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未来志向M&A:ユニークな会社を良い買い手に高く売る秘訣

2018/9/26

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未来志向M&A:ユニークな会社を良い買い手に高く売る秘訣

一定条件を満たすユニークな会社は、適切な準備とプロセスを経ることで、相対的に高く売ることが本当に可能です。弊社SCAは2015年の設立以来、業界初のセルサイド特化型FAとして、また、未来志向M&Aのプロデューサーとして、成功事例や大成功事例を積み上げてきました。

ところで、M&A市場で評価されやすい差別化要素を持つ会社であっても、羅針盤もなしに売却活動をすれば簡単に高く売れることはありませんし、バイサイド(買い手)に効果的に提案しなければ、ユニークさが異端児扱いされてしまうお粗末な結果にもなりかねません。何よりもユニークさはターゲット企業(売り手企業)の中核とも言えるため、徒に多数のバイサイドに無差別提案をすべきではありません。

どのような点に注目しながら適切な準備をし、会社売却に臨むと「ユニークな会社を高く売る」という目標を達成できるでしょうか?逆に言えば、どういう事を気を付けなれば、折角のユニークで面白い会社の飛躍チャンスを潰しかねないのでしょうか?

■ 「ユニークなターゲット企業」(素材)

■ 「M&A能力の高いバイサイド」(加工者)

■ 「品質主義のM&Aアドバイザー」(プロデューサー)

■ 「適正評価で相対的に高く売る」(結果)

要素毎に分解して、詳しく解説していきたいと思います。

1.「ユニークなターゲット企業」とは

M&A市場で評価される「ユニーク」と評価されない「ユニーク」

まず、「M&A市場で評価されるユニーク」を定義してみましょう。M&A取引で好評価を得られなければ意味がありませんからね。

「M&A的に評価されやすいユニーク」とは、「容易に模倣されず、継続して超過収益を生み出す差別化要素」を指します。マクロ経済、社会情勢、技術革新、競争環境、事業内容、財務状況の「過去」と「現況」、さらに「今後」について総合的に勘案して評価するべきものです。

多数のバイサイド候補に提案して評価されるかどうかを試すという方法も考えられますが、情報漏洩・模倣促進のリスクを消去できない以上、M&Aで採用すべきではありません。できるだけM&A市場に受け入れられやすい状態にしてから、それをスムーズに理解してもらう工夫をする方が現実的でしょう。M&Aでは「勝つべくして勝つための準備」が特に重要となります。

つまり、会社のUSP(ユニーク・セールス・ポイント)を、M&A市場で評価されやすい状態に昇華しておく準備こそが大事なのであり、そのアウトプットが「事業計画(スタンドアローン版)/事業計画(経営資源補完版)」や「インフォメーション・メモランダム(Information Memorandum)」や「ティーザー(Teaser)」、さらに、絶妙に厳選したバイサイド候補、訴求ポイント等という具体的な形(M&A戦略)になるわけです。これがあるのとないのでは大違い。多数の買収案件を検討しているM&A能力の高いバイサイドの買収担当者の立場に立って、それらがなかった場合、あっても使い物にならない場合の心証を想像してみてください。

ユニークな強みの例示

  • レッドオーシャン内で、模倣されない方法・ニッチ領域で成功している(自社用市場創造)
  • 地方で独特のビジネスモデルで成功していて東京等でも成功の見込みがある(地方→全国)
  • 日本固有の商品・サービスで成功していて海外でも成功の見込みがある(日本→世界)
  • 一定の成功を収めた海外子会社(海外市場アクセスと経営ノウハウ)
  • ルーズ経営零細企業が多い業種で、合理的ビジネスモデルで規模拡大(業界再編の核)
  • 先端技術の事業化とビジネスモデル化に成功(破壊的イノベーション)
  • 資格や規制等の参入障壁を活用(権益ビジネス)
  • 多数の競合と逆の事をして成功(業界の非常識)

などなどです。ビジネスはイキモノですから、時代によって多少の変化はありますが、M&A的なユニークの本質は、「企業価値向上への具体的貢献力と希少性」です。企業価値はファイナンス思考で決定されますから、ファイナンス思考で成長力や収益力が強化(ブースト)されるのであれば、M&A市場で高く評価されやすいということです。

