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「M&Aで会社を高く売る」とは「夢を語り、夢を託す」ということ

2023/2/20

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「M&Aで会社を高く売る」とは「夢を語り、夢を託す」ということ

日本初のセルサイド特化型FA「ユニークな会社を高く売る」のシェルパ・キャピタル・アドバイザリー(株)です。

会社を高く売る」ため、あらゆる工夫や準備をして、クライアントの会社オーナー様に「売却価格はもちろん、様々なオーナー様のニーズを実現、心配を軽減・解消することで、最高の満足を提供」するのが弊社の仕事です。

会社を高く売る」ということは、買主サイドから見ると「会社を高く買っても満足のいく買収案件である」と評価してもらう必要があるわけです。

今回は、買主に満足してもらうためのカギとなる「」についてご説明させてください。

」はなんとなく他力本願で形成されて成就するものではない、でも、オーナー社長が既に材料を知っている、それをどう料理するか、というお話です。

買主の基本的な思考回路

なんの工夫もなく、ただ価格が高いだけ、値段以上の価値を認めてもらえないなら、「この値段で買ってください」と100回土下座してお願いしたところでまず買ってくれません。

M&A買主は、いくらDDをやったところで不透明なリスクを完全に消去できないうちに買収せざるを得ませんし、買収後の経営統合等において相当の労力を投じる必要がありますから、「M&Aなんて必要ないならやりたくない」「必要ないけどM&Aした方が明らかに得と思える場合だけやりたい」が、多くの買主意思決定者の本音のはずです。

諸々のリスクや負担を考慮しても投資妙味が十分に認められる条件で合意できる場合にだけM&Aが成立する、というのは取引の性質上、ほぼ不可避と思います。特に日本のようにリスク回避性向が高めのビジネス人種が多めの場合、余計にそうなりやすいわけです。

例外は、買わないと売れない、投資しないとイグジット時のキャピタルゲインを得られない、M&Aしないと売上が立たない投資ファンド、成功に次ぐ成功で自分の経営手腕に関して楽観に傾く経営者等に限られるでしょう。

高く売りたい売主としては、稀に存在するリスクテイカー型の買主と偶然にして意気投合できるチャンスに賭ける、下手な鉄砲なんとやら、というよりは、これが買主サイドの基本的な思考回路だと思っておき、できるだけ優れた能力を持つ買主を探し、しかるべき準備をして、確度の高いM&A戦略を描き、「勝つべくして勝つM&A売却活動」に挑むべきです。

そういう不確実な努力を敬遠したい方も多いでしょう。しかし、もしご自身が経営している会社がユニークな強みを持つ会社、または売上が二桁億円以上の会社の場合には、思考停止になって、なんとなく丸投げで相手探しを依頼するという売り方は絶対に避けましょう。売主個人にとっても、日本経済にとっても、大きな損失に直結するからです。

多くの買主の本音は、余計なリスク取りたくない、苦労もしたくない、確実に楽して安定が欲しい、かもしれません。特にサラリーマンの意思決定者なら、それが経済合理的である以上、ノーマルでしょう。

しかし、ちゃんと存在します。優れた経営手腕を持つ優れた買主は。意外とたくさん。

Win-Winゲームが本来のM&A取引の本質

買主は通常リスクに敏感、だからと言って、「友好的なM&A(≒安く・早く・楽して売る)、従業員に負担を掛けない、雇用を守る)」などの聞こえの良いキャッチコピーに誘導されてはいけません。これは効率重視のM&A会社の宣伝文句です。

安く売ったら、経営能力の低い買主に経営を委ねることになり、数年後の従業員がより大きな苦労を抱えるリスクを増やします。痛みの先送り、見て見ぬふりという誰もが抱える安全選好が根源にあり、これを利用されているわけです。

楽して儲けたいM&A会社にとって一番困る案件が、売主がM&Aに詳しく、簡単に実現できそうにない高い目標を持っていて、多くの労力を割いても目標に到達しなかったので、売却活動中止、つまり働き損になる案件です。

