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「ユニークな会社を高く売る」に込めた想い

2021/12/1

代表ブログ~M&A徒然草~

「ユニークな会社を高く売る」に込めた想い

SCA代表の稲村です。


SCAが定義する「ユニークな会社」とは、変わった名前の会社ということではありません。
ユニークな強みを持つ会社、という意味です。
また、ユニークな強みとは、特別な技術を持ち特許によって競争回避と高収益性を実現すること、だけではありません。

■一定の企業規模がある、だけでも、中小零細企業が多すぎる日本では、ユニークな強みでしょうし、
■大手が手掛けないようなニッチ市場で存在感を持っている、もユニークな強みでしょうし、
■商品は平凡だけど、とにかく売り方が上手い、もユニークな強みでしょうし、
■時代が変わって、最近業績が芳しくないが、ある条件下であればとびきりの営業成績をあげられる営業マン集団がいる、もユニークな強みでしょうし、
■中小企業の典型的な弱点(経営企画、IT、経理・法務等の間接生産業務が手薄)が少ない、もユニークな強みでしょうし、
■日本では平凡な商売だけど、海外ではユニークで、海外で一定の存在感を構築できている、もユニークな強みでしょう

とどのつまり、必死に工夫して、全力で提案すれば、M&A買主に価値を見出してもらえるならば、「M&A的視点でのユニークな会社」です。


「高く売る」


「売主を騙して安く売らせる」は比較的簡単です。
M&A取引参加者の中で一番M&Aに関する情報が不足しているからです。
同調圧力を利用するとか、お金を取るか従業員を取るか、といった論点すり替え二元論といった巧妙な手口を使えば、人の良いオーナー社長はコロっと騙されてしまうはずです。


しかし、「(M&A経験のある)買主を騙して高く買わせる」は非常に難しく、後から「金の一部を返せ」と言える買主を最後まで騙し切るのは至難の業です。


それでもなお、SCAは「高く売る」をキャッチコピーに据えています。
売主様サポートに特化しているので、「高く売る」ことを目指すのは、SCAの義務であり、当然なのですが、ひたすら「高く売るにはどうすればよいか」を探求している特殊なM&A助言会社と言えるでしょう。

■SCAが目標とする「高く売る」は、「現実的な範囲内で、できるだけ満足できる条件で売る」という意味です。


ここでいう「現実的な範囲」は、意外と広い範囲に分布することが多く、「買主目線での、出してもよい最高価格以下の価格レンジ」でもあります。
「買主目線での、出してもよい最高価格」は、対象会社単独での適正評価だけではなく、買主企業とのシナジー、買主企業の競合企業に対象会社を買収された場合の潜在的な損失も含まれます。


対象会社単独の適正評価は、簡単に計算できるだろう、という誤解も多いですが、立派な会計事務所に株式価値算定を依頼しても、A事務所の中だけでも価格差3倍とか、B事務所と比較すると最大価格差4倍とか、一体、いくらが適正なの?となってしまうのが企業価値というものです。
上場会社の株式時価総額も、数カ月で倍増、半減することがありますね。情報の少ない非上場会社の評価は難しいのです。
それに加えて、シナジーなどのM&A独自の要素が加わるわけですから、「適正な価格を短時間で簡単に計算できます」という人は、バリュエーションについて無知なのか、意図的にそう誘導したい動機があるのかのいずれかです。


すべての期待できるキャッシュフローを、自分が必要とする利率で割り戻して合算した金額が、正当な企業価値評価の方法です。
期待通りのキャッシュフローを実現する経営能力があれば、十分な利益率を出せるということを意味します。
これが最も理論的に正しいとされるDCF法であり、その簡便法のEBITDA倍率法が、一定規模以上の案件では多用されます。投資銀行が絡む案件では、この両方を加味して価格交渉をするのが当たり前です。


しかし、中小以下の案件では、強みのある会社の評価としては異常に安いコスト中心の価格で取引されることが多いのです。
コスト中心価格というのは、例えていうなら、メジャーリーグ選手の年俸を、その選手の食費や寮費で計算するようなものですから、コスト中心の価格で、能力が高く人気もある選手を受け入れられた球団はボロ儲けできてしまうわけです。
その球団がメジャー球団なら、まだいいでしょう。
さらなる問題は、メジャー級選手が、ちょっと裕福なスポンサーのいる草野球チームでも受入れ可能になってしまうという点です。まさに猫に小判です。
コスト中心価格が正当化できるのは、赤字廃業間際の企業などです。再生案件で時価純資産等の資産バラ売り価格で取引されるのは、そういう理屈があるからです。

将来ある企業の価格を、間違った方法で計算し、間違った相手に引き継がせるのは、社会的損失ではないでしょうか?

■SCAは、中小規模案件でも、DCF法のエッセンスを注入した調整EBITDA倍率法をベースとして、買主候補にしっかりと説明し、価格交渉をしています。


ユニークな会社オーナー様には「会社を高く売る機会」がある?


