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ユニークな会社のオーナー様は、逆に、非上場のM&A助言会社を選ぶべし

2018/1/31

M&Aのチーム管理

ユニークな会社のオーナー様は、逆に、非上場のM&A助言会社を選ぶべし

「M&Aによる会社売却。どのM&A助言会社に頼んでも、結果はだいたい同じだろう。」

「M&A助言会社選びにあたり、やっぱり実績を積んだ上場会社の方が安心だな。」

半分正しく、半分間違いです。

我が国日本では、自然人の生死・健康を左右する「病院」は、上場はもとより株式会社化も許されていません。なぜかと言えば、患者さんよりも株主を向く経営をする医者が登場すると、短期的な利益を追求するあまり、不幸なことが確実に起こる、と想定されるからでしょう。

「M&A助言」も病院と同じです。法人(ターゲット企業(売り手企業))および自然人(創業オーナー)の人生を左右するだけでなく、関係者が数百名、数千名、数十社、数百社も存在するのが法人ですから、ある意味で病院よりも重大です。なのに、なぜか、M&A助言は①一切規制がなく未経験者でも簡単に従事でき、②上場して資金を集めて大規模化し株主利益を追求すること(=顧客利益と利益相反になるリスク)を許容しています。

少なくとも、「チェーン店で処理されると困るというユニークな強みを持つ会社」のオーナー社長は、上場M&A助言会社以外の選択肢もしっかりと比較検討すべきでしょう。ベルトコンベアーに乗せられて、医大を卒業していない人に診察されてはたまったものではありません。

成約可能性(そもそも売れるかどうか)

直感的に、売却案件の7-8割は、どんなに優秀なM&Aバンカーが担当しても、状況が改善しない限り成約させることは難しいと思います(そもそもM&A市場内に買いたいという需要がないため)。強烈な新規参入の競合企業が新技術で全ての顧客を奪い去っていく状況、サイズが小さすぎて手間の割に合わない、保有している資産、無形資産にも目ぼしいものがない、巨額の偶発債務、簿外債務や許認可に絡むような規制違反等の問題があると、M&A市場での需要がないので、根本的な解決をしてから再挑戦ということになります。売れそうもない状況なら、無駄なので、M&A助言会社に依頼するべきではありません。着手金を支払うくらいなら改善施策に使うべきだし、着手金無料でも野放図提案や営業(買い手候補企業の開拓・関係強化)の出汁(だし)に使われ、情報漏洩リスクのみが残り、改善の道が途絶え、出回り案件化し、M&A市場で再挑戦する道も途絶えるリスクがあるからです。また、中には、バイサイド(買い手)候補に「情報提供料(売り手の名前を見たいなら100万円等)」を支払わせるタイプのM&A助言会社がいて、「売れそうもないけど、情報提供料を3社から取れれば300万円だな。ノルマの一部になるから受託しよう」というケースもあるようです。セルサイド(売り手)にとって全くの無駄どころかマイナス(M&A助言会社への寄付)です。情報提供料に絡む訴訟事件も起きているようですから気を付けましょう。

残る2-3割は、短期間でのM&A会社売却を成約させることが可能と思います。売れるかどうかは、売却対象の会社の「状況」とセルサイド(売り手)の「ニーズ」がほぼ全てで、M&A助言会社が上場しているか否かは関係ありません。統計的には1割程度が全体平均とのことですが、売れたのに下手を打った、途中で売るのを止めた等を含めた「本来売れる会社は2-3割」という所でしょう。

高値売却の可能性(高く売れるかどうか)

成約可能な2-3割の案件のうち大半(7-8割くらい)は、件数主義業者用の純資産ベース価格であっても、本来の適正価格の近辺(せいぜいマイナス数十%)に落ち着く(そこそこの線で売れたということ)と思います。大きな成長可能性もなく、大きな下落リスクもなく、重要な改善余地等もない「特徴はないけれど安定している零細・中小企業」なら、この計算方法でもそれなりに妥当と言えるということです。簿価純資産法や時価純資産法、これらに営業利益の数年分を加算する方法で計算できますので、漢字と数字が読めれば1分で計算できます。

一方で、成約可能な案件のうち、最後に残る一部(全体の1割未満のユニークな強みのある会社)は、純資産ベース価格では完全に安すぎで、その倍以上適正価格という理解で概ね正確でしょう(ストラクチャーや税務技術、金融技術を駆使することで最終的に5倍10倍で売却することが可能な会社も実際にいます。経験的に全体の数%程度しかいませんが。)。