逆に、楽して儲けたいM&A会社にとって一番うれしい案件が、売主を容易に実現可能な目標に誘導し、手間をかけずに確実に成約させられる案件、つまりM&Aに無知な売主を都合よく洗脳できそうな案件です。ここでは、群衆心理、刷り込みや権威付け等のマーケティング技術が頻繁に駆使されますが、目的は常にココ(楽して儲ける)にあります。

儲けやすいので次々に類似業者が参入しますが、価値創造の伴わないM&A取引になりやすく、儲けの源泉は情報弱者の損失になります。つまり、常に、売主の損失(本来得られるべき価値にどれだけ不足するかという機会損失的な損失)をより増やすことで、自分だけが儲けるというゼロサムゲーム(奪い合いゲーム)、無機的な取引になっているという基本構造はよく理解しましょう。

M&A取引は、本来、Win-Winゲーム(価値創造と価値シェアのゲーム)であるべき、有機的な取引であるべきです。

弊社のようにセルサイド特化型FAとして「高く売る」という目標に逃げずにコミットするM&A会社は、「売主と苦労を共にし、高みを目指す覚悟」がある宣言とも言え、だからこそ、「売主のM&Aに関する無知」というM&A悲劇の原因を取り除こうと手間暇かけて情報提供に努めているわけです。

この「手間暇をかけて」がM&A会社としての短期的な経済合理性と真逆に位置付けられるので、弊社は非常に珍しいM&A会社、本当にクライアントの利益を守る、ハードワークに徹するM&A会社として認識され続けていますが、実は、本来守るべき原理原則を忠実に守っているだけなのです。

売主は高く売る義務を負う

実は、本来、大株主である売主、売却対象会社の取締役には、高く売る義務があります。「レブロン基準」と言います。英文ですが、読んでみると、それは当然ですよね、という印象を受けると思います。原理原則の話ですから腹落ちしやすい理屈です。

要するに、売主サイドは会社の価値を磨いてより高く売る努力をして、買主サイドはできるだけ良い会社をより安く買う努力をすれに重要ばよいだけです。あとは、条件合意市場(=M&Aアドバイザー)が有効に機能していればよいということになります。

日本でも類似の判例化もしくは制度化をすべきと思いますが、おそらく短期的とはいえ失業率を上げたくない政府としては遅きに失したということで、社会的に問題視される大型M&Aフロウド事件が生じない限り、2050年くらいに制度化されたらラッキーくらいかもしれません。

海外では取締役の義務として明文化されていますが、日本の場合、レブロン基準よりもっと大事な視点があります。むしろ大儀ともいえる高く売らねばならない理由、高く売る義務、高く売るための努力をすべき理由があると思っています。

日本経済の苦しみ、つまり長く続く低成長、デフレ経済(2023年の今もエネルギー価格等の一部の財を除けば実質的にデフレ継続中)の根源を一言でいえば、低付加価値事業への労働者粘着体質(低成長・低競争力・供給過剰業界での労働者の長期大量滞留)でしょうから、新しい産業(新しい需要)を興す起業家、新しい産業で働く労働者の数を増やすことが非常に重要です。

この意味で、会社オーナー様が、相手とハードに交渉する不安・苦労等を避けることを優先し、安易に安値で売ってしまうのは、日本経済にとって明らかに悪いこと、次世代に対する負担先送り行為ともいえます。こういう不安・苦労等を肩代わりするのが、弊社のようなセルサイドFAの役割の1つなのですが、そういう認識はなかなか浸透していないようです。浸透しているのは、王道を無視した過度の効率重視による利益の歪んだ配分への傾斜ばかりです。

会社を高く売る、つまり起業の成功事例を積み重ねることこそが、日本経済の元気をひさしぶりに取り戻す契機になるはずです。売主1人だけでは無理でしょうが、積み重なれば世の中を変革できると信じています。

安値買収の場合、以前の経営を踏襲するだけでも十分儲かってしまうので、買主の経営手腕をさらに磨き鍛えるプレッシャーがかかりにくいですが、適正価格以上で買収すれば、買主に、自動的に通常の先進国の経営者にかかるであろう経営手腕を高め続けるプレッシャーがかかります。これも日本にとって非常にプラスです。ある意味一番大事なことかもしれません。リスクを取らないのが最大のリスクですし、リスクを取らない競争相手が多い以上、適度なリスクを取り、正しい努力を重ねるだけでよい、比較的容易に勝ち続け易い市場、それが日本ということですね。

