◆VUCA時代とは、現代のビジネス環境の特徴を4つの要素で表現したもので、それぞれの要素は、以下のような意味を持つ。
Volatility(変動性): 従来より大きな変化が頻繁に起きやすく、チャンスもピンチも生まれやすい
Uncertainty(不確実性): 将来予測が従来よりさらに困難であり、対応スピードが勝負を分ける
Complexity(複雑性): 従来より結合が容易となり、要因・要素の組合せから、想定外の効果が生まれやすい
Ambiguity(曖昧性): 従来より明確な解釈が難しく、曖昧な解釈のままでも、とにかく進むしかない
◆従来からの習慣、今までの強みを「今後も大事に残して強化していくのか」、「見せ方や使い方を変えるのか」、いっそのこと「もう捨てて、改革に進むのか」。社歴が長く、成功体験の強い会社ほど、悩ましい決断が必要となる時代である。5年10年後に第2の創業の成功例となるのか、倒産に至るのか、の分かれ道をVUCAが作っている。100年以上続く老舗企業でも例外ではない。
【Plus】今の時代の経営者は、商品開発、販売、マーケティング、人事やITなど、あらゆる領域での意思決定において、VUCAの4要素を意識する必要がある。特に、新商品、新事業や既存事業の改善など、大きな変化に対峙する際に重要である。なにかを変革する際、投資や時間が必要であるが、それ以上に重要で、武器にも障害にもなりうるのが、人財や組織に染み込んだ潜在意識である。リーダーシップを発揮しても、伝える内容を間違えると真逆に突き進んでしまう。
【Plus】ここで重要なことは、従来型の「役員会議で固めた事業計画」に忠実に沿って動くコーゼーションではなく、目の前の資源を組み合わせ、まず動きながら調整し、変化に柔軟に対応するエフェクチュエーションの考え方である。小さく始めてテストし、上手くいきそうなら大きく広げるアジャイル志向も重要である。頻繁かつ大きな変化は、小回りが利きにくい大企業より、むしろ中堅中小企業にとってチャンスと捉えるポジティブさが望ましい。
【Plus】M&A会社売却では「情報伝達」が、自分のニーズを満たすための手段として非常に重要である。対象企業の現況がいかに優れていたとしても「伝わらなければ無いのと同じ」である。どうすれば「VUCA時代の不確実性の高いビジネスへの投資」に対するさまざまな変動ファクターを考慮した上での「期待リターンと期待リスク」を、外部第三者に短期間で正確に過小評価されることなく評価してもらえるか、である。ここで重要なのは「既存の情報伝達フレームワーク」を使用して誰でも理解しやすくすること、それと同時に「VUCAを考慮した複数シナリオ」を設定する、という組合せである。所属する業界や、利用している経営資源によって、VUCAが会社にどのように影響するかは大きく変わる。特別受容性がある要素について、外部第三者が「確かにありえる」と思うような「シナリオ」によって、将来の財務成果が変わるようなフィナンシャルモデルを策定しておくことが望ましい。
【Plus】M&A交渉期間に入ったら、考慮している変動ファクターと、それを反映したフィナンシャルモデルをインフォメーション・メモランダムの中で開示すれば、それを受領した買主は、VUCA織り込み済みの評価ができるはずである。買主から様々な質問を受けても、論理と数字で的確に回答することが容易となる。