営業利益が20億円ある会社なら、高く売る機会がある、と聞いても、さもありなん、と賛成いただけると思います。
高く売る機会とは、EBITDAに掛け算する倍率が、2倍なのか、5倍なのか、12倍なのか、ということを意味します。
営業利益が20億円の会社に、倍率12倍と聞いても、別に驚くことではありません。
では、営業利益が1億円規模の中小企業だと、どれくらい倍率が小さくなるべきなのでしょうか?
SCAはこう考えています。

■対象会社の潜在能力に関する情報開示
■買主候補の意欲や能力
■クリエイティブで粘り強い交渉

の3点が揃えば、中小企業でも高い倍率での取引が成立できる。
事実、そういう事例を積み上げてきました(詳細はパンフレットをご参照ください)。
この「対象会社の潜在能力」を左右するのが、「ユニークさ」です。
規模も大事ですが、規模だけではないのです。
ユニークな強みを持つ会社オーナー様は、「どうせうちの会社くらいの規模だと、たかが知れているだろう」と先入観であきらめず、最高の相手に最高の条件で売る機会がある、と思ってください。
「買主候補の意欲や能力」や「クリティテブで粘り強い交渉」は、売主様と二人三脚で、SCAが知恵を絞って頑張る領域です。


ユニークな会社オーナー様には「会社を高く売る義務」がある?


ユニークな会社は、本来、やり方次第で、高く売る機会に恵まれるはずです。
しかし、機会があるのに、それを見過ごし、掴まず、安易な方法で安値売却してしまうと、本当にリスクを負って頑張ってきた人は報われず、ほくそ笑むのは中抜き業者(M&A助言会社)だけ、というオチになってしまいます。
ユニークな会社のオーナー様は、会社を高く売ってもよい、ではありません。
会社を高く売る「義務」があるのです。

■低い目標(安く買ってコスト減らして成長演出など)を掲げる買主企業は、経営能力が高くない可能性があります。もちろん、高い価格で買えば高い目標が設けられるでしょう。しかし経営能力に長けた企業はほぼ例外なく高い目標を掲げるものです。高い目標を掲げる有能な買主経営者の指揮下で、努力を続けること、これこそが、不透明な将来で生きていく従業員の「職の安全」につながります。しっかりスキルを磨けばステップアップ転職も可能でしょう。雇用継続は買主にとって必要かどうかで決まります。安いと安全、高いと危険、という単純な話ではなく、安くても離散、高くても継続、はよくある話です。不要なら追い出すし、必要なら大事に育成してくれます。
■後輩起業家のためにも、できるだけ高く売る努力をすべきです。日本の将来はこれから起業する若者の成果次第であり、若者がやる気を出せる先輩の功績を残してあげるべきです。


安値売却は簡単です。リスクなく業績アップできるので経営能力の低い買主でも、簡単に業績アップを演出できてしまいます。
しかし、経営能力の低い買主にやさしいM&A市場は、今の日本に必要でしょうか?
むしろ、M&Aを通じて経営者を育成するせっかくの機会を、自ら潰しているともいえないでしょうか?
ユニークな会社オーナー様が、安値売却すると、巡り巡って、さまざまな若者の将来も潰してしまうのかもしれません。
だから、高く売る「義務」があると思うのです。


「余計なお金は悪」「みんなと同じ」は実は責任逃れ?


日本人気質なのでしょうか、お金を下卑たものと扱う意識が、他国よりも強い気がします。
僕が思うに、徳川260年治世の仕組み(反乱予備軍を武力でなくお金で常時弱体化しておく、そのために、士農工商という身分制度(清貧を尊しとする武士道、最下列に商人)、参勤交代という大名蓄財制限、生かさず殺さずの年貢制度)によって、お金を下卑たものとして洗脳しながらも、徳川は安全と莫大な富を手に入れたわけで、この仕組みがあまりに絶妙にワークしてしまったがために、400年経過した今でも大金を持つことに対する後ろめたさが残っていて、大金を持つ人への嫉妬、大金を持たんとする人の足を引っ張る行為も正当化され、平均回帰の風土(全員中流階級という幻想)が根付いているように思えてなりません。

人間のDNAを改造しない限り実現不可能な理想郷です。


みんなと同じことをしておけば非難されない、という思考・行動パターンは、日本人の意識に深く刷り込まれています。面従腹背の従業員も、こういう思考・行動パターンが背景にあります。隣の社長と同じくらいの相場感で売れればよい、も同じ思考パターンと言えるでしょう。
しかし、そもそも、ユニークな会社を育成することに成功したオーナー様は、そういった常識に疑問を持ち、立ち向かってきたはずです。
人と違うこと、やり方を、失敗するリスクがあるのもわかっていて、あえて挑戦され、そして成功されたのです。

ユニークな会社のオーナー経営者は、一般のビジネスマンよりも、スポーツ選手に近い存在と思ってください。
スポーツ選手がユニークな強みを生かしプロ選手として成功し多額の年俸を受け取っても、誰もネガティブな印象は受けません。基本的に祝福してくれます。
多額の遺産を子供に残すのはどうか、という心配も無用です。
どうしてもお金が余ったら、好きな世界の維持・発展のため、団体を作ったり、寄付等をしてあげればよいだけです。


SCAが、ユニークな会社のM&A売却案件に特化している理由


SCAが「ユニークな会社」のM&A案件に特化しているのは、理由があります。


とにかく、面白いのです。


ユニークな会社の仕組みも面白いですし、その仕組みを作り上げたオーナー社長様の話を聞いているだけでも本当にワクワクします。

手前みそですが、SCAは、他のM&A助言会社さんよりも売主有利な条件で成約できた割合が高いですし、仕事内容は他のM&A助言会社さんよりもハードです。
結果コミットのため、仕事の範囲は広く、要求水準も高くなってしまいます。
そこで大事になるのが、「面白い」というワクワク感なのです。
激務を激務とすら感じなくなる、面白くて仕事を途中でやめられず気づいたら徹夜してしまう、というマインドにしてくれ、その結果として、良い相手に良い条件で、が実現できるというわけです。