主に大企業の買収失敗の理由の1位が「価格が高かったから」という調査結果をよく目にしますが、少なくとも、中堅中小M&Aの場合、そもそも適正価格未満、激安価格での買収が圧倒的多数を占める以上、値段が高かったから買収に失敗したという事例は非常に少ないはずです。失敗したのは、多少の運もあるでしょうが、主に買主の経営に対する意欲と能力の問題であり、売主が買主を慎重に選び、事前に情報開示に努め、一緒に喧々諤々議論をしてから売却していれば、買収失敗を避けられた可能性も高いのです。事後の損失填補に機能が限定されるM&A保険では絶対に解消しません。

そういう意味でも、高めの価格でも買いたい、つまり経営への意欲と能力に自信を持つ買主候補を頑張って探し、しっかり丁寧に説明し、一緒に将来の可能性を語り合うことは、買収失敗を避けるために一番有効な手法と思います。
安いなら買いたいという先が見つかった、今売らないと気が変わる可能性があるからといって、そこで即座に妥協してしまった事が、結果として買収失敗の可能性を高めてしまったのかもしれないのです。

少数株主、役員・従業員、取引先、そして自分と自分の家族のため、できるだけ良い条件を目指すのが、売主の義務であり、買主にとってもプラス、日本経済を好転させるための一石になるわけです。

そのためには、上記の「買主の基本的な思考回路」に対し、売主という立場から挑んでいく必要があり、とはいえ、初めてチャレンジするM&A、一生に一度のM&A会社売却という特異な条件下で成功を目指すには、その道のプロのガイドや協力が不可欠、ここで必要となるのが、セルサイドFAという売主の絶対的味方なわけです。

売主の絶対的味方=買主の絶対的敵と勘違いしないでください。むしろ真逆です。売主にとって、買主とは売却対象会社を買ってくれるお客様でもあります。売主が売却対象会社を高く売るには、買主の満足を高める事が必要です。つまり、買主の満足を高めるサポートを徹底的にやるのがセルサイドFAの仕事と言い換えることもできるでしょう。商品の価値を高め、お客様に少しでも高い代金をお支払いいただく、ビジネスの王道です。多少の努力やリスクテイクをして飛躍させた方が、安値買収で小さなうま味を積み上げるよりも、遥かにジューシーな将来が待っていますから、実は、セルサイドFAは、売主の利益を最大化する事を最終目標としつつ、買主の将来利益の実現可能性を高める事を1次目標に掲げているとも言えるのです。

高く売りたい、個人のリスクを最小化して売りたい、引退を早めたい、この事業はこうやって残したい、などなどの売主ニーズを実現させるためには、買主の基本的思考回路、売却対象会社が属する業界の動き(法規制、競争環境、取引条件、新規参入、その他)、事業そのもの(商品・サービス、マーケティング・セールス、組織・人事、投資・調達等)、金融市場の動き(欧米・日本)、税制(法人・個人)、ファイナンス技術、ストラクチャーなどなどが複雑に絡み合う中で、何十何百と最適な意思決定を紡ぎ繋ぐ必要があるわけですので、セルサイドFAが「役に立つセルサイドFA」である条件としては、このようなM&A取引のすべての要素に精通している必要があるということです。

弊社が売主の方と話をしてみると、当初は「主にマッチング」がM&A会社の仕事と思い込んでいる方が多いようです。もしそれが本当なら、外資系投資銀行のM&A部門の採用条件がなぜ非常に厳しい狭き門なのか、中小零細M&A仲介会社の採用条件がなぜ非常に緩く未経験者歓迎なのか、を考えてみれば、両者の仕事が、同じ名前で全く違う中身であることがわかるでしょう。「主にマッチング」は零細・個人事業を対象としたビジネス・マッチング事業(米国では1億円未満の事業売買はM&AではなくBBと呼ばれる)の場合には正解ですが、M&Aアドバイザー、FA(Financial Advisor)の場合は、専門家としての助言ができてナンボです。

