◆超富裕層(UHNWI)とは、欧米先進国基準によると「純金融資産が30百万ドル以上(約45億円以上, 150円/米ドル換算)の個人を、準超富裕層(Very Hitgh Net Worth Indivisual, VHNWI)とは「純金融資産が5~30百万ドル以上の個人」を指す。一方、日本においては、超富裕層の定義が異なり「純金融資産5億円以上の世帯」とするケースが多い。調査会社ALTRATA社が、毎年「World Ultra Wealth Report」を公表している。
◆米国には2023年時点で約12万人(人口の0.04%)の超富裕層(30百万ドル基準)が存在する。テクノロジーや金融業界での起業家や経営トップが多い。一方、日本には約2万人弱(人口の0.01%))の超富裕層(30百万ドル基準)が存在する。伝統的大企業のオーナー社長に多く、何代もかけ資産を築いたケースが目立つ。

◆米国と比較すると、超富裕層の純金融資産の1人当りの平均額は大差ないが、その人数、特に人口比の人数において、日本は圧倒的に差をつけられている。米国では、レーガノミクス以来採用されてきたトリクルダウン理論によって、格差が拡大しすぎているという批判が多い。しかし、株主資本主義の徹底による大企業経営者の業績改善コミットの強さ、旺盛な教育投資と越境人材交流による新技術発明の好循環、規制緩和やチャレンジ精神による新技術の事業への応用、企業の新陳代謝、ジョブ型雇用・レイオフの緊張感・DX導入成功等による労働生産性の高さ、移民受け入れ等による人口増などが、米国経済の成長を支え、その恩恵が積極的なリスク資産での資産運用によって好循環し、さらに超富裕層の資産が拡大された結果である。一方、日本は、そもそも中間志向や安定志向が強く、大企業の安定を守る規制も強固で、新たに超富裕層になりにくい構造にある。教育や人材交流も改善余地が大きく、起業家精神を抱ける人はいまだに例外的で、イノベーションが起きにくくなっていると言える。また、元来真面目な現場人材が(飽和前の高度経済時代は良かったものの)バブル崩壊ごろからは過剰品質を推進し、昨今ではDX化の妨げにもなっている。米国は格差縮小しないと政治がもたないが、日本は「新しい大成功者が次々登場し賃上げしても儲かる会社を育成」しないと経済がもたない、という評価が妥当である。もしかすると、金融リテラシーが低い日本人の場合、リスク資産での資産運用に及び腰なので、「より消費に回る」という意味で、トリクルダウン理論が米国よりワークするかもしれない。つまり「中堅中小M&Aによって超富裕層の仲間入り(に近づく)ことこそ、日本経済のカンフル剤」と言える。
◆超富裕層になるメリットには以下のようなものを挙げられる。
最高水準の医療・ヘルスケア:
日本の最高水準の医療やヘルスケアの他、日本の遥か先を行く欧米のプライベートクリニックや専属医師による定期的なヘルスケアも受けられ、自分および家族の生命や健康が守られる。
最高水準の教育:
欧米の最高水準の教育を家族(子供や孫など)に提供でき、優れた人材との交流を育ませ、豊かな人生体験を謳歌させてあげられる。
ライフスタイル:
最高水準の住宅、別荘、専用コンシェルジュ、リゾート会員権、限定イベントやアートコレクションの優先権、プライベートジェットやヨットなど、超一流の生活体験が可能になる。
影響力の行使:
慈善活動や寄付を通じて、価値観や信念に基づいた社会的影響を与える機会を得られる。
高度な資産管理サービス:
プライベートバンクやファミリーオフィスによる資産管理サービス。資産運用、相続計画、節税、慈善活動までサポートされ、個々のニーズに合わせた資産管理が行われる。
魅力的な投資機会:
一般投資家にアクセスできないプライベートエクイティ、不動産ファンド、ヘッジファンドなど、超富裕層専用の資産運用機会が開放される。
国際的なプライバシー保護:
資産保護のために、国際的な法律事務所や会計事務所の一流サービスを活用できるようになる。
◆超富裕層になるための方法としては、以下の方法が挙げられる。
起業とM&A会社売却:
自ら起業し成功させた会社をM&Aで売却することにより、多額の金融資産を得る。特に会社の評価を上げてから売却することで、超富裕層への道が開ける。会社を育成し上場させてからM&Aで売るのがマックスだがキャッシュインと引退の時期は遅くなる。会社を育成しストレートにM&Aで売ればキャッシュインと引退の時期は早くなる。
資産運用:
まず富裕層になり(純金融資産1億円以上)、資産運用において、株式、債券、不動産、商品、デリバティブなどの運用資産に投資して長期的に運用益を計上し続ける。
高報酬CEO等:
特に経営者報酬が高額な大企業(できれば欧米大企業)のCEO等の要職に就き、収入の大部分を投資に回す。
相続:
相続または婚姻により、大規模な資産を持つ家族の一員として財産を相続する。
スーパースター:
スポーツ選手や映画俳優になり成功を収める。
つまり、超富裕層になるには、事実上「会社を興してM&Aで売る」しかない。
【Plus】BB市場で会社を売っても富裕層になることすら難しいが、M&A市場で会社を売却できれば超富裕層に手が届く。中堅中小企業のオーナーが、シナジー効果が見込めるストラテジック・バイヤーやM&Aスキームを駆使しやすいフィナンシャル・バイヤーに、M&Aで会社を売却することで、一気に多額の金融資産を獲得できる。特に、業績好調で成長余地があり、ユニークな強みを持つ対象企業のオーナーであれば、M&Aアドバイザーによって複数の買主候補が競い合うM&A競争環境を構築でき、株式価値がスタンドアローンベースの適正価値さえ大きく超える可能性が増える。
【Plus】M&A会社売却の準備でスタンドアローン株式価値を最大化しておくとともに、M&A買主によるシナジー効果のインパクトと実現可能性を最大化、DDでマイナス価格調整されるリスクを最小化、PMIコストを最小化しておくべきである。また、M&A実行後のシナジー効果を含む成長の果実も享受できるよう、多段階株式譲渡スキームなども活用し、柔軟に最大の成果を目指すべきである。
【Plus】M&A会社売却に成功したら、手にした金融資産を運用に回すことが重要である。ハイリスクだが超ハイリターンなのは「もう一度起業し売却」であるが、ミドルリスクでそれなりハイリターンなのが「超富裕層限定資産運用商品への投資」である。M&A会社売却でも資産運用でも金融所得課税や超富裕層ミニマムタックスの対象になるため、今のうちから少しずつでも資産運用と節税対策を研究しておくべきである。自分で安定好成績、または、優れた運用プロの目利きをするには、資産運用経験10年はどうしても必要だからである。
【Plus】仮にM&A会社売却で手元に残ったのが10億円だとしても、超富裕層UHNWI(45億円)への道は意外と近い。資産運用の目利き力が身についていれば、リスクを抑制しながら、チャンスの時だけしっかり勝つ資産運用が可能となる。AIによる機械的な大規模投資も増え、ボラティリティが高いため、インデックス商品でロングとショートをタイミングよく使い分け、異常からの回復を刈り取るだけでも好成績を出せる。年10%の利回りだと45億円まで16年もかかってしまうが、20%なら9年、30%なら6年で超富裕層の仲間入りである。税金や消費を考慮してないし、運用で大事なことは「わからない時は大きく張らない」なので、こう計算通りにはいかないが、決して不可能な話ではない。