ユニークがなければ今から作ればよいし、育てればよい、修復すればよい

上記はあくまで例示に過ぎませんし、ビジネス環境やM&A市場環境が変われば、評価されるユニークも変わってくるものです。

もし、将来的にM&Aでの会社売却を検討されているのであれば、「早めにユニークさを育てておく、しかもM&A市場で評価される形に整えながら」をお勧めします。重要なのは「M&A市場(外部の第三者・ファイナンス思考)の目線」です。独りよがりのユニークは、M&A市場ではむしろマイナスになりかねませんので、伸ばす方向性や結合容易性を考慮しましょう。

2.「M&A能力の高いバイサイド」とは

成長主義と安定主義

企業のリスクへの対処方法が、経営上の打ち手ににじみ出てきます。一方は「成長主義:リスクをチャンスと捉える企業」、もう一方は「安定主義:リスクを見て見ぬふりをする企業」です。経営トップや幹部の発言と行動を丁寧に分析すると明確に見分けることが可能です。

テクノロジーの発展を通じたビジネス環境の激変は、当面止まることはないでしょうから、成長主義の企業の方が将来は明るく、安定主義の企業はジリ貧が続くはずです。M&Aに付き物のリスクをチャンスと捉えることができる成長主義の企業がM&A能力の高いバイサイドと言えるでしょう。成長主義の企業への提案を最優先とするのが得策です。存続・安定目的M&A(同業安値買収)を好む企業もいるので見極めが重要です。

オーガニックグロース主義とM&A活用主義

成長主義の企業だとしても、成長の手段としてM&Aを利用する意思が全くない会社がいます。オーガニックグロース主義の会社であり、バイサイド候補に加えにくいでしょう。逆に、成長の手段としてM&Aを積極的に活用するM&A活用主義の企業も数多くいます。当然のことながらM&A活用主義の企業の方がバイサイド候補になりやすいですし、M&Aという異文化結合の成功経験と方法論を確立している可能性が高いので、買収を成功させやすいと言えます。ただし、あくまで一般論であり、オーガニックグロース主義でも最適な企業ならば時間をかけて説得するのも一つの手ですし、M&A活用主義の企業でも安値買収限定の安定主義の企業であれば、良いバイサイドとはならない可能性もあります。

企業価値向上手段=バイサイドという視点

バイサイド選びは上記のような一般論だけでなく、個別ターゲット企業毎に丁寧に検討すべき、M&Aの最重要検討事項です。

ターゲット企業A社にとってのM&A能力の高いバイサイドとは、「ターゲット企業A社の企業価値を最も大きくしてくれそうなバイサイド」です。同じ業種B社の最適バイサイドはA社の最適バイサイドと全く異なる可能性があるのです。具体的なターゲット企業の成長可能性や成長ボトルネック等をバイサイド選びに色濃く反映することが重要です。簡単に提案しやすいのは同業ですが、テクノロジー発展に伴い業界の垣根崩壊の流れは続きますから、バイサイドの業種は柔軟に検討すべきでしょう。また、事業会社に限らず投資ファンドも検討すべきですし、海外企業も検討すべきです。

集中すべきは、「ターゲット企業の企業価値最大化を実現できるバイサイドを探す」ということです。

3.「品質主義のM&Aアドバイザー」とは

品質主義と件数主義で二分されるM&A助言会社

  • {[深いビジネス理解]+[適正評価・柔軟スキーム]+[高度広範な専門知識]}×[厳選提案] × [片手報酬] = 品質主義
  • {[浅いビジネス理解]+[純資産ベース・一律スキーム]+[最低限の専門知識]}×[多数提案] × [両手報酬] = 件数主義

