◆VRIOフレームワークとは、企業が持つ経営資源の競争優位性を評価するためのフレームワークであり、「Value(価値)」「Rarity(希少性)」「Imitability(模倣困難性)」「Organization(組織)」の4つの観点から、自社の強みが長期的な競争優位に繋がるかを分析する手法である。すべてを満たす場合、「持続的な競争優位性」となる。

【Plus】株式価値を大幅に引き上げる「ユニークな強み」
会社の売却価値(株式価値)は、単純化すれば、「キャッシュフロー」と「倍率」の積で決まる。「持続的な競争優位性」のない平凡な対象企業、「持続的な競争優位性」を持つユニークな対象企業の「キャッシュフロー」が同じ100としても、前者の「倍率」が3.0x、後者の「倍率」が10.0xであれば、「会社の価値」は300対1,000と3倍近い差が生まれる。この「倍率」の変動要素はたくさん存在するが、「持続的な競争優位性」は「倍率」を大きく高めてくれる。ただし、抽象的に伝達するだけでは金額評価につながりにくく、いかにして伝達し評価につなげるかが重要となる。ユニークな強みは、上手に使えば武器になるが、ユニークであるがゆえ扱いにくい。伝達に失敗すれば、評価において逆効果ともなる諸刃の剣である点も重要である。
【Plus】M&A買主に「持続的な競争優位性」を正確に理解してもらうには
M&A売主にとって、対象企業の「持続的な競争優位性」を外部のM&A買主に理解させることは、株式売却対価を最大化する上で極めて重要である。M&A買主やバイサイドDDプロバイダーは、保守的にリスクを評価する義務を持つ。過大評価で高値買収した結果、買主企業のステークホルダーの利益を棄損しないようにしなければならないからである。以下のようなポイントに留意すると効果的である。
▽数値データ(客観的な証拠)の提示:競争優位性が財務的成果に結実していることを示す数値データを開示する。単なる売上高などの財務諸表データだけではなく、その構成要素の時間的推移や業界平均との比較があると望ましい。競争優位を確立する前後での明白な改善や競合他社比で明白に優れた実績であれば強い説得力を持つ。
▽ストーリーとして伝える:競争優位性が生まれた歴史、成功事例などを盛り込みながらストーリーとして説明すると外部者に伝わりやすい。その際、いかに希少で模倣困難かを説明できると望ましい。
▽運用体制の説明:持続可能な競争優位性も人間が運用することで財務的成果につながる。持続的に価値を提供し続けるための組織が構築されていて、属人的要素に左右されにくい体制にある事を証明する。特に引退予定のオーナー社長の関与がなくなっても競争優位性が揺るがないことを説明するとよい。