上場ステータスと高値売却の関係

ここで本題に戻ります。M&A助言会社が採用している価格計算法と、M&A助言会社が上場しているか否かは、一見無関係に思えますよね。

しかし、実は、これが非常に強い結束のある関係なのです。今回は、この点を深堀りしていきたいと思います。

簡単にまとめると、上場できるほどの高い収益性成長性(=M&A助言会社の株価の上昇期待)を実現するためには、成約件数の維持・増加の仕組みが絶対必要で、そのためには、修行のために最低7年かかる本格的なM&Aバンカーを採用・育成することは難しく、未経験者でも短期間でマスターできる簡単な仕事の仕組みが必要となります。結論的に、上場を目指すM&A助言会社は、「会社売却の簡単なまとめ方」をビジネスモデルに織り込むことが前提条件になります。 ※一部例外あり(後述)

それでも、多くのセルサイドは満足できるでしょう。しかし、一部のセルサイド(ユニークな会社のオーナー)は甚大な損害を被るリスクがあるのです。

本当のM&A助言業務でなければ高値売却は不可能です。

未経験者が、「会社売却の簡単なまとめ方」で10件経験しても、本当のM&Aのプロにはなれません。そういう質の伴わない自称M&Aのプロは、本当のM&Aプロがひしめくバイサイド(投資ファンドやフリークエントバイヤー)と対峙し、セルサイドの利益最大化を目指そうとしても、全面降伏になります。ユニークで高値売却の可能性がある会社が、プロから見ると涎(よだれ)が出る安値で、M&A市場にバンスカ登場しているのが今の日本のM&A市場の実態です。

つまり、未経験者中心の件数主義で、自社株価上昇にまっしぐらに進むタイプでないと、上場時の審査で要求される高い成長性を実現することは困難であるという事情を考慮すれば、ユニークな会社のオーナーは、非上場のM&A助言会社から選ぶ方が無難なのです(無論、非上場であれば高品質なサービスを提供できるという意味ではなく、上場に伴う顧客との利益相反関係がないという意味です)。

例えると回転寿司チェーンと老舗寿司割烹の違い

もう少しわかりやすく例えてみましょう。

回転寿司チェーンの方が、老舗寿司割烹よりも上場しやすいですね。

なぜかというと、上場するためには、職人道はサッパリと捨て去り、純粋にビジネスとして規模を追わねば、上場を実現できません。そこに、犠牲になる面があるはずです。回転寿司はどんどん美味しくなってますが、一流素材を使い、一流の職人の腕で調理された寿司ではないので、「1皿100円の割(わり)には満足」という線は越えられません。つまり、コスパが良いのでお客様はたくさん来る。だから儲かる。さらに効率化する。もっと儲かるという流れです。食べログで3点をキープできれば十分OKなのです。

一方で、老舗寿司割烹は、築地市場に早朝に赴き、舌の肥えたお客様でも満足できるような良い素材を目利きし、さらに、練り上げた職人の腕最も美味しい方法で調理します。だから、お客様の数は追いませんし、追えません。職人の数を簡単に増やせないからです。「値段は高いけどそれ以上に大満足」という線を狙うには、職人の数を絞り込んで質の劣化を避け、日々の研鑽により腕を磨くわけです。そのため、老舗寿司割烹はそもそも上場しようとすら考えません。しかし、結局、食べログで4点以上を出せるのはこっちです。

M&A助言会社も同じことです。

100円で安皿に乗せられ回転レールの上に並べられるか、それとも1貫1,000円で高級陶器の上で美しく飾られるかという違いです。

M&A助言会社のサービスに含まれる提案・情報開示で例えると、「安い皿」が1ページのノンネームシートのバラ撒きとバイサイドから来た質問への受けの回答姿勢であり、「高級陶器」が投資銀行流ティーザー(Teaser)と中堅中小企業向けの充実したインフォメーション・メモランダム(IM: Information Memorandum)を使った攻めの提案姿勢です。

「成約件数」に意味がある?