実は、むしろ「中堅中小会社を高く売る」ことを仕事として定めるなら、外資系投資銀行のM&A部門の職に就くより「広範囲、かつ、そこそこ深く」のスキルセット(ゼネラリストなスペシャリスト)が必要ともいえます。大企業と異なり、中堅中小企業には、いろいろな機能が整ってないですから、FAがサポートしないといけない領域は自動的に広くなり、効果的なサポートの必要性も高まります。特に引退希望の売主オーナーの場合、社長の役割は大企業の場合よりも非常に大きく、売却後の買主の心配(社長が引退したら事業が成り立たないかも?)を緩和するための準備も非常に重要かつ難易度が高いからです。


会社を高く売る=「夢」を語り、「夢」を託す

では、高く売るために必要な準備として、弊社が常に一番大事だと思っていること、「」についてのお話です。

ここでいう「夢を語る」は、「夢物語」というニュアンスではありません。「具体的で、確実性を伴う将来に対する期待を伝える」を意味します。

言い換えるなら「買主の方々にワクワクしてもらうための企業ストーリー」のことです。

形式的に収まるのは「事業計画」というM&A開示資料ですが、「夢レベルの事業計画」というものは、テキストやグラフで及第点の資料を作っただけでは到底到達できません。M&A助言の担当者が、まるで自分が経営に担ってきたかのような臨場感で、熱く語れる段階まで練りこんだものである必要があります。

多くの中堅中小企業の会社オーナー様は、数十年といった長期間、自分の会社の現在を見続けているので、さてM&Aで会社を売ろうと思った時、程度の差こそあれマンネリ病にかかっているケースが大半です。だから外部の人間であるセルサイドFAが、1~3か月程度の短期間で一気に社長に近いレベルまで売却対象会社の詳細について理解を深めた上で、社長と一緒に、会社の課題を整理し、チャンスを見つけ、具体的な改善成長施策に落とし込む、という地道な活動が必要なのです。

しかも「夢」はせいぜい15分くらいでエッセンスを語りつくせるよう練りこむことも重要です。通常、買主キーパーソンに提案できる時間は限られ、質問を受ける時間も必要ですので、短時間で魅力を伝え切り、次のステップに繋げる必要があるからです。

細かいリスクや条件等は、詳細に説明する資料(Information Memorandum等)で語りつくせばよいわけです。開示資料の品質も非常に重要なのは、別の記事で何度もご説明している通りです。

会社を高く売るには、買主の意思決定者に「①欲しい」「②仕方ない」という思考回路を経てもらう必要があります。

①欲しい、は、ワクワクのことです。「夢」を理解してもらえると、自分でやりたい、面白い、成功できそう、と思ってもらえます。この①でダメなら、その買主候補に高く買ってもらうことは不可能です。①をクリアできたら②をなんとかできれば「高く売れる」はずです。

②仕方ない、は、その価格を出さないとワクワクが手に入らない、その価格を出しても問題がない、他に取られるくらいなら、と思ってもらえる環境を用意することです。例えば、競争環境、つまり他に有力な買主候補がいそうな雰囲気を醸成できているか、もしくはリスク管理、つまり思いつくリスクについて万全の対策が講じられていると評価されるか、です。

①に関しては、単なるM&A助言だけのサービス(特にマッチング主体の両手報酬タイプのM&A仲介)ですと、何もやってくれませんので、経営コンサルティング機能や財務税務法務コンサルティング機能も一緒に提供してくれるM&A助言会社を選んでおくと、売主に有利です。※弊社の企業価値向上コンサルティングサービス(EVC)はこの機能を提供します。

②に関しては、片手報酬のFAなら、買主を固定して買主から報酬を貰うインセンティブを持たないので、売主にとって有利です。※弊社のセルサイド特化型FAサービス(SFA)はこの機能を提供します。

弊社は、買主の意思決定者の方から「異常に会社事業に詳しいし、淀みなく説明されて驚いた。もしかして、おたくが会社の経営してるの?」というニュアンスで質問されたことが度々で、もしかすると夢を語れるレベルまで売却対象会社に愛情を注げるM&Aアドバイザーというのが珍獣、絶滅危惧種になってしまったのかもしれません。が、高く売る、本当に売主の役に立つ、そのためにはコレしかないと思うのです。