巨大規模から中堅企業が伝統的な品質主義、中小企業から零細企業が新興の件数主義と主にターゲット企業の規模面で棲み分けがなされています。最近は、中間的な中小企業クラスで双方のM&A助言会社が特徴を打ち出し始めていますので、情報収集を怠ることなく、最適なM&A助言会社を選びましょう。ユニークな会社を高く売るには、M&A能力の高いバイサイドへの提案・交渉が不可欠であるため、ビジネスの深い理解、ファイナンス思考、M&A関連の高度な専門性が必要です。ユニークな会社売却では品質主義のM&A助言会社を選ぶべきであり、特徴のない零細企業等の売却では件数主義のM&A助言会社に依頼すべきとなります。品質主義のM&A助言会社の中から、相性が良い担当者がいて、業界知見が十分にありそうな先を選べばよいと思います。あくまで個別の状況次第ですが、目安としては実力EBITDA(営業利益+減価償却費+削減可能オーナー費用等)で3,000~5,000万円程度が分岐点かと思います。

品質主義と件数主義の見分け方

品質主義と件数主義の簡単な見分け方は、①品質主義は期待値を重視する一方、件数主義は期待値ではなく件数や成約率を重視する、②品質主義は採用条件が厳格で一人前になるまでに7年の修行を要求する一方、件数主義は未経験者を積極採用し短期間で育成する、③品質主義は会社トップが投資銀行等で本格的なM&A助言の修行をしている一方、件数主義は異業種からの新規参入組という3点です。

4.「適正評価で相対的に高く売る」とは

セルサイドがM&Aで設定すべき目標

「実業家の役割は、繁栄への貢献であり、その成功は金銭的対価を得ることで報われる」という形が最も自然です。そもそもM&Aは「経営権を金銭的対価と交換する取引」ですから、第一の目標は金銭の多寡と設定する以外ありえず、「企業価値の最大化」その結果としての「会社売却額の最大化」を第一目標として設定し、その他の「オーナー様の金銭以外のこだわり」は第二目標として、検討プロセスの中の「選択肢」を模索、総合的にセルサイドオーナー様の「満足最大化」を目指すべきでしょう。

売却価格の相対性

売却価格が高いか安いかは相対的なものです。実現可能な範囲の最高値を目指しましょう。

①理論値との相対性

M&Aによる会社売却での適正価格(理論値)は、将来の期待キャッシュフローの現在価値として評価することになります。適正評価は唯一の価格(一本値)になることはなく、様々な前提条件を考慮して柔軟に評価するものです。ターゲット企業の状況、セルサイドオーナーのニーズ、M&A戦略の実現可能性等を総合評価して評価された理論値のレンジ(幅)の中で、相対的に高い価格で売却できれば良好な結果と評価することが可能です。誤解されている方が多いのですが、PLの売上高や営業利益、BSの総資産や純資産は本来M&A株式価値と無関係又は非常に薄い関係のみです。上場会社の時価総額がPSR(株価売上倍率)やPBR(株価純資産倍率)をほぼ無視しているのと同じことです。ユニークな会社の場合、評価者次第で非常に大きなレンジを構成する傾向にあります。

②純資産ベース価格との相対性

件数主義M&A助言会社が多用する株式価値の算定方法として、純資産+営業利益×3~5年分という計算式があります。中小企業から零細企業の売却案件は件数主義M&A助言会社のシェアが圧倒的ですので、この純資産ベース価格との相対性において、明瞭に高い価格で売却できれば、良好な結果と評価することが可能です。ユニークな会社の場合、純資産ベース価格の数倍で売却できるケースがあります(弊社事例では過去10倍以上のケースもあります)。

③時間軸上の相対性

M&Aは会社経営権を売却する取引であり、51%の株式売却でもM&Aであり、最大49%の株式をM&A後も継続保有することが可能なケースがあります。また、オーナーシップ(株式過半の実質保有)とマネジメント(経営)はそもそも別物ですから、M&A後もターゲット企業の成長に貢献する経営者として手腕を発揮することが可能なケースがあります。つまり、M&A前にオーナー社長であった方は、M&A後、①株保有・経営継続、②株保有・経営引退、③株不所持・経営継続、④株不所持・経営引退の4パターンがありうるのです。全株を売却しなければ(①と②のパターン)、M&A後の成長が未売却の株式価値に加味されますから、時間軸効果を上手に使うことでトータルの売却額を増加させられる可能性があります。一度に全株売却(時間軸不使用)との比較で遥かに高い売却額を実現できる場合も良好な結果と評価できるでしょう。