきポイント

利益の確保:TOBに応じるか否かは、既存株主にとって利益確保の重要な判断ポイントである。TOBの価格が公正であるかを慎重に検討し、市場価格と比較してどの程度のメリットがあるかを判断することが求められる。応募しなかった場合のシナリオについても想定しておくことが重要である。