また、夢というものは、一方的に語るだけでは足りません。

相手が夢を聞いてくれても、夢が実現しそうもないと思われてしまえば、結局、良い条件で売ることはできないからです。

夢を託す」というのは、本当に良い相手を選ぶ、その相手に、情熱をもって「売却対象会社を買収することで得られる夢」を語り尽くし、その「夢」を買主企業独自の能力をプラスαでさらに膨らましてもらう(俗にシナジーと呼ばれます)作業のことです。

一方的に語るのではなく、しっかりと買主の意思決定者に具体的なイメージ、映像や音声を想起してもらう必要があります。これは本当に重要です。

また、夢を託すためには、買主サイドでも十分な検討時間と検討材料が必要でしょう。中堅中小企業は、やはり中堅中小企業独特のリスクがあるのが通常です。様々な角度から不安や心配を持つのがノーマルですし、買主の経営者としての義務でもあります。優れた買主であればなおさらディフェンスもしっかりしているものです。

攻めるのと同時に守りも固めるバランスが必要ということです。

営業活動には2タイプある

ここで、夢を語り、夢を託すためには、ハイブリッド営業が必要であることをご説明したいと思います。

営業は大きく2種類あります。

1つめは、「大丈夫ですよ営業」です。
2つめは、「危ないですよ営業」です。

大丈夫ですよ営業」は夢を語る際に必要です。楽観思考が前面に立ち、明るい未来を語る際には、細かい論点に拘泥することなく、高い視座から事実を大きく捉える寛容な姿勢が求められます。これが得意なのが証券のセルサイド営業です。リスクがある証券投資を推奨する際、大きく事実を捉えて楽観的な側面を強調します。

危ないですよ営業」はリスクへの備えについて腹落ちしてもらう際に必要です。悲観思考が前面に立ち、万が一、もしかしたら、を列挙しつつも、それらが対処可能なものであることを説明するので、緻密さや論理性が求められます。これが得意なのが保険営業マンです。リスクを具体的にイメージさせつつ、その備えを価値として提供します。

M&Aのセルサイド営業では、「大丈夫ですよ」と「危ないですよ」を絶妙に組み合わせながら営業しないと、高く売る営業の成功は覚束なくなります。中堅中小企業M&Aの場合は、複数名で分担するのではなく、メイン担当者1人2役の体制が望ましいです。買主から見てコンタクトパーソンはメイン担当の1人です。交渉状況を高い視座・低い視座から分析し、自分の姿勢をジキルとハイドばりに瞬時に切り替える特殊技能が要求されます。

この点、特に日本の中小零細M&Aでは、特に「危ないですよ営業」をできる人が希少種となっています。危ない論点を網羅し対策を説明して、優れたビジネスパーソンである買主意思決定者に安心を提供するには、幅広い専門知識と論理的思考とコミュニケーション能力が必要だからです。

また、「大丈夫ですよ営業」をちゃんとできる人も日本の中小M&A業界にはそれほど多く存在しません。ビジネスを正確に理解するのは相当の能力が必要だからです。そもそもサラリーマンがトップ目線でビジネスを本当に理解することは不可能に近い作業です。独立経験のある人の方がセルサイドFAとして望ましいとされる理由です。欧米ではセルサイドFAになるための条件として、事業経営経験が非常に重要と位置付けられていますが、オーナー経営者の気持ちを理解できる点も大事ですが、事業を正確に理解できる可能性が高い点も非常に重要だからです。

やはり、王道に忠実、が最終的に最強だと思います。

夢を語る準備はとにかく基本が大事

弊社が「高く売る」ためにやっていることは、実は、会社経営やコーポレートファイナンスの世界で王道中の王道と呼ばれるもの、基本に忠実なものばかりです。それを適宜、必要なものを組み合わせてM&A戦略をオーダーメイドで用意しています。

