Glossary

M&A用語+

TOP

→

M&A用語+

M&A用語は専門的なものが多く、誤用もされやすく、要注意です。
売却価格等の条件は、「取引関係者による評価」で決まります。
売主が成行任せは禁物で「買主サイドの評価を想定した準備」が勝敗を分けるのです。
取引関係者は、買主本人(買主の社内でも賛成派、反対派がいることも)だけではありません。
専門家(会計士、税理士、弁護士、コンサルタントが精査結果や価値評価を買主に報告)や、
銀行(買収資金の融資可否判断や融資条件を検討)等がどう評価するか、などなど。
買主サイドでもそれぞれの利益やリスクがあって、それぞれの主張があるのです。
正確な用語理解が、クライアント様の利益最大化への第一歩となります。
日本初の売主支援専業のM&A助言会社として、『売主様のためのM&A用語集』をご用意しました。
用語の意味に加え、知っておくべき豆知識をご紹介してますのでぜひ参考にしてください。

バリュエーション(Valuation)

◆バリュエーションとは、企業、事業や資産等の経済的価値を評価するプロセスである。特にM&Aにおいては、対象企業の適正な企業価値事業価値株式価値を算出するために行われ、M&A取引における交渉材料として重要な役割を果たす。

◆バリュエーションは、単なる数字の算出ではなく、企業の将来の収益見通し、財務状況、市場環境や競争環境など多面的な要素を反映する総合的なプロセスである。

◆M&A取引では、売主が希望する価格と買主が提示する価格に「ギャップ」が生じることが多いため、客観的で説得力のある評価が求められる。バリュエーションは交渉の基盤となり、適切なストラクチャリング買収ファイナンスにも影響を及ぼす。

◆バリュエーションの手法には大きく3つのアプローチが存在する。

インカム・アプローチ:将来の利益やキャッシュフローに基づいて企業価値を算出する方法である。企業の将来性を反映しやすく、成長余地を考慮した評価が可能である。事業計画の妥当性や割引率の設定に高いスキルが求められる。
DCF法:将来のキャッシュフローを割引率(WACC)等で現在価値に割り戻して評価する方法。事業計画の精度や割引率の設定が企業価値の大小に大きく影響する。ユニークな特徴を持つ企業、成長企業やスタートアップの評価に適している。
収益還元法:年間の利益を一定の還元率で割り、企業価値を求める方法。上場類似会社と酷似した事業リスク構造にあり、安定した収益を持つ企業に適用される。

マーケット・アプローチ:上場株式類似企業の市場価格や財務指標を参考基準として対象企業の企業価値を算出する方法である。上場類似会社の時価や監査済み財務諸表を指標として算出するため客観性が高い。市場環境が急激に変動する場合や適切な比較対象がない場合、精度が低下する。
類似企業比較法:上場類似企業の株価収益率(PER)株価純資産倍率(PBR)EV/EBITDA倍率などを参考指標として、対象企業の企業価値を評価する。EV/EBITDA倍率を用いるEBITDA倍率法が有名。
類似取引比較法:過去に行われた類似企業のM&A取引事例を参考に、対象企業の企業価値を算出する。取引事例比較法が有名である。多くのM&A取引事例は、詳細な条件が公開されないため、利用できるケースは限定的となる。また、非合理的な評価(年買法等)で成立した案件を集めて取引事例比較法と称するケースもあるが、「年買法による評価が妥当」と売主を洗脳するための詐欺的な営業手法であるため、要注意である。「割り算して掛け算しました。元通り。」のは当たり前である。

コスト・アプローチ:対象企業が保有する資産や負債を基に株式価値を算出する方法である。企業の保有資産が反映されるため、客観性が高い。ただし、将来の収益性や成長性は反映されないため、成長性のある企業の場合、事業価値が過小評価されるリスクが高い。
時価純資産法:資産(時価)から負債(時価)を差し引いた純資産によって株式価値を求める方法。清算価値を重視する場合に用いられる。
修正簿価純資産法:資産と負債の一部を時価に置き換え、純資産を評価する方法である。

◆バリュエーションを適切に実行するのは容易ではない。一般に必要とされる知識・スキルには以下が含まれる。

市場分析スキル:業界動向や市場環境を調査し、将来の成長性を見極める能力が必要である。多様な市場を扱って深く分析した経験があると望ましい。できれば10年から20年以上の分析経験があると、長期的なサイクル変動を理解できるためなお望ましい。究極的には人間理解や歴史観に到達する。
事業分析スキル:対象企業や類似企業の事業リスクや成長可能性等を見極める能力が不可欠である。アナリスト経験、できれば自らが事業経営をした経験があると望ましい。ただプラスかマイナスかではなく、定量的に分析しなければ意味は薄い。使えるアナリストやコンサルタントは、その場で使える数字を使って暗算し、暫定的な助言をしてしまう。職業病的な習慣が付いているものである。
財務会計の知識財務諸表の読解や会計基準の理解が不可欠である。最低でも簿記2級、できれば公認会計士の資格保有者が望ましい。買主の立場で会計インパクトや会計上の困難を理解できないようでは、最適な提案や交渉をできるはずがない。バリュエーションの材料は、基本的に財務情報である。仕訳レベルは当然のことながら、仕訳と紐づく現場の業務を正確に想像できる人だけが本当にバリュエーションできる人である。
税務知識:税負担の反映を適切に実行できる能力も求められる。税理士または公認会計士の資格保有が望ましい。税は、売主にも買主にも絶大な影響を与える。両者が合意できるストラクチャーに調整できることも非常に重要である。税が変わればバリュエーションも変わる。
ファイナンス理論の理解:資本資産評価モデル(CAPM)などのコーポレート・ファイナンスに関する正確な知識がバリュエーションの精度を高める。株式アナリストやLBOレンダーとしての実務経験があると望ましい。実務的に定着しているファイナンス理論を正確に理解するとともに、その限界も理解していると、説得力が変わってくる。
ファイナンシャルモデル構築スキル:複数シナリオに対応する前提条件を置き、将来期間の財務3表が全期間1円のズレもなく連絡するモデルを構築するエクセルスキルが不可欠である。様々なシチュエーションでのモデル構築経験があると望ましい。会社に与えられたパッケージに数字をあてはめて計算しました、では頼りない。真っ白なエクセルを使って、何十何百とモデルを構築した人でないと、イレギュラーに対応できない。
統計学の知識:バリュエーションの多くの局面で統計手法を用いるため、正確な統計学の知識が不可欠である。証券アナリストレベルの統計知識の保有が望ましい。また、統計の知識を業務で使うにはコンピュータの計算能力を使いこなす必要がある。
プログラミングスキル:大規模なバリュエーションプロジェクトの場合、エクセルの計算処理能力を超えることも多いため、プログラミングによって実行する場合もある。最低でもVBA、できればJavaやPythonなどのプログラミングスキルがあると望ましい。

Copy Protected by Tech Tips's CopyProtect Wordpress Blogs.