成約件数が多いほうが、成約件数が少ない会社よりも優秀なM&A助言会社であるという印象を与えますよね。

しかし、成約件数の絶対数ではなく、成約件数受託件数で割り算した「成約確率」の方が大事です。成約金額を受託件数で割り算した「1件当たり売却額」も大事ですし、さらに重要なのが、EBITDA、売上、利益、純資産等の何倍で売れたか、も非常に重要です(EBITDA倍率、PSR、PER、PBR等)。別に10社も20社も売ろうとしているのではなく、「たったの1社をどういう条件で売れるか」が重要だからです(つまり、売却金額と成約確率の掛け算である期待値が重要ということですが、知る限り、そのような数字を公表するM&A助言会社が存在しないです。実際に担当者に会って話を聞く中で判断するしかありません)。

着手金を受け取るタイプのM&A助言会社に依頼するかどうかを判断する場合には特に重要ですね。着手金を受領するなら、せめて成約確率3分の1くらいは欲しいところではないでしょうか?しかし、低い会社は1割前後のようです。つまり、9割のセルサイドは、「着手金を持っていかれただけ」ということを意味します。ちなみに、目利きしてから受託、売りやすくしてからバイサイド提案に動く弊社の場合、8割以上の成約確率、上場M&A助言会社の提示条件の平均3~5倍での売却成功を維持しています。

さらに、成約件数よりも成約確率よりも、「成功確率」の方が重要です。例えば、適正評価額以上で売れた件数の割合です。純資産ベース価格を常に利用していると、全体平均で半分以下が普通でしょう。

最後に、自分の会社と類似する状況の会社の売却案件で、純資産ベース価格という「並の価格」の何倍で売却できているか、つまり「成功度合い」も確認するとよいでしょう。

M&A助言会社の過去実績を確認する際、「成約確率」、「成功確率」、「成功度合い」を確認しましょう。ユニークな会社を売却するなら、件数主義ではなく、品質主義M&A助言会社の方が、成功の「可能性」と「度合い」を高めます。

その他の上場の弊害

上場すると、M&A助言会社は、投資してくれた株主に対する短期業績の開示が義務づけられ、それを受けた株価変動を非常に気になる立場になります。また、今期の業績見通しを決算短信等で開示し、見通しとの乖離状況を追求される立場にもなります。特に、M&A助言に特化した上場会社の場合、四半期毎の売上の進捗状況を非常に気にすることになります。

こういう上場M&A助言会社の社長が自社の大株主でもあるケースもあるでしょう。そうなると何が起こるでしょうか?従業員に対して、過大なノルマを課し、受託M&A案件の短期成約の圧力をかけ、もしくは成功報酬以外の売上ノルマを課すという、株主にとっては良いけれど、クライアントのセルサイド(売り手)にとっては大迷惑な動き方をする誘因が高まります。短期成約のため、大量のバイサイド候補にバラまくと「出回り案件」と化してしまい、優良バイサイド敬遠します(何か問題があるから、何度も何度も、色々なM&A業者から提案が来るのだろうという疑心暗鬼)。

(参考)倫理観と上場

プロフェッションという職業の分類があります。人間の生命や健康に重大な影響を与える仕事であったり、社会的に重大な影響を及ぼす仕事は、プロフェッションとしての高い職業倫理感を求められます。代表例は、医師、弁護士、教師などです。M&A助言という仕事は、法人の将来を左右する仕事であり、社会的影響は大きく、医師や弁護士に勝るとも劣らない責任の重い仕事であり、プロッフェションとしての自己管理が要求される仕事です。しかし、日本ではその点の問題意識が薄いようで、資格許認可なし、経験ゼロでも開業できますし、上場を制限するルールもありません。医師が短期利益追求のため過度に回転率を重視した治療をするとどうなるでしょうか?M&Aも時に同じような問題が生じます。M&A助言会社は上場するとプロフェッションとしての倫理感を維持することが難しくなってしまいます。

そもそも自分の株は、IPO時に純資産+営業利益×30年~とかで売っておいて、クライアントの会社は純資産+営業利益×3年で効率的に大量処理するのって、いかがなものかと思いますよね。クライアント=プリンシパル、助言会社=エージェントとして、エージェントはプリンシパルのために全力を尽くすことが求められます。明らかに、両手タイプのM&A業者には、エージェンシー・スラックの問題があります。上場するとこの問題が倍増するのです。

※ 一部の上場M&A助言会社の中には、上場による資金調達目的を、海外M&A助言会社の買収等の建設的な目的とし、片手FAとして本来のM&A助言をしている健全な上場M&A助言会社も存在します。しかし、案件規模が数十億円以上と、中堅・中小企業のオーナーにとっては敷居が高くなりがちな点が残念なところです。