しかし、基本に忠実に、基本を徹底することは、一番つらく苦しい作業でもあります。

多くのM&A会社は、初期的な相談の段階で財務諸表3期分の開示を要求してくると思います。そして、数日かけて質問のやり取りをして、会社の理解フェーズは完了、1~2ページの企業概要書等を作成して、買主候補への打診作業を開始してしまいます。売主も楽でよさそうですが、実はここで実質的な敗北が決定しています。肝心かなめのセールスマンが商品の理解をせずに売りにいこうとしているのを許容してしまったからです。もし、御社のセールスマンが、基本性能、使い道、メリット・デメリット、鋭い指摘への切り返し話法等の商品知識を頭に入れないまま、見込み客に販売営業していると知ったらどう指導しますか?おそらく「馬鹿モーン!セールスというものはだなー、、、そもそもだなー、、お客様の事をだなー、」となるのではないでしょうか。

弊社の場合、夢を語れるようにならねばならない、夢を託せるようにならねばならない、と考えているので、もちろん財務諸表を拝見させていただくのは当然なのですが、仕訳データ数年分、さらに仕訳の基礎となるオペレーションの鏡となる業務データまで拝見させていただき、いろいろな仮説を立てながら徹底的に分析します。

「この会社の売上が今なぜこの水準になっているのか」
「この会社の売上はなぜ過去にこういう動きをしたのか」
「この会社の売上が競争を勝ち抜いていくためには何が必要か」
「この会社の売上を非連続的なレベルに一気に成長させることができるとすれば、どんな方法が考えられるか」
「この会社の売上をライバル企業に奪われるとしたらどういうライバルにどういう戦略で挑まれるときか」
「この会社の売上を計上するためにどんなアクション、リソースが必要か」
「この会社の売上の必要経費は本当に無駄がないのか、より効果的効率的な費用のかけ方はないのか」

買主候補が異業種の会社であっても、しっかり納得してもらえるレベルまで、M&Aアドバイザーが咀嚼して理解できてないと、「高く売る」はそれこそ「夢物語」になってしまいます。

特に弊社は現場主義といいますか、販売現場、製造現場をしっかりと見て、そこに流れる現場の方々の想いを感じ取ることが大事だと思っています。もちろん、一般の従業員の方に不要な心配をかけないよう弊社独自の万全の対策を講じてます。

また、バックオフィスを馬鹿にしてはいけないのがM&Aです。バックオフィスが効果的・効率的にワークしていて、リスクの認知、対処が仕組みとして機能しているのか、をしっかり理解し、改善ポイントを把握する事もかなり重要です。

高く売るだけが売主のニーズではない

会社を高く売るのは売主の義務であり、売主にとって通常最も関心の高いM&Aの取引条件が、まさに価格でしょう。
しかし、売主の多くが、価格以外のことも気にしています。

引退せず経営を継続されたい方なら、自分の立場、特にレポートラインが誰でどういう事に関心を持つ人なのか、使えるリソース、権限の範囲、成長させることに成功した場合の報酬面、会社の所在地が移転するのか、なども気になるでしょう。

引退希望の売主であれば、いつ引退できるか、引退するまで何をしないといけないのか、具体的に誰に引き継ぐのか、などが気になるはずです。引退した後の行動制限の範囲(競業避止義務等)が気になる方もいるでしょう。

また、有能な役員・従業員がM&Aをどのように捉え、会社を去るような事態を避けられるのか、恨まれるような事にならずに済むのか、が気になる方もでしょう。

頑張って勤務を続けてもらうためにインセンティブを付けてあげてもらいたい方もいるでしょう。

自分が拘って作り上げてきたビジネスモデルが買主企業によって跡形もなく破壊されるような事に耐えられない方もいるでしょう。

逆に、せっかくM&Aしたのだから、買主独自の着眼点で自分が育てた会社を飛躍的に成長させてほしい、できれば上場させてほしい、と願う方もいるでしょう。

会社を売却すると、法人・個人のそれぞれに税務署が目を付けてくる可能性が高まります。特に、オーナー社長が節税に積極的であった場合、追徴課税が怖いでしょうし、売却対象会社が追徴を受けるとM&A最終契約に定められる補償(インデム)条項によって、損害賠償請求される可能性もありますから、できるだけリスクを限定的な範囲内にしておきたいはずです。

売主クライアントが、上記のようなニーズをお持ちであれば、価格以外のニーズについても実現させるべく努力するのがセルサイドFAの使命です。

さて、浅薄なマッチング作業を大量にやったところで、売主ニーズが実現できるでしょうか?答えは、ほぼ不可能です。単に相手を見つけて相手の条件に合わせるだけになりがちだからです。

夢を語り、夢を託せるレベルまで、売却対象会社や売主個人の事を深く理解しているM&Aアドバイザーでなければ、上記のニーズはなかなか実現できません。場合によっては買主サイドに負担が発生するでしょう。

そもそも「夢」にワクワクしてもらってから、できる相談だからです。

「夢」を語り、託すには相応の作業が生じ、コストがかかる

日本では着手金無料とか、成功報酬も買主からも貰えるので、売主は成功報酬まで完全無料等の世界的に見ると異常な報酬条件で売主が会社売却を検討しやすくなっています。

しかし、よく考えて下さい。

M&Aアドバイザーも生活をしている普通の自然人ですから、一定の労務に対し、一定の報酬が得られなければ仕事をする人はゼロになってしまいます。

なのに日本のM&Aアドバイザーは毎年激増しています。

ということは、結局ぼろ儲けできている事を意味します。無料なのに、です。

そのカラクリは、大きく2つあります。

1つめは、レートで換算すると結果として猛烈に高い最低成功報酬や買主候補から何度も情報提供料等の名目でお金を貰う、という収入面のカラクリです。一見、売主はコスト負担してませんが、買主負担の増加は、巡り巡って売主負担にしわ寄せされます。

2つめは、徹底的にコストを軽くする、特に人件費の負担を軽くしているから、つまり、仕事をできるだけしない、そもそも知識・経験がない人ばかりで済ます、ほぼマッチングだけで済まそうとするので、M&A会社のコスト負担が安く済むからです。これも売主の負担に巡り巡ってしわ寄せされます。売却対価が高める努力をしてくれないからです。

本格的な助言サービスを含む片手FAの場合にはあてはまりませんが、2つのカラクリを駆使して、大量の案件を処理するのが、一番楽に金儲けをする方法だと知っている。だから、M&Aアドバイザーが毎年激増しているのです。

冷静に考えていただきたいのは、このカラクリは誰の負担で成立しているのか、です。

また、本を人から借りて読むと頭に入りにくいのと同じで、自腹を切る痛みがあるからこそ頑張って準備できるものです。できるだけ補助金等の痛み止め薬は服用しない方が、真剣に努力しやすなって結果も良くなると思っています。

ぜひ、いろいろな情報ソースから、入念に情報収集をして、徹底的に比較してからM&A助言会社を選んでください。

M&A助言会社選びに役立つ3つの格言

・タダより高いものはない
・多店舗経営の回転寿司と1店舗経営の職人寿司は質が違うし客筋も違うかけてるコストも全く違う
・悪化は良貨を駆逐する

これらの格言(?)は日本の中堅中小M&Aで助言会社を選ぶ際に忘れてはいけないものです。

ユニークな会社や一定以上の事業規模がある会社を高く売りたいオーナー様の場合に限ってですが、着手金の負担があり、小規模プロ集団で、安易な金儲けの誘惑を絶つM&A助言会社の方が遥かに売主有利な結果を導いてくれる可能性が高いです。

特徴のない零細企業や個人事業を売りたいオーナー様の場合は、着手金負担なし、できるだけ大きな、広告やセミナーによる規模問わずの大量集客に熱心で、従業員を未経験者歓迎で増やしている会社、つまり買主候補探しのテレアポ部隊等を持ち、その代わり両手M&A報酬、最低成功報酬、買主候補を使って色々金儲けができるM&A会社の中から選ぶべきでしょう。

ユニークな会社、一定規模の会社を買える会社はそもそも数が限られます。テレアポ部隊が探索できるのは、中小企業や個人レベルの買主候補であって、数が限られる優れた買主候補については(弊社のようなプロ数名でやっている)小規模プロ集団の方が深く知っている場合も多いはずです。刺さる提案力を持つ可能性が高く、クライアント利益に忠実な仕事をしてくれる可能性が高い方を選ぶ方が合理的です。

買主から見ると、売却対象会社のサイズが大きくても小さくても、買収とその後の統合作業には一定の手間がかかりますので、優れた買主であるほど、小さめの案件を敬遠します(例外もありますが)。

そのため、零細企業・個人事業を売りたい場合、とにかく重要なのは、そういうサイズの会社を買いたい買主候補(多くが中小・零細企業または個人)の探索能力であり、これに関しては、小規模プロ集団はあまり役に立ちません。

ご自身が売りたい会社の特徴の強さや規模感、ご自身のニーズの複雑さ等を吟味し、フィットしそうなM&A助言会社を選んでいただくと、最高の結果が手に入りやすいと思いますよ。

手間がかかり始める前までの2~3回程度までの相談は通常無料です。できるだけ色々なタイプのM&A助言会社を、自分の力で探して問い合わせてみることを強く推奨します。

こういう大事な選択をする際、他力を頼るのは良い、しかし頼りすぎると良い結果を得られにくいのも世の常です。

なぜかと言えば、M&A助言会社が激増し、優良な売却対象企業を売却したい売主オーナー様へのアクセスの希少性が増す中、M&A助言会社から報酬のおすそ分けに預かろうにする中抜き業者も増えており、中立的な比較のためと思って紹介業者を頼ると、その紹介業者の金儲けが優先されやすくなり、結果として最適な選択ができなくなりますので。

紹介業者を使って比較するのは当然にして良いことです。しかし、そこで得た見識を用いて、自らの手を動かして最高のM&A助言会社を見つけることが何より大事なのです。気を付けておきたいのは、中抜き紹介業者に多額の紹介料(場合によっては成功報酬等の50%程度という高い料率)を請求される立場のM&A助言会社が、手抜き工事をする危険が高まるという点です。

「夢」は社長の頭の中にひっそり眠っている

買主候補を「ワクワクさせる夢」を作り上げることが、会社を高く売るための入口であるということはすでに述べたとおりです。

では、具体的どうやれば「夢」を開示資料や提案ストーリーという形に仕上げることができるのでしょうか?

ずっと経営を続けてきた社長は、大きな変化を伴う可能性、アイデアを、実は頭の中に抱えています。

しかし、多忙な日常の中で、自ら蓋をしてしまっているケースに多く接しています。つまり、誰か、社長のパートナーのような立場の人が、社長の頭の中に眠るアイデアを情報として取り出し、外部第三者に分かり易く伝わるように加工する必要があります。

ここで、弊社が考える優れたセルサイドFA兼経営コンサルタントは、触媒のような役割をする必要があると考えているのです。

つまり、社長に、売却対象会社に眠る潜在能力を実現化する方法を語ってもらうため、「質問をする力」が求められると考えます。

また、社長の頭の中のぼやっとしたアイデアを具体化するため、具体的な改善・成長の施策案を社長にぶつけてみて、そこから練り上げる手法も有効です。「(施策案等を)提案する力」も求められるわけです。

さて、「質問する力」や「提案する力」という言葉には、一見誰でもできそうな響きがありますが、実は非常に獲得が難しい能力であり、おそらく自ら経営する能力に近いものです。

なぜ難しいのかと言えば、そもそも広範囲な専門知識や論理的思考力が必要ですし、売却対象会社の過去と現在について枝葉末節に至るまで正確に理解していないといけないからです。

ズレた質問、頓珍漢な提案の相手をしている暇はないでしょう。

気づきに繋がるピントの合った質問」、「そういえば!と身を乗り出す提案」、こういうことができる能力がセルサイドFAに求められると弊社は考えています。

「夢」を語る、託すための様々な能力を磨き上げるのが、弊社メンバーの大事な日常の習慣となっていますが、それにはこういう意図があるのです。「夢」こそが、より優れた買主の買収意欲を高め、売主の満足を高めるキーとなる以上、ここで手抜きはできないのです。

王道は、たしかに楽な道に比べれば苦労が伴います。それを全力でサポートするのが弊社のミッションです。

どうせやるなら「真の三方良し」(売主ハッピー、買主ハッピー、社会もハッピー)を